第42話 決勝


「本当に、おつかれ。次、決勝だけどいける?」


「もちろん、いけるよ」


「私もです。本気でいきますよ」


「うん」


 グミエとグエナちゃんに、もっと声をかけるべきだとは、思ったが、二人の表情を見てやめた。何だか、二人の世界みたいのを感じたからだ。二人のレベルは一つ差、能力値では、測れない闘いを何度も見てきたから、どっちが勝つかわからない闘いだ。二人の表情から良い闘いになる気がした。


「グミエもグエナも、がんばれよ」


「ああ」


「ありがとうございます。ハルカさん」


「そろそろ、休憩終わりだね。俺行くね」


 コロシアム会場は超満員だ。


「長らくお待たせいたしました。これより決勝戦を始めたいと思います。盛り上がってますかー」


 オオーッと歓声が起きた。


「本当に、盛り上がってるかー」


 ヴオオオオオーーっと大歓声が起きた。


「ニューヨークへ行きたいかー?」


 …………にゅうようく? 入浴? 銭湯って事? 温泉じゃない?

 などと言う声が聞こえた。

 ごめん、ホントごめんって……。

 俺もグエナちゃんとグミエが出る事に興奮していた様だ。……反省した。


「それでは、入場していたたきます。魔王、騎士団夫妻、四天王を、降しての、進出、グエナ、イモぺペアー」


 グエナコールだ。登場した、グエナちゃんは、観客にお辞儀をしている。


「カズキさん、イモぺは、闘わなくていいかなぁ? 危ないし」


 俺はグエナちゃんに、オーケーのサインを出した。


「イモぺ選手は、決勝には、出場しない事になりました。これまで、一緒に頑張ってきたイモぺ選手に、温かい拍手をお願いします」


 イモぺは、誇らしげに、場外へ下がって行った。


「対する選手は、ヤムチ⚪︎選手、貴族チーム、勇者マイコを、くだしての進出、グミエ選手の登場だぁー」


 グミエコールが、上がった。グミエは、片腕を上げて堂々と入場した。


「尚、この二人は、実の姉妹、姉妹といえば、当然、妹の方を応援したくなっちゃいますよね? わかります。かく言う私も……」


「ちょっ、おい、カズキ、審判なんだから、公平にしてよ」


「それでは、始めてもらいましょう。決勝戦開始ー」


「グエナ、遠慮は要らないからな」


「うん。お姉ちゃん、私、負けないよ」


 真剣な表情の二人だったが、意外にも、先に仕掛けたのはグエナちゃんだ。まず、軽い魔法を撃ち、まさかの接近戦を仕掛けた。これに、応戦するグミエ。激しい攻防が続き、とんでもない、スピードと気迫の両者。一旦距離をとった二人、ここでやっと、試合が途切れ、息をするのも忘れて見入ってしまっただろう観客が、一気に湧き立った。


「やっぱり強いね。お姉ちゃん」


「グエナこそ、今度はこっちから行くよ」


 さらに、大歓声後、今度は、グミエから、仕掛けたのが、またまた意外な魔法合戦だ。その両者の魔法は色とりどりで、観客をさらに魅了した。二人の得意な魔法が、違うので、色々な技の応酬だ。この世界の人々の、一対一は、得意な魔法が、同じか、全く逆かの二パターンしかないからだ。この二人は、後者だ。この場合、普通は、早々に決着がつく事が多い。なぜなら、攻撃魔法が、両者にとって弱点だからである。グミエと、グエナちゃんは、苦手な方も両方とも上級の魔法まで使えるが、レベルアップで一切ステータスが上がらない為、装備によるものだから、得意な属性には、遠く及ばない。それでも怯まない。また、一旦試合が、途切れると、大歓声が響き渡った。


