第53話 王都闘技大会


 王都の闘技大会は、予選がある。グミエとグエナちゃんにも話し、全員で参加する事になった。


「なあ、俺達アバターは、専用の装備と、武器無しで参加しないか? もちろん指輪も」


「私は、いいよ。面白くないしな、魔王の力見せてやるよ」


 ハルは、少し勉強して、英語の巻物もある程度読めるようになっていたので、少し魔法が使えるようになっている。


「私も良いよ。真の勇者が、どっちか決めましょ。…………ですわ」


「マイコ、この先辛くなるから、今の内に、その喋り方やめとけー」


「私とグエナは、その方がありがたいよな? まあお前達に勝てる気はしないけど、やるだけやるさ」


「はい。私も頑張ります」


「お兄様? 私も参加しなきゃダメですかー?」


「んー……、じゃあ、トモエは、指輪と武器ありでいいぞ。一応みんな出た方が、アニメ的によくなるんじゃないか?」


「お兄様が、そう言うなら……」


 そして、闘技大会予選。まあ、特に何事もなく終了した。トモエは、セバスさんに、あっさり負けてしまい予選落ちだった。グミエは、予選でハルに当たり負けた。そして、本戦、第一試合は、俺対ヤムチ⚪︎選手。まあ、あっさり勝利。第二試合は、騎士団の人と当たったグエナちゃんが、順当に勝利。そして、第三試合が、やきとり対風の四天王だったが、弱点で怯えたのか、風の四天王が、またしても、風邪を引いたとおそらく仮病で、やきとりの不戦勝。最後の第四試合が、なんと、ハル対マイで、いきなりハルが、闇魔法の大技で、舞台を消し飛ばし、魔王装備をしていないハルは、空を飛べず、場外負け。こうして、一日目は終了した。


「ハルちゃん、何してんのよもー」


「リアル私が、喜ぶと思ってカッコいい魔法使ってあげたんだよ」


「お兄様、カッコ良かったです」


 いつも通り、トモエが、抱きついてきた。


「なあ、これアニメとして、面白い試合あったか?」


「大丈夫です、お兄様。お兄様が出場してるだけで、視聴率がうなぎのぼりですよ」


 まあ、リアルハルも、何も言ってこないし良いか。


「じゃあ、俺達も会場直すの手伝いに行くぞー。特にハル、サボるなよ」


「私は盛り上げようと……」


 みんなで、舞台を直し二日目。

 舞台修復で忘れていたが、今日グエナちゃんとだ……。


 解説「昨日の修繕も終わり、準決勝戦を始めたいと思います。まずは、大人気、妹サイクルの仕掛人、勇者カズキー」


「じゃあ、行ってくるね」


「カズ、アニメだからって、ヤラセ的な事するなよー! 一番サムイからな」


「うん。わかってるよ。でも、アニメって言っちゃダメでしょ、それが一番サムイよ。それに二期って別に決まってないでしょ」


 解説「対するは、妹サイクルの妹、グエナ選手ー」


「グエちゃんも、ガンバってねー。カズくんなんかやっつけちゃえー」


「ありがとう。マイコさん。がんばるね」


 解説「それでは、ファイト!」


「カズキさん、行きますよー『マイちゃんスペシャル』」


「うわーー。降参します」


 解説「こ、降参ー! グエナ選手の勝ちー」


「や、やるね。グエナちゃん」


「へへ」


 控え室にて。


「ちょっとー、グエちゃん、それ私の技ー。一回も成功した事なかったのにー」


「おい、カズ……。どうすんだこれ? 主人公がやっちゃいけない初戦でも決勝でもなく負けるやつ、中途半端」


「いや、グエナちゃんの魔法が強すぎて……」


 解説「続きまして、準決勝戦二試合目、実はよく当たるこの二人、やきとり選手対勇者マイコー」


 今大会一番の大歓声だ。


 解説「皆さん、覚えていらっしゃるでしょうか? コロシアムの闘技大会で、やきとり選手が優勝したあの試合を。バレてないと思っていたのは本人だけ、変装し、偽名を使ってまで出て決勝で敗れた勇者マイコ。雪辱なるかー。さあ、始めてください」


「ちょっ! えーっ!」


 解説「おーっと、やきとり選手、いきなり決勝で見せたあの技、別名、衣装燃やしだー」


「コラ、やきとりー、今回は勇者装備禁止なの。だから下にも着てないからー、全部燃えちゃうからー」


 今大会一番の歓声を更新した。


「きゃー、降参、降参よ」


 解説「決まりましたー。やきとり選手、決勝進出ー」


 控え室にて。


「マイ、お前、みんな出ないって決めたコロシアムの大会出てたのか?」


「マイコ、みんな居なかったのに、優勝出来なかったのか? ははは、だっせー、勇者が聞いて呆れるな」


「カズくん、こんなのアニメになったら、私、お嫁にいけない。責任とってよね」


「そんな事より、グエナちゃん、棄権しよう。マイと違って、グエナちゃんの柔肌が晒されたら、俺は生きていけない」


「そんな事って、何よぉ」


「わかりました。棄権します」


 こうして、闘技大会は、やきとりの優勝で終わった。


「最上殿ー、最上殿はおられるかー?」


「ん? どうしたの? バーリエさん。そういえば、今大会出てなかったね」


「当たり前だ、今回の副賞の奴隷は、私の息子なのだぞ」


「え? 息子産まれてたの? 副団長との?」


「そうだ! お前達が、今回出場するってなってたから、息子を奴隷に出したのだぞ。お前達の誰かが優勝すると思って、魔物の奴隷になってしまったではないか」


「そんな事も出来るんだ。へー。息子さんは納得してるんでしょ?」


「まあ、そうなんだが……、しかしだな」


「いいじゃん、やきとり良いやつだぞ。なあハル?」


「ああ、良いやつだよ。アイツのバーベキューは美味いよ。火加減がホント絶妙なんだよ」


「良かったね。バーリエさん。今度バーベキューご馳走してよ」


「最上殿……」


「ウチらも帰ろーか? もうこれアニメにならんでしょ? 普通に暮らそう。ごめんな、リアルハル」


 団長の息子って……、歳取らないのに産まれるものなのか? 俺らが認識すると成長止まる的なやつなのかな?

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