第36話 決闘


 さらに、一ヶ月後。まあ、色々あったが、充実した日々と言える。この頃には、マイも、たまに、ウチらのダンジョン終わりを狙って遊びに来るようになっていた。ハルは基本的には休みにした日に来る。マイとグミエはケンカはしているが、なんだかんだ楽しそうである。

 とある休みの日。ハルの発注しているバイクの数台の納品日だ。納品は、セバスさんが、届けに来てくれている。


「カズキさーん、この前、最近ダンジョンのレア泥が、減ってるって言ってたの本当にそうかも知れませんね。昨日も一個だけでしたし」


「でしょ。罠置いてる階層増えて、深層へも進んでるのに、おかしいよね?」


「私も、もうすぐ、風の上級魔法、覚えれるのに、全然、レアでないよね」


「えっ? グミエって、風属性は、いくらレベル上がってもゼロのままだよね?」


「そうだよ。あと、三個、風の何か出れば、ウインドブラスト覚えれるのにさあ」


 いつの間にか、また成金みたいになって来たもんな。合成させて上げてるのに……。装備だけで、風の上級って……。


 ピンポーン


「こんにちはー」


「セバスさん。お疲れ様です」


 ハルの発注した、バイクが五台納品された。


「最上殿、こんな物を渡してくれって頼まれまして」


 特別依頼、三日後、ダンジョンから、東へ10キロ進んだ場所で、決闘の見届け人をして欲しい、近衛騎士団団長、バーリエ。


「えっ? なんですか? コレ?」


「何やら、勇者鈴木と、魔王が決闘するらしく、その見届け人を、との事です。その三日後と言うのが、明日でして……」


「明日ー!?」


「はい。これを最上殿にと、騎士団長殿が。団長殿の話しでは、たまに連絡を取り合って、ツーリングとかしていたらしいですが、何やら、暴走性の違いとかで、喧嘩になり、勇者鈴木が、魔王に、果たし状を叩きつけたとの事です」


 アイツら、実は仲良いな。俺まだ、マイの連絡先知らんけど……。てか、暴走性の違いって何……?


「わかりました。ありがとうございます」


 まぁ、決闘禁止法とか、この世界では無いだろうし、そもそも、決闘場所は、無法地帯かぁ。


「グミエー、グエナちゃん。今日休み予定だったけど、ダンジョン行こうか? 明日休みにしよ。なんか決闘するんだってー」


 この日は、ダンジョンに行き、翌日。

 グミエは、前に、マイが、夕飯を食べに来た時、料理対決で、負けたのを根に持ってるらしく、会いたく無いのか、ペットの世話するとか、誤魔化して、留守番である。マイは、沢山の奴隷を増やし、スキル料理も持っていて、器用さもグミエには勝っており、勝利したのだ。どうやって手に入れたかわからないが、称号、オシャレマイスターなども持っていた。マイも味覚は、あるとの事で、ズルい。

 何で俺だけ味覚が……、本当に病気?


「じゃあ、グエナちゃん。行こうか」


「はーい。お弁当作りましたー」


 ピクニック気分の様だ。

 そして、現場へ辿りつくと、俺は呆然と立ち尽くした。ツッコミ所が満載なのである。


「お待たせー」


「カズ、おそーい」


「カズくん、昔から遅刻が、多いのよねー」


「最上殿、お待ちしておりました」


「あ、バーリエさん」


「これなら、何とか、先に手を出さないと言う約束は違えないかと」


「あ、うん。で、何なのコレ?」


「魔王とその部下、勇者鈴木麻衣子とその奴隷達による、全面戦争です」


「全面戦争ー? てか、マイの奴隷達って、バーリエさんもマイの奴隷なの?」


「はい。先日、互いの奴隷をかけた差しの勝負で負けまして……、でも、約束をしたからには、勇者麻衣子に生涯を誓いました」


 マジか……。


「ダンナさんは? もちろん、私の奴隷なので勇者麻衣子の奴隷です。それからは、私の名前も加わり、魔動車屋の貴族の方以外は、殆ど勇者麻衣子の奴隷になりました。なので、これは、実質、国をかけた闘いなのです」

 

 おーい、グエナちゃーん、ピクニック気分終わりだよー……。


「ねぇ。ハル、マイ、どしたのこれ? 今、全面戦争とか聞いたんだけど……」


「そうよ。今日が、そう、全国制覇の日よ」


 全国制覇って……。


「マイは? 何だか奴隷とか、凄くなってるけど、二人って仲良しでしょ? ツーリングとか言ってたんでしょ? で、暴走性の違いとかで、国かけちゃっていいの?」


 暴走性って、なんだか知らんが……。


「私達が仲良し? 冗談は、シスコンだけにしてよ、カズくん」


 な、シスコンだけだと……。


「そうだよ、カズ。この、ぶりