第40話 闘技大会初日


 コロシアム主催、闘技大会、優勝賞金、1億円、副賞、全属性レベル5が付与されたブローチ、一部の安全エリア。

 

 闘技大会、当日。選手控え室。


「じゃあ、二人ともガンバってね」


「はい」


「絶対優勝してやる」


 グミエもグエナちゃんも参加者だ。俺は実況兼審判である。


「あの、以前は助けていただきありがとうございました」


 …‥誰?


「僕達、モヒカンズで一回戦に出るんです。前にカラフルサンドで、お会いした」


「あ、うん。も、もちろん覚えてるよ。ガンバってね。そろそろ、行こうか」


 この大会は、複数チームもある。


「それでは、コロシアム主催、第一回、闘技大会を始めます。一回戦は、ギルマス率いる越竹最強パーティー、モヒカンズ、対、魔物の四天王、ゴードン。それでは、始めて下さい」


 大歓声だ。

 開始から10分後、最後まで立っていたギルマスだが、ゴードンに吹き飛ばされて場外負けだ。


 うん。アイツらも強くなってたな……たぶん、知らんけど。


「では、続けて行きましょう。こちらも魔物の国からの四天王、クラーケンの、はっちゃんだー、対するは、もっか、コロシアム20連勝中の、サブロー」


 大歓声だ。サブローは人気がある。36階層のザコである。名前は俺がつけた。


「サブローも、健闘しましたが、やはり四天王は強い。勝者はっちゃん」


 しかし、足めっちゃあるのに、何で、ハルは、はっちゃんなんて名前つけたんだろ……?


「では、三回戦は、グエナ、イモぺペア、対、魔王ハルカー」


 グエナちゃんは、コロシアムには参加していないのでほぼ無名である。ハルは、暇つぶしに、たまにコロシアムに参加して、全試合、ワンパンで終わらせている。

 グエナちゃんとイモぺが、舞台に登場し、観客がアレ誰だ? 妹サイクルの奴隷の、などと噂している中、ハルが登場し、大歓声だ。魔王もすでに受け入れられているようだ。ハルは、グエナちゃんの裁縫スキルで、作られた特攻服を身に纏っている。


「グエナー。この服いい感じだな。でも、悪いけど、一瞬で終わらせるよ。降参するなら今だよ。くじ運悪かったと思って諦めなよ」


 しかし、グエナちゃんは、何も反応せず、隣のイモぺだけが、吠えている。


「何だー、グエナ、ビビッて、声も出ないか?」


「では、始めてくださーい」


 無視されて、怒ったのか、いいぜ、じゃあ望み通り一瞬で、と言いグエナちゃんに、ものすごいスピードで殴りかかったが、


「かかったね、ハルカさん」


 そう言うと、ハルの背後から、急に現れて、ハルを場外まで飛ばした。


「場外、グエナ、イモぺペアの勝利ー」


 ハルは、とても驚いた顔をしていた。観客も何が起こったか分からなかった様だ。一瞬、間を開けてからの、大歓声だ。そう、グエナちゃんは、初めから分身体を、会場に出して、自分は潜伏スキルとミラージュで消えていたのだ。俺も驚かされた。


「それでは、盛り上がってまいりました。どんどん、行きましょう。次の試合は、まずは、この方々、近衛騎士団団長夫妻ー」


 登場し、大歓声だ。団長は大人気である。


「対するはー、特別ゲスト、ダンジョン30階層のボス、名前はまだ無い選手ー。間違えないでいただきたいのが、名前はまだ無いが、名前です」


 会場は、静まり返ってしまった。

 俺が、スベったみたいな雰囲気になってるけど、出場者登録の時に、名前聞かれてそう答えたら、そのまま登録されただけだ。そう言い訳をしたかったが、飲み込んだ。


「で、では、始めてくださーい」


 ボスの登場に、会場は、どよめいていた。そう、団長達も含め、誰も見た事が無いのだ。俺達が、ダンジョンを攻略する前までの、最高到達地点は、27階層、それも、近衛騎士団団長の精鋭部隊で、だ。なので、二人の今の対戦は、正直、団長夫妻でも厳しいと思ったが、約1時間の死闘で、団長達が勝利した。最後は、夫妻の息の合った連携で、団長がトドメをさした。そして、ボスは、クリスタルに変わり、なんと、レアドロップの、光の指輪を落とした。これには、会場が湧き、団長コールが、鳴り止まなかった。


「素晴らしい試合でしたね。続いて参ります。まずはこの方、みなさんご存知、今大会優勝候補の一人、コロシアムのタイトルホルダー、グミエ選手の入場です」


 団長コールから、一変しての大歓声。グミエは、コロシアムの英雄みたいな扱いなのだ。


「対しますは、謎の選手、魔法研究所からの推薦で、出場が決まった。ヤムチ⚪︎選手だー。なんでも、狼牙プープー拳の使い手だとか、期待しましょう」


 会場の盛り上がりは続いている。


「それでは、始めてくださーい」


 グミエの圧勝かと思ったが、ヤムチ⚪︎選手頑張ってるなぁ。


「激しい攻防が、続いています。おーと、ここで、ヤムチ⚪︎選手なにやら、構えました。大技かー?」


『太陽ケーン(拳じゃないよケーンはリン風に頼むよ)』


「おおーと、これは物凄い光だー」


 俺とグミエとグエナちゃんは、ダンジョンで光り続ける階層があったので、サングラス作成のテストで俺が使うこの魔法の構えを知っていたのだ。即座にアイテムバッグからサングラスを取り出し、この隙を見逃さず、


