第49話 ネタバレ 2


「あー、凄いね、オタクくん」


「それで、初めはお兄様の、AIが、部長の権利とか、俺なら絶対面白くなるとか、言って入りました。この世界の設定や背景などは、初めは、ほぼほぼ、二人でやっていたのですが、お兄様の絵が、そのー…、個性的なので、ハルカ先輩が、担当する事が、多くなって行きましたね。背景などに合わせて設定とかも決めて行ったみたいです」


「なるほど、流石部長だな。俺」


「それからは、ハルカ先輩とお兄様が、結構言い争いながら、どんどん世界が出来て行きましたね。お兄様は、王道ファンタジーをやりたかったみたいで、まあ、ハルカ先輩も、それに乗っかる感じで、モンスターを描いたりしてくれてました。時々出てくる雑なモンスターは、お兄様の絵です……。ですが、すっごい冒険王に俺のアバターはなる! みたいな事を言って始めたんですが、何せ、ボッチで引き篭もりオタクのお兄様じゃないですかー? 自転車屋を始めて、一生このまま終わっちゃう? みたいな時くらいまでは、頭に響く声として、参加してたんですが、その頃に興味なくして、その後は、ほぼ、ハルカ先輩が一人でやってましたね」


「ちょっと、待てーい。色々ツッコミたいが、初めの方の頭の声って、俺だったの? じゃあ、俺は俺とモメるというか、俺にムカついてたの?」


「そうですね。あれは、部内でも笑いが取れてましたよ。一人芝居だぁー、みたいな?」


「俺はやめて、何してんの? 何でやめたの?」


「お兄様は、ハルカ先輩と、結構もめてたんですよ。それはもう毎日。自分なら大丈夫。凄い冒険者になって、絶対面白くなるって、言って、初期設定に主人公の目的とか設定しないで、始めたもんだから、バイトばっかりしてたりとかは、面白くないとか、金ばっかりのこの世界は、世知辛いから、とか、ハルカ先輩は、それに対して、世の中の厳しさとか、言ったりして、それでも、ハルカ先輩が作った魔法の作り込みが凄かったから、しばらく続けてたんですけどね」


「なるほど、確かに、たかが高校生が作ったなら色々すごいけど、まあ、雑なとこも多くない?」


「いや、私から見ても、ホントに凄かったんです。ただ、お兄様が、生かしきれてないと言うか、ボッチ気質というか……」


「そんな事ないでしょ、別に引き篭もってもないし……」


「いえ、じゃあ、お兄様。この世界の人の名前どれだけ覚えてますか?」


「グミエでしょ、グエナちゃんでしょ、ジョン君でしょ、ガーテラさんに、バーリエさん、あ、セバスさんも」


「それだけじゃないですかー! この世界にもう何年もいますよねー? そもそも、ジョン君の主人の貴族の名前は? ガーテラさんの旦那さんや、バーリエさんの旦那の名前言えますか? あり得ないですよー。魔法研究所の人達の名前も、一人でも言えますか? 他にもチャンスはありましたよ。サンドワームから救ってあげたパーティーとか、自己紹介してましたよ」


「あ、はい。すいません。ちょっと、怖いよ。我が妹よ」


「あ、失礼しました。お兄様。でも、ハルカ先輩は、住人全員に名前やパラメーターなどを、細かく設定してたんですよ。ハンパない労力です。この世界の住人は全員の名前が濁点から始まるんですよ。まあ、ほとんど名前覚えてないお兄様は気づかないかもですけど……。あと、セバスさんですが、あれはハルカ先輩が、あとから設定をわざわざ変えてくれたんですよ。お兄様が、名前覚えないから、人の名前が予想で、当たる訳ないじゃないですか! まあ、その他にも、ハルカ先輩が、ちゃんと設定したカラフルな魔物とか、お兄様は、弱点関係なく倒しちゃうじゃないですか? あとあと、お兄様、この世界で瀕死とかになった事あります? 無いですよね? そんな主人公つまらないし、結局、闘技大会一回もでてないてすよね? この魔法とか、モンスターだらけの世界で」