「はは、本当にグエナ強くなったね」


「もう、いっぱいいっぱいだよ。ふぅ、でも私、勝つよ」


 二人は、もうヘトヘトだろうに、表情からは、まだまだ、と言った感じだ。そして、今度はスキルや接近戦からの魔法など、ミックスの、まさに本気の闘いが始まった。どちらかが、分身を出せば、それを受けて、分身を出すと、いった具合に、一歩も引かない。いつの間にか、近接攻撃には、全て魔法を付与した、攻撃になっていた。赤、青、茶、緑、が、会場中を、物凄い勢いで飛び回り、二人は、意識していないだろうが、観客を飽きさせない。そして、若干だか、グミエが押し始めた、これは、経験の差なのか、スタミナの差なのか、一度大きな一発を喰らってしまった、グエナちゃんは、少し防戦気味になり始めた。そして、また、二人が、距離を取り一息ついた。同時に、観客も一息ついた感じだ。もう、いつ決着が着いてもおかしくない状態だ。この試合は、ハルもマイも、のめり込んで見入ってしまっている。グミエは、本当に、ボロボロに見えるが、グエナちゃんは、立っているのがやっとって感じだが、まだ諦めないといった表情を浮かべている。


「そろそろ、終わりにしようかグエナ、よく頑張ったよ」


 立っているのもやっとの状態で、


「私、まだまだ、やれるよ」


 その瞬間、無情にもグエナちゃんが、レベルアップしてしまったのだ。これは、本人もビックリと言った表情で、これにはすぐにグミエも、気がついた。


「ごめんね。お姉ちゃん。私の勝ちだね」


「上等だ。やってやるよ」


「でも、流石に、このままやってもだから、最後に、私の連続魔法に耐えれたら、お姉ちゃんの勝ちって事にしてあげる。どう?」


 これには、グミエも了承するしかなかった。


「じゃあ、いくよ、お姉ちゃん」


「いつでもこい!」


『お姉ちゃんは、12歳まで、おねしょしてた』


『お姉ちゃんは、今でも、くまさんのぬいぐるみを抱いてないと眠れない』


『お姉ちゃんは、お化けが怖くて、すぐ私に抱きついてくる』


「わ、わかった。グエナ、私の負けでいい。降参だ。だからもう勘弁してくれ」


「えー、まだまだ、昨日買ってきた、私が名前つけた魔法あるのにー」


 魔法の効果は、とんでもなくショボい物だったが、グミエには、効果的だったようだ。

 そういえば、昨日、試合終わった後、グエナちゃん居なかったな……。


「グミエ選手、降参だ。優勝は、グエナ、イモぺペアー」

 

 観客は、一瞬静まり返ったが、すぐに大歓声と両者を讃える拍手になった。


「それでは、皆様、ここはダンジョンですので、お忘れ物の無い様にお願いします。ありがとうごさいましたー」


 こうして、無事、第一回コロシアム闘技大会は、幕を下ろした。

 控え室に移動し、


「二人とも、おつかれー、本当に良い試合だったよ」


「オバサンにしては、良かったんじゃない?」

 

「グミエ、グエナ、ホント凄かったよー。グエナ最後の魔法アレ何?」


「あはは、昨日、王都で大急ぎで、何でも良いから魔法作って貰ったんですよー。その名前の権利を売って貰いました。まだまだ、ありますよ。聞きます?」


「やめろ、グエナ」


「グエナ様、おめでとう御座います」


「あ、セバスさん。ありがとうございます。セバスさんも、お疲れ様でした」


 セバスさんは、本当に何者なんだ……?

 そういえば、今日一番の歓声は、グミエがマイのサラシ取った時だったな……。

 その後、副賞の安全エリアで、グエナちゃんは、裁縫スキルを活かして、アパレルショップを始めた。ほとんどが、特攻服だ。これが、大ヒット商品になった。安全エリアと言っても、ただの無法地帯を特別区画にしただけなので、グエナちゃんとグミエには、バレている。なので、グミエにも、特別区画を頼まれたが、折角の副賞なので、断った。

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