「ヤムチ⚪︎選手、ダウーン。これは起き上がれないかー? グミエ選手の勝利でーす」


 会場は、光で、ほとんどの人が、決着の瞬間を見逃した。ほどなくして、大歓声が、湧き上がった。


「そろそろ、皆さんの目を回復したでしょうか? 続けて参ります。次は、パーティーでの参加者たち、貴族5人チーム対、アネゴ、アネッキーペア」


 ちなみに、今のダンジョンのアイテム回収係は、新しくペットにした、タイガーウルフの群れである。イモぺとアネッキーとアネゴは、回収係は卒業して、ただのペットである。


「さあ、貴族のみなさんは、どんな闘いを見せてくれるでしょうか? 先程勝利した、グミエ選手にも劣らないジャラジャラっぷりだー」


「コラ、カズキー」


 あ、グミエに聞かれてた……。


「そ、それでは、始めてくださーい」


 開始早々、アネゴとアネッキーは、スピードで翻弄しながら、貴族達を、襲う。貴族たちは、負けじと上級魔法の連発だ。貴族たちは、アネゴとアネッキーの実力を舐めていたのか、驚いた様子で、アイコンタクトをし、作戦変更の様だ。すると、貴族たちは、それぞれ、とても高そうな、アイテムバッグから戦車の様な物を取り出し、乗り込んだ。


「ああー、これは流石にきたない。しかし、何でもありのルール、認めましょう」


 これには、なす術なく、アネゴとアネッキーは敗れた。会場からは、若干のブーイングが起きた。


「気を取り直して参りましょう。続いては、あの20連勝しているサブロー選手よりも下の階、39階層からの刺客、コロシアムでは、初出場の、サンキュー選手」


 見たことの無い魔族に会場はざわついている。


「対するは、風の四天王が、出場予定だったのですが、本日、風邪をひいたとの事で、不戦敗にしようかと、運営に相談したところ、ならば、私がと、名乗りを上げた、コロシアム運営副社長、セバスチャン選手だー」


 結構、盛り上がっている。知っている人もいるみたいだ。


「怪我のないよう、気をつけて、ガンバってほしいものです。それでは、始めてください」


 その刹那、一瞬で勝敗が決まった。サンキューが、クリスタルになったのだ。驚かされた。優秀すぎる執事……。


「けっ、決着ー! 勝者はセバスチャン選手、あっ、と言う間の出来事でした」


 この頃には、コロシアムも満員で、盛り上がりも最高潮だ。


「それでは、本日、最後の試合、まずは、この方、優勝候補の一角、勇者マイコー」


 大歓声だったが、マイコが、登場し、ブーイングに変わった……。マイコの衣装が、上がサラシ、下が、ニッカポッカに、なっていたのだ。水着は、どうしたーなどの野次が飛び交う。サラシの下からビキニの紐は出ていた。


「うるさいわねー、私だって恥ずかしいのよー」


「対するはー、魔物の四天王の一人、全身に火を纏い不死との噂もある、フェニックス、やきとり選手ー」

 

 ハルの命名だ。


「ちょっとー、カズくん、あれズルいんじゃない? 空飛んでたら場外ないじゃない」


 ……無視して、


「本日ラスト、始めてくださーい」


「ちょっ、カズくん、もう怒った。本当に焼き鳥にしてあげるわ」


 そう言うと、マイは、火魔法を連発し始めた。当然、効く訳もなく、なんだかんだ攻防が続き、マイは、結局、弱点の水魔法を使い、最後は瞬間移動からの蹴りで、場外に叩き落とした。攻防中、やきとりの吐いた炎で、サラシに火が着き、少し燃えた時は、若干の歓声が起こっていた。


「それでは、みなさん、本日は、ありがとうございましたー。お忘れ物の無いようお帰り下さい」


 こうして、一回戦は終了した。それから、控え室に行き、


「ねー、カズ。グエナは、どこ?」


「ん? 知らないよ。いないの?」


「見当たらないんだよ、一回戦の文句言おうとしたのにー」


「あれは、グエナちゃんの作戦勝ちだよ。あれ? グミエもいないの?」


 そう言った時に、グミエが戻ってきて、


「おつかれー。カズキー、あっちに凄くうまい、豚串屋があったよ」


 グミエは、両手いっぱいに食べ物を持っていた。


「カズくーん」


「マイも、おつかれー」


「何でー、私、勝ったのにぃー、勇者なのにー、私の奴隷の人達にまで、ブーイングされたんだけどー……」


「あはは、みんな、明日もガンバってね」

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