「それは、俺のせいでは……。ハル、なんか、ごめんな」


「えっ? ああ、いいよ。私は知らないけど……」


「ちと、待て。王道ファンタジーなら当然いるべき、エルフとかドワーフは何故いない? それに王道中の王道の敵、ドラゴンは?」


「お兄様が、越竹と桜ヶ丘東にしか行かないからですよ。他の所に行こうとすればハルカ先輩はすぐ描きますよ。ドラゴンはお兄様が初めの頃、俺が描くと言って聞かなくて、描いたのが酷くてそれでもどうしても使えってゴネてハルカ先輩が無理やり使ったのが、サンドワームですよー。経験値がドラゴンのまま変え忘れたからレベル上げに使われているんですぅ」


「な、なんだと……」


「まぁ、勇者の指輪の設定ミスでもあるんですけどね。その事でも、お兄様とハルカ先輩は揉めてましたね。ゲームでは無いのでデバック出来ないとか何とか。重ね掛けを想定していなかったみたいです」


「まあ、そんなこんなで、最後はハルカ先輩とマイコ先輩が、こっちに来るって、なった時に、ハルカ先輩が、味覚の設定をしたらしいんです。その時、私は、修学旅行で、居なかったんですけど、お兄様が、ハルとマイだけ、味あってズルい。みたいなケンカになったとか聞きました」


「味覚がないのは、俺がこの世界に来た時の設定のし忘れって事かな? 味覚って、俺今もないけど……、付け足せそうだけど?」


「おそらくは、設定し直せますね」


「ハルー、何でつけてくれないのー?」


「いや、知らんて」


「ハルカ先輩は、凝り性と言うか、ちゃんと設定する所は、兎に角、細かく設定するんですよ。ただ大きな部分を忘れてる所もありまして、例えば、この世界、雨一度も降ってないですよね? なのに、川流れてるし」


「あ……」


「はは……」


「ウチら三人気づいてなかったんか……」


「あとは、そうですねー、透視、ズームを使えばどこまででも見えちゃいますよね? お兄様。日本で、というか向こうの世界で、水平線が何キロ先まで見えるか、知ってます? まあ、この世界は丸くないですし、果てなんてありますし」


 …………。


「あとは、お兄様が、ボッチ気質で良かったというか何というか、お店が、閉まっているところ見た事ありますか? お兄様が、人として、認識してる人しか、休憩も睡眠も取らないんですよ。だって、24時間、明るいんですよ。お店の人はいつ寝てますか?」


「それは、交代で、とか?」


「お兄様。その交代してるお店の人の名前や顔がわかりますか?」


「すいません……。じゃあ、俺は部長なのに、文化祭をハルに押し付けて辞めちゃったと」


「いえ、お兄様は、自分の世界を一人で作って、文化祭に参加すると言って、自宅のパソコンで新しくこのアプリを始めてました。ハルカ先輩は本当にこの世界を作り込んでいたから、辞められなかったのでしょう。一人でも続ける事にしたんです」


「おお、マジか。やるな俺。で、ハルとマイは、何でこっちに来る事になったの?」


「私は一年生なので、修学旅行でいなかったので、後から聞いた話しなんですけど、初めはハルカ先輩だけ、魔王としてこっちにくれば、面白くなる。みたいな話しだったそうなんですが、たまたま、陸上部が休みの時に来た、マイコ先輩が、カズくんは、そんなんじゃ変わらないよ。みたいな事言ったみたいで、私もやるーみたいになって、仲良くならないように、アバターの初期設定にレディース総長の、記憶を、足したそうですね」


「なるほど、確かにそれなら、勇者対魔王の構図が出来て面白そう。んで、二人の強さを同じくらいにする為に、ハルには、魔法を使えなくして、マイには、俺が勇者の指輪を渡さないようにしたと」


「いえ、それは違います。お兄様」


「もう、カズくん黙っててカッコ悪い」


 …………。

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