第41話 準決勝
一日目は大盛況に終わり、翌日。
「みんな、おはよう。体調どう?」
「おはよう。バッチリだよ。絶対優勝するから観てて、カズキ」
「おはようございまーす」
「おはよ」
「グエナちゃん、マイも、おはよ。ガンバってね」
「うん。がんばるぅ」
マイは、そう言うと、抱きついてきた。
「こらー、そこの、ぶりっ子」
「うるさいわね、一回戦負けのハルちゃんは、黙ってなさい」
「なにぃー、上等だ、表出な、マイコ」
「いやいや、表ってコロシアム会場だよ」
「そうよ。そもそも、ここ選手控え室なのよ。ハルちゃんもう負けてんだから出ないじゃない。何で来てんのよ」
「まぁまぁ、そろそろ、時間だよ。俺いくね」
会場に行き、観客席を、見渡すと、満員では無いが、昨日の一回戦より人が、多いようだ。
「みなさん、本日もご来場いただきありがとうございます。ここで、お知らせがございます。二回戦出場予定だった、セバスチャン選手は棄権したため、対戦予定だった、マイコ選手の不戦勝と、させていたたきます」
これには、会場から、落胆の声が上がった。
「では、はりきって、参りましょう。夢の対決が実現しました。魔物の国の四天王対決、ゴードン選手対はっちゃん選手ー」
ん? あんまり、盛り上がってないな……。セバスさんの欠場が響いているのか?
「それでは、始めてください」
あっさり、終わってしまった……。当然の結果だった。弱点だったのだ。会場のみんなも気づいていた様だ。
「勝者、ゴードン選手ー」
……盛り上がってない。
「盛り上がって参りましょう。続いての対戦は、先日、魔王をくだした、グエナ、イモぺペア、対するは、夫婦の息もピッタリ、騎士団ペアだー」
大歓声に変わった。グエナちゃんもすでに、スター選手のようだ。
良かった……。
「それでは、始めてください」
開始早々に、イモぺが突進し、騎士団を翻弄する。騎士団ペアも、良いコンビネーションで闘ってはいるが、試合時間10分も経たず決着。自力で勝るグエナちゃんの圧勝だった。これには、魔王の勝利もまぐれと思っていた人達も、完全にグエナちゃんを認める事になった。
グエナコールが、鳴り響いた。
グエナちゃんと、バーリエさんは握手をして、大歓声に包まれた。団長ペアも称える歓声があった。
「盛り上がって参りました。続きまして、ジャラジャラ対決、どちらの装備に、お金がかかっているのか、グミエ選手対、貴族チーム」
「おい、カズキ」
「では、始めてくださーい」
「おい、腐れ勇者の奴隷たち、よくも私のアネゴとアネッキーをいたぶってくれたな。覚悟しろよ」
貴族チームは、最初から戦車で、昨日は無かった対物ライフルの様な物も、戦車から、いくつも飛び出している。そして、一斉砲撃が始まった。それを全て受けきったグミエが、
「もう終わりか?」
そう言うと、戦車にゆっくり歩いていき、一台づつ、戦車ごと、殴って、場外へ飛ばしていき、最後の戦車から、出てきた貴族が降参宣言しそうなのを阻止して、殴り飛ばして、終了した。
「勝者。グミエ選手」
これには、歓声どころか、観客が引いていた。
「次の対戦なのですが、セバスチャン選手棄権した為、マイコ選手の不戦勝とさせていただきます。続きまして、準決勝戦の開始といたします。四天王唯一の生き残り、ゴードン選手対グエナ、イモぺペアー」
ゴードンコールとグエナコール、そして、小さめのイモぺコールが響いた。しかし、この試合は、案の定、グエナちゃんの瞬殺で終わった。もう、誰もグエナちゃんの実力を疑わなくなっていた。
「では、準決勝二試合目、優勝候補同士、グミエ選手対、マイコ選手ー」
割れんばかりの大歓声だ。
「では、登場してもらいましょう。まずは、圧倒的なチカラで成金対決に、勝利した、グミエ選手ー」
グミエコールだ。
「おい、カズキ」
「続きまして、不戦勝で勝ち上がった、ラッキー勇者、今日の衣装は、ビキニなのか? マイコ選手ー」
ブーイングだ。
「ちょっと、カズくん。不戦勝じゃなくても勝てたし、ビキニキャラ付けるのやめてー」
「それでは、始めてもらいましょう。準決勝戦、第二試合開始ー」
「やっと、決着を着ける時がきたな、クソ勇者」
「あんたなんて、相手にならないわよ、成金オバサン」
しばらくの、言い合いの後、やっと動きだした二人。それは本当に壮絶な闘いだった。一歩も引かない二人。1時間は、やり合っている。観客も物凄い闘いから目が離せないと言った感じだ。俺とグミエとグエナちゃんは、もう49階層まで攻略済みなので毎日膨大な経験値が入っているのに、互角なのだ。勇者の基礎値が高い事と勇者の指輪一つでだ。ただ、残念なのが、両者共に、闘いながら、悪口を言い合っているのだ。本当に互角なので、喋るのをやめた方が、勝てるのでは? と言った感じである。そして、両者フラフラの中、グミエが、マイの、サラシを掴んだ。
「おーと、これは、グミエ選手、サラシを引っ張ったー、マイ選手、回されています。せめて、あーーれーーって、言って欲しかったものですねー」
観客は、本日最大の歓声を上げた。
「ちょっとー、あんた何すんのよー!」
「それより、お前、その胸、盛ってないか?」
ブーイングが起こった。金返せーなどの野次も聞こえてきた。
「もっ、盛ってないわよー、天然よ」
「ホントかぁ? 前見たときは、もっとこう」
いや、二人ともフラフラなのに、何であんなに言い合ってんの……?
「うっさい、ババア。もう、怒った。あんた、私の次の攻撃避けなさいよ。死んじゃうんだから」
「は? やれるもんなら、やってみな」
「ホントに、死んじゃうんだからね」
「だから、やってみろって、胸盛り勇者」
「もー知らない『虹アタック』」
は? ヤバッ……。
俺が、この魔法使う所を何度か見てたからなのか、グミエは、防御魔法を張り、瞬時に横へ飛び交わしたかに、見えたのだが、全属性魔法だ。カスっていたのか、グミエは瀕死の状態だ。マイは、これを見逃さず、
「よく生きてたわ、褒めてあげる。でも、これで終わりよ」
そう言うと、グミエにトドメをさしに、突っ込んでいった。
俺も、これは危険と判断し、止めに入ろうとしたら、グミエは、難なく、マイの攻撃を交わし、反撃して、場外へ飛ばしたのだ。
俺も本当に意味が分からなかったが、グミエの姿を見て、すぐに、気づいた。そう、あの瞬間、ダンジョンから常に入っている経験値でレベルアップして、全回復してしまったのだ。
「場外ー。勝者グミエ選手ー」
大歓声と共に、二人を称える声が上がった。
「少し、休憩をはさんで、次はいよいよ決勝戦でーす」
控え室にて。
「お疲れ様ー。二人とも本当に凄かったよ」
「あー、くやしい、オバサンに負けるなんて」
「私の勝ちだ。クソ勇者」
グミエは、もっとマイに勝ち誇ると思ったが、これだけだった。あのレベルアップが無ければ、負けていたと分かっていたのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます