第8話 モテない男は単純な生き物
夜。
俺の自宅のちゃぶ台の上には、お洒落なだんご瓶の5種アソートが包まれた箱...。
もちろんではあるが、こんな洒落たモノ、俺が自分で買ったものでは当然ない。
そして、今まさにネットでその商品の値段を調べてみると3,500円...。
凄く高い。
どうやら、あの時の送迎のお礼らしいが、俺、別に、高崎さんを一昨日に自宅に車で送っただけだよな...。
そう。俺は今朝。彼女が俺の車に忘れていた折り畳み傘を返しに行ったら、「交換です」と言われ何故か代わりに、このお洒落なだんご瓶のセットをいただいた。
「.....」
もしかして、昨日の祝日に買いに行ったりしたのだろうか?
いや、まあ、もちろん。何かのついでなのだろうが、やはりこれはあの時の対価としてはさすがに高すぎる気しかしない...。
そして、なぜ団子なのだろうかと考えていたが、確かに俺は彼女との会話の中で最近は団子にはまっていると言った記憶がある。
基本的に俺は、他人に自分が筋トレをしていること等は知られたくないから、そこまでは口には出していないが団子は脂質が少ないし、美味しいから好き。
まあ、そんなどうでもいいことは置いておいて、俺の頭には、とある本に書いてあった、ある文言が頭にふいに浮かんでくる。
『脈ありの女性は自分とした会話をよく覚えていてくれています』
いや、違うな。明かに。
つい一昨日にした会話に覚えているも糞もない。
「......」
と言うか、本当に俺、どんどん気持ち悪くなっていくな...
なぜ、彼女の行動が脈ありかどうかを、いちいち確認しているんだ。
頭がお花畑すぎる。
でも、結局これはどういう意味で、彼女は俺にくれたのだ。
確かに高崎さんはお礼と言って、こういうものをくれそうな女性ではあるけれど、やはり、明らかに値段が高すぎやしないか?
あれか? 車に乗せたぐらいで俺があとからしつこく自分に恩きせがましく迫ってくるとでも思ったのか? それでその対策でこのような高いものを俺に渡して完全に恩は返したぞという意味なのか?
いや、俺がそんなことするわけがないだろ。
でも...確かに俺、あの場面で彼女にlineを聞いてしまったし、もしかして完全にそう言う奴だとやっぱり内心では思われてしまっている...?
いや、また俺の悪い癖だ。色々とどうでもいいことを考えすぎている気がする。
そう。そもそも彼女とは、どうもこうもなりようがないのだから、さすがに嫌われたくはないが、ほとんどのことは全てどうでもいいこと。
「......」
まあ、とりあえず、何だかんだで今の俺の気持ちを一言で簡単に表すと...嬉しいという気持ちが一番大きい。
そして、つくづく思う、俺は簡単な男だと。
もしかすると、女性から何かを積極的に営業されたりしてしまうと俺は何でも買ってしまうのかもしれない。つまりバカだ。
とにもかくにも、しょうものないことをぐだぐだと考えてしまったが、せっかくだからまずは一つ頂こう。
「.....」
普通に美味しい。
やはり、いつもの3本100円でスーパーで売られている串団子とは違う気がする。
さらに、どんな理由であれ高崎さんからもらったものであることもかなり大きい。
とりあえず、大人としてお礼の連絡はあらためてしておかないといけない...。
あと、どうせいらないと断られるのだろうが、お返しもできるのであればしないと駄目なはず。
そんなことを考えながら俺は、lineのメッセージを静かにスマホに打ち込む。
送信っと。
『団子ありがとうございました。すごく美味しかったです。さすがに何かお返しがしたいのですが、高崎さんは何か食べたいものってあったりしますか?』
実際、やはり無いと言われるのがオチだし、あったらあったで買って返せばいいだけだ。
いや、今思えば、もしかしてこういうのも気持ちがられたりしてしまうのか...?
「....」
まあ、もうどうでもいいけど。
やっぱりこの団子。美味いな。
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