第38話 ダンジョン王

 

 数日後、いつも通り、ダンジョンに行き、41階層を制圧中に、丸々とした、巨大な魔族にエンカウントした。明らかに、雑魚魔族とは違い、少し前に、攻略した、40階層のボスよりも威圧感を感じた。すると、話しかけて来た。日本語だ。魔族が話すのは、初めてだったので、驚いた。


「お主が、このダンジョンに、罠を張り巡らせている者か?」


「んー、そうだけど、お前は?」


「このダンジョンの支配者だ」


「支配者? 50階に居るんじゃないの?」


「普段は、そうだが、ダンジョンの異常が感化できない」


「じゃあ、敵って事でいい?」


「そう言う事になる」


『細ビーム』


 とりあえず、両足を、切り飛ばした。


「カズキさん、どうしました?」


「あ、グエナちゃん、そっちはどう?」


「まあ、順調ですね。それより、この大きいのは?」


「んー、なんか支配者なんだって、敵みたいだから、とりあえず足だけ、飛ばしたんだよね。まだ、生きてるみたい。凄いね」


「ですね」


「今日中に、41階終わらせたいから、殺しちゃうね」


「はい」


「まっ、待ってくれ。待って下さい」


「アレ? なんか、喋ってません?」


「あ、そうなんだよ。だから、一発で殺さなかったんだけど、でも、敵だって言ってたし、やっちゃうね」


 支配者は、土下座して、


「こっ、殺さないで下さい」


「んー、どうしよか? グミエ呼んできてもらってもいい?」


「はーい」


「えーと、お前なんなの? 敵なんでしょ?」


「はい。いや、もう違います。味方です」


「何しに、ここに来たの? 50階にいたんじゃないの?」


「カズキー、どうした?」


「いや、なんか、コイツ、喋って、殺さないでって言ってるんだけど、どうしようかと思ってさあ」


「魔族だよね? 殺そう。今日急がないと、41階終わらないよ」


「だよね。じゃあ」


「まままま、まって下さい」


「ほら、なんかめんどいでしょ?」

 

「私がやろうか?」


「このダンジョンは、もう貴方様の物です」


「え? どゆこと?」


「元ダンジョンの支配者である、わたくしが認めたので、貴方様が、ここの支配者です」


「そんなの、要らないよ。俺達は、魔族を倒せればそれでいいの。だから、早く50階に帰ってくれない? そのうち倒しに行くから」


「そう言う訳には、いきません。既に、貴方様がここの支配者だからです」


「じゃあ、お前は何なの? とりあえず、名前は?」


「名は、ありません。貴方様が着けて下さい」


「えーめんどくさいな。じゃあ、ダンジョンの支配者だから、ダンジョ」


「カズキさん、それじゃあ、男か女か、分かりませんよ」


「ホント、カズキは、センス無いなあ」


「お前、男なの? 女なの?」


「性別は、ありません。それに、既に、ダンジョンの支配者は、貴方様です。ステータスを、ご確認下さい」


 称号、【ダンジョン王】


「ゲッ、なんか増えてるし、だから、要らないって、返すよ」


「それは、無理です。わたくしが、またダンジョン王になるには、貴方様を倒すしか、無いからです」


「あはは、それは無理だな。お前が、カズキを倒すなんて」


「おい、マル! お前なんか、足生えてきてないか? 気持ち悪いやつだなあ」


「カズキさん、マルって何ですか?」


「コイツの名前だよ。なんか丸々してるだろ?」


「また、手足両方、切り飛ばせば、もっとマルになりそうだなぁ、カズキ」


「グミエ、それは酷いよ。マルが可哀想じゃん」


「いや、カズキが、足飛ばしたんだろ?」


「もう、お姉ちゃんも、カズキさんも何の話ししてるんですか?」


「あはは、つい。で、マル、ダンジョン王ってのは何だ?」


「そのままの意味です。ダンジョンの王です。この辺一帯は、ダンジョン領なのです」


「ダンジョン領?」


「そうです。今、この辺りには、魔王領、人間領、ダンジョン領が、あります。不思議に思いませんでしたか?なぜ、魔物も、人間も、この辺りを領地にしなかったのかと」


「確かに、勝手に家作っちゃったし……」


「それは、ここが、ダンジョン領だったからです」


「そんな事、書いてある本とか無かったけどなぁ?」


「いえ、本は存在は、してました。ただ、みんなが読めなかったために、どこにも、置かれていなかったのです」


「読めなかった? どゆこと?」


「私が、ダンジョン王だった時にルールを決めなかったからです。ルールと言うか、何も決めなかった。法律も言葉も、だから、本は白紙だったのです」


「は?」


「正確には、何も決めなかったと言う事を決めたのです。だから、無法地帯と呼ばれているこの場所では、法がないのです。人間や魔物は、法を守る事が良い事とされていたので、ダンジョン領では、全てが良い事なのです。殺人をする事もしない事も、だから、殺人に、抵抗が無くなるのです」


 ……納得したような、しないような。


「魔王の国も詳しいのか?」


「長く生きているので、それなりには」


「ダンジョンの王の事はわかったとして、魔王は最近までいなかったはずだけど、なぜ法がある? それに、今の魔王は法律なんて決めて無いと思うが」


「それは、引き継がれているだけです。過去に魔王は存在しました。ゴーストの王がいて、確認されてなく、普通なら、その王を倒した者が、次の魔王へなるはずでしたが、老衰して、寿命で死にました。今の魔王国の法律はゴーストからそのままのものになります」


 なるほど、だから、ハルは人間が勝手にお金置いてくとか言ってたんだな。通行料って、とこかな?


「あ、最後に質問、嘘ついたら殺すからな! 最近、ダンジョンでのドロップ品が良い物が出ないのは、お前がそうしていたのか?」


「滅相もない。わたくしが、ここに来た理由もその事なのです」


「は?」


「では、このダンジョンの仕組みをご説明しますね」


 しばらく、マルと話し、わかった事は、ダンジョンの中の物、全てを魔力に変換し、それを還元や、運営に使っている。要するに、死体やゴミやチカラなど全てがダンジョン内で、魔力に変わり、それが、冒険者に対する罠になったり、宝箱の中身になったり、強い魔族を生み出すシステムだそうだ。今、俺達が、罠でリスキルしてしまっている為に、余る魔力が少なくなって、良いドロップ品が出ない状態になっているらしい。普段、一番余る魔力は、冒険者の行動によるチカラ、例えば魔族と闘って、外した魔法とか動くために発生する運動エネルギー全て、魔族が徘徊する時の運動エネルギーも魔力に変換されていた為、良いドロップ品が出る。という仕組みらしい。すなわち、効率良く狩りすぎて無駄がないから魔力が余らない。マルが、ここに来た理由がそれを阻止する為だったそうだ。


「理解した。じゃあ、なぜ、マルは、良いドロップ品が出ないと困るのだ?」


「おそらく、それは、そう創られたからです。本能みたいなものでしょうか? 人が良い人でいたいと思う事と同じ事です」


「ダンジョン王で、無くなった今も同じ気持ちなのか?」


「そうですね。やはり、ダンジョンが、活性化して、強い魔族が産まれる事を喜ばしく思います。ですが、今の王は貴方様なので、ご自由にしていただいて大丈夫です」

 

「そうか。とりあえず、貴方様と呼ぶのやめろ。なんか気持ち悪い」


「では、何とお呼びしたらよろしいでしょうか?」


「そうだなぁ、マルに、お兄ちゃんと呼ばれても嬉しくないだろうしー……、兄上? いや、兄者? あるいは、にーに? ……」


「カズキさん……」


「はっ、……何でもいい。お兄ちゃんはダメだ」


「では、カズキ様と、呼ばせていたたきます」


「なんか、普通だな。つまんないやつ。とりあえず、今日は、一回帰ってみんなで決めるよ」


「左様ですか」


「マルは、とりあえず50階にいて」


「かしこまりました」


 作戦会議の為、帰還した。

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