【track.06】

【track.06】①



 ここ最近は熱心に死神現象退治を行っていたのもあって、音枝レンリは日曜日も休息することを勧めてくれた。


 ――「日曜日は部活終わりの生徒も残りづらいですし、そこまで張り切らなくても大丈夫ですよ」


 その言葉に甘える形でゆっくりと過ごさせてもらったユウ達だったが……週明けの学校は、残暑とは異なる熱気に包まれていた。


『…………?』


 昇降口や廊下を行き交う生徒達は、誰しもが浮足立っている。学園祭に招かれる芸能人が有名だったのだろうか……などと考えながらクラスに到着すると、トキオが片手を上げてフランクに挨拶してくれた。


「おう、おはよう。侑」

『おはよう、トキオ』


 挨拶を返すが、ユウはやはりソワソワするのを止められない。クラスの隅々まで件の熱気が満ち満ちていたからだ。


『来て早々で悪いんだけど……これ、なんの騒ぎ?』

「なんでも、この学校に幽霊が出たんだとよ」

『!』


 率直に訊いた分、耳を疑うような返答に鼻白む。

 ……いや、可能性は十分に考えられていたはずだ。音枝レンリが管理をしているが、かといってそれも完璧とは言いがたい。どこからか綻びが生じてもおかしくなかった。


「ほら、これ」


 スマホを操作し、トキオが噂の画像を見せてくれる。どうやらSNSでは既に満遍なく行き渡っているらしい。

 ユウはぐっと顔を近づける。昨今のスマホの進化は目覚ましい。高精細の画像にはしかと、西洋鎧の騎士の姿が映し出されていた。確かに、現実のものとは思えない非実在感は、幽霊と言われても頷ける。


『……トキオは信じてるの?』

「まさか!」


 トキオは大仰に手を開いてみせる。


「こんなの、生成AIを適当に合成したディープフェイク以下の紛い物だろうよ」

『……そうだね』


 言われてみれば、生徒達の騒ぎようも、「誰がこんなものを作ったのか」に主眼が置かれているような、犯人捜しの様相を成しているのが分かる。騒ぎが学外といった必要以上に拡大していないことはありがたかったが、実際にどの程度広まっていて、どのレベルで死神現象などが認知されているのか、部活の時間までにある程度調べる必要があるだろう。メンバーに画像を共有する必要もある。


『その画像、チャットで送ってくれない?』

「なんだぁ? 侑はこんな子供騙し、信じんのか?」

『そうじゃないって。ただ、どうして西洋鎧の騎士なんか合成したのか、その意図は気になるってだけ』

「言われてみれば……確かにそうかもな」


 そして――この写真が週末に撮影されたものなのであれば、この騎士が最後にして第四の騎士・ペイルである可能性が高い。

 早速チャットでトキオに送ってもらう。見れば、青白い鎧が精密にありありと映し出されていた。ここまで近くで撮影したのであれば、撮影者が襲われている危険性もある。それも含めて情報収集をしなければと、ユウは密やかに決意を固めた。


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