第15話 モテない男といつも通りの休日②
あぁ、今日も本当にいつもどおりの土曜日だったな。
朝起きて、筋トレをして、昼飯くって、サブスクサイトでドラマ鑑賞。そして電子書籍を読みながらそのまま眠たくなって昼寝。
で、夕方に起きて晩御飯を買いにスーパーへ向かい、今はその帰りというところ。
自宅のあるマンション周辺のこの河川敷の景色も、当たり前だがいつも通り。
時間は...もう18時半か。
とりあえず、家に白ご飯はあったから今の俺の右手の袋にはスーパーの総菜が数点と、デザートのあんこの串団子。これもほぼほぼいつも通り。
結局、俺の人生。これからもこのいつも通りの繰り返しか...。
と言っても、俺みたいな男が、普通にそれなりの企業で働けていて、それなりのところに住めていて、こうやって土日にしっかり休みをとれている。
このいつも通りが繰り返せているだけでも十分すぎるのかもしれないな...。
そう。彼女や結婚はあくまで俺からすれば贅沢品だ。
今までモテたこともない俺からすれば、元から人生設計にないものだから問題もない。
まあ、女の子と喋りたい欲があるかどうかと言われると、それはある。この歳でこんなことを言っていて気持ちが悪いのかもしれないが、一応、俺も男だからそれはある。
「.....」
そういえば、思い出した。
そうだ。いつも通りではないことが、今日については一つあったことを今まさに思い出した。
そう。隣に女性が引っ越してきたんだった。
俺が昼寝から目が覚めた頃には部屋も静かで、そのこと自体を忘れていたぐらいだ。つまり、もう引っ越し作業もその時には終わっていたのだろう。
でも、何だ。挨拶に来るみたいな話を盗み聞き...いや、たまたま外から聞こえてきた記憶があるが、来ていないな。
いや、もしかして、俺が昼寝をしている時に来ていた?
可能性は大いにある。
で、あれば普通に申し訳ないことをした。
しかも、そういえば俺の家、表札つけていないからマジで得体の知れない人間になっているかもな。
いや、別に意図的につけていないとかではないけれど、一度何かの拍子に外れてから付けるのを忘れていたところ、別に何の影響も不自由もなかったことからそのままだった...。
部屋番号はあるから、配達も届くしな。
それに、別に今どき隣人の名前に興味なんてないか。
そんなことを考えていると、俺はもう住んでいるマンションのエレベーターに到着。
とりあえず、乗り込んで静かに自分の住んでいる階のボタンを押す。
「.....」
でも、正直、俺はやっぱり興味があるな。隣人がどんな人なのか。
今、思えば、微かに聞こえてきた声は高崎さんに似た可愛らしい声だった。
どうせ関わることなんてほぼないだろうし、多くは望まないけれど、もし高崎さんみたいな綺麗な女性であれば最高だ。
隣にそんな女性が住んでいるというだけでテンションがあがることだろう。
俺は単純なバカだからな。
出勤前にたまたま部屋の前で出くわして「おはようございます」からの駅まで一緒に歩くなんてイベントがあったりなかったりなんて...
いや、ないだろ。
こういうところだろう。俺がモテない。いや、モテてこなかった理由は。
でも、いいんだ。自分で言っていて虚しくなるが、こういう妄想をしている時だけでも、その瞬間の俺は幸せなのだから。
って、そんなバカなことを考えているともう俺の住む部屋の階に到着。
もっと、高い階に住もうかと迷ったりもしたものだが、やっぱり高すぎるのも不便だし、ちょうどこれぐらいの階にしてよかったと思う。
はぁ、でもやっぱり他人から見れば、ものすごく退屈な人生ではあるのだろうな。俺の人生。
って、あれ? まだ距離は遠いが、俺の部屋の前に女性...?
もしかして、今日引っ越してきたであろう例の...。
てか、横からだからここからではよくわからないが、普通に美人さんなんじゃないのか?
いや、本当に。
何だろう。心なしか高崎さんみたいな雰囲気もある。マジか。ちょっとテンションがすでに上がってきた気が。
その彼女がインターホンを押してくれている姿が今の俺の目には映っているが、申し訳ない。絶対に反応はないはずだ。
なぜなら、その部屋の住民は今ここにいるから。
でも、彼女との距離が近くなるにつれ。やっぱり思ってしまう。視界に映る彼女はすごい美人だ。
そして、やっぱり高崎さんに似ている感じがする。
どうする。やはり初めが肝心だ。
らしくはないかもしれないが、ちょっとクールにいくか?
いや、でもやっぱり無難に愛想重視でいくか?
駄目だ。緊張してきた。
30歳でこんなことで緊張する末期な人間は俺ぐらいかもしれない。
よし。あくまで自然に。そう自然に。
でも、やっぱり本当に高崎さんに似ているよな...。
いや、マジで似て...って
「え?」
「え?」
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