第12話 モテない男、焦る


『もちろん土曜日で大丈夫です。ありがとうございます。俺が予約しておきます』

 

 彼女の提案に早々とそうlineの返信を返す俺。


 一瞬、俺と夜に会うのが嫌なのかと思ったりもしたが、逆に、休日にわざわざ会ってくれるのか...。


 「......」


 よくわからない。


 正直、休日に逢う方がハードル高い気が...。

 まあ、そういう経験が皆無だから、やはりよくわからない。


 『いえいえ、場所を提案させていただいたのは私なので、私が予約しておきます! 2人でいいですか?』


 2人...。


 とは、やはり俺と彼女だよな。

 しかも、向こうから。


 『もちろんです!ありがとうございます』


 もちろん俺はOKだ。断る理由はない。

 

 高崎さんと2人で休日にごはん...。


 あらためて思うが、いいのか...。これ。


 てか、今の「もちろんです」って返事は何か気持ち悪かったかも。


 「.....」


 と言うか、場所も決めてもらって予約まで...何か全部、彼女にやってもらう感じで色々と悪いな。


 俺も何か...。


 そうだな。一応。


 『僕は車で行こうと思うのですが、もしよければ高崎さんも乗って行きますか?』


 目的の店は駅からそれなりに遠い場所にあるみたいだし、嫌なら嫌で普通に断ってくるだろう。近くはないが、別に歩けない距離でもない。


 そう。一応、俺も何かしますよというポーズでの返信だ。おそらく電車で行きますと断られることだろう。


 『嬉しいです!では、お言葉に甘えてもいいでしょうか?』


 マジか...。


 まず、返信が早い。そして...いいんだ。

 自分で提案しておいて何だが、いいんだ...。


 『もちろんです!』

 

 いや、あらためて、これ。

 本当にヤバくないか。俺、高崎さんと休日に二人でご飯に行くんだよな。


 しかも、自分で言っておいて本当に何だが、俺の車で。


 要はかなりの時間、彼女と二人きり...のはず。


 まずい。


 何を話せばいい。


 何を着て行けばいい。


 いや、そう。別にそういうお誘いではないとはわかっている。わかってはいるけれど、俺も最低限の対策はしておかなければならない。気まずくなるのはやはり嫌だからな。


 癪ではあるが、こういう時のことは中野に聞くか?


 いや、駄目だ。会社の奴らには知られない方がいい気がする。高崎さんの名誉のためにも駄目だ。


 特にあんなお喋りな奴、すぐに周りに言いふらすに決まっている。なしだ。


 「......」


 でも本当に、何だろう。現実感が全く湧かない。


 これは夢...?一体何が起こっている。


 それぐらいに非現実的なこと。


 本当にどうする。

 服を買いに行ったりできるのも、金曜日の夜ぐらいか。


 「.....」


 そうだ...。いた。


 相談できるであろう相手。

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