第44話 何でも知っている


「私、お茶淹れますね」


「ありがとうございます。グエナさん。私、紅茶がいいです」


「んで、トモエは、何で普通にカズキの上に座るんだ?」


「ここが、私の指定席なんですよ。ねーお兄様」


「カズキも、自然に頭撫でるな!」


「はっ、手が勝手に……」


「カズ、聖女ってのは、どんなやつって、書いてあったのよ?」


「その前に、カズキ、さっき、タイガーウルフ達からのダンジョンのアイテムの中に、こんなん有ったんだよ」


「あ、聖女の指輪ですね? くださーい」


「今まで、そんなの出た事ないよな?」


「そうだね」


「はい。お兄様。合成してください」


「あ、うん」


「カズ、何よそれ? 何で今まで、黙ってたの? 私のもしてよ」


 あ、ハルの指輪……見慣れ過ぎて、忘れてた……。


「わかったよ。……ハイ」


「カズ、ダンジョンのドロップに、魔王の指輪あったんじゃないでしょうねー?」


「……ん、あ、ん」


「そんな事よりカズキ、聖女ってのは何だったの?」


 ナイス、グミエ。


「簡単に言うと、聖女は本当の事しか、言わないって、ただし、制限が、あるって。それと、主人公だって」


「主人公って事は、カズキ達と一緒だよな」

 

「お茶入りましたよー。それじゃあ、妹って言うのも……?」


「あ、ホントに美味しい。ありがと、グエナさん」


「で、トモエ、話せる事を話してくれ」


「んー、話せる事って、言われてもー、お兄様が、聞きたい事を聞いてください。それよりー、寝てる間に、私の事、調べたんですか? もー、私の事信じてくださいよー」


「うん。信じるよ。あの本に、嘘が書いてあるとは、思えないし」


「だーかーらー、本じゃなくて、私の事ですよー」


「わかった、わかった。ごめん、ごめん」


「カズキさん、また、自然に、頭ポンポンしてるじゃないですかー」


「はっ……! 手が勝手に」


「それ、さっきやったぞ、カズキ」


「俺達が、死んだかって事は、答えられないんだったよな? じゃあ、トモエは、何しに来たんだ?」


「えーと、お兄様達を護りにきたんですよ。大変なんです、ホントに、危険なんですよー」


「ん? 何から?」


「えーと、何からって言うのは、わからないんですけど、ホントに、ホントに危ないんですぅ」


「何でも知ってるんじゃ無いのか?」


「何でも知ってるんですけど、それは、わからないって、いうかぁ、うーん、説明できないよー」


「トモエ、自分で言うのも何だけど、私達強いぞ、特にカズキとかハルカなんて、倒せるやつなんていないんじゃないか?」


「知ってますよー。そう言う事じゃ無いんですよ」


「うーん……。わからないけど、わかった。俺達を護りに来たって言ってるけど、どうやって? トモエあんまり強くないよね?」


「聖女の魔法で、です。だから、お兄様、お金ください。お金持ちでしょ」


「まぁ、カワイイ妹に言われたら、お小遣いくらいあげるけど、聖女が、お金請求する?」


「カズキさん……」


「聖女の魔法は、魔力じゃなくて、お金が無いと、発動出来ないんですよー。でも全てを護れるんです」


「マジで? どんな聖女さ……、で、いくら欲しいの?」


「有るだけ、全部です」


「ちょっ、トモエ、カズキが、どんだけ持ってるか知ってるのか? 下手したら、国家予算より持ってるよ」


「だから、知ってますってー、それもダメなんですよー経済が廻ってません。それに、それでも、もしかしたら足りないかもなんですー」


「どんな魔法なんだ?」


「お金を対価に、全てを護るんです。そう全てです」


「俺達の防御魔法じゃダメなのか?」


「おそらくは……」


「んー、とりあえず、半分渡すよ」


「えーっ、私を信じてって言ってるのにー」


「半分で、どれだけあると思ってるんだ?」


「だから、知ってますって、足りないかもって言ってるじゃないですかー」


「かも、って、何だ? かも、って」


「何されるか、わからないんですよー」


 半分の財産を渡した。


「カズ、何かわからないけど、ゴードンのやつが騒いでるから、ちょっと行ってくる」


「あ、うん。わかったー」


「グエナさーん。何か食べさせてくださーい」


「あ、はい。いいですよ。何が食べたいですか?」


「んー、じゃあ、オムライス。ちゃんと、萌え萌えキュンって、やってくださいねー」


「わかりました。任せてください」


「お兄様。他に聞きたい事は、無いですか? 私のスリーサイズとかでも、特別に良いですよ」


「スリーサイズは?」


「スリーサイズは、ですねぇ。上からー……」


「おい、カズキ、妹のスリーサイズ聞く兄がいるかー」


「もー、出来ましたよ」


「ありがとう。……うん。ホントに美味しい。まあ、私達は、食事しなくてもいいんですけどね」


「ん? どう言う事だ? ちゃんと、お腹空くぞ」


「空いた気分になってるだけですよー。食べなくても死にません。お兄様ったら、味もしないのにしっかり食べてー」


「は? 俺が、味しないのは、病気なのか? エリクサーでも、治らなかったんだが……」


「えと、病気とかじゃあ無いんですけどぉー、言えません」


「何だそりゃ」


「なぁ、トモエ、日本人じゃない私達もか?」


「えと、それは……、わかりません」


「何だよ、何でも知ってるんじゃないのか?」


「あはは、何でも知ってるんですけど、知ってることだけです」


「だから、なんなんだよそれ」


「トモエ、危険ってのは、いつなんだ?」


「それは、わかりません。でも、いつ来てもおかしく無いんです。だから、意味無いかも知れませんが、お兄様、常に感知スキル忘れないでくださいね」


「何にも、わからないじゃないか、この聖女」


「あー、ひっどーい。グエナさんが、覚えたグミエさんの悪口魔法、全部知ってるんですからねー」


「悪かったよ」


 それから、マイが、王都から帰って来て、やはり、青白い光の事だったらしいが、特に情報は無かった。

 まあ、その本人が、ここにいるし……。

 ハルは、帰ってこなかった。

 トモエが、泊まる泊まらないで、一悶着あったが、泊まる事に、てか、住む事になった。マイは、しぶしぶ、自宅へ戻った。

 その後、俺の部屋で、


「なあ、トモエー、俺って何してた人間だったんだぁー?」


「言えませーん」


「俺って、彼女いたのか?」


「んー……、言えませーん」


「お兄様、寝ますよ」


「お前、さっき寝てただろ」


「疲れてるんですよー、ハルカ先輩のせいで」


「ん? ハル?」


「おやすみなさーい」


「ん、おやすみー」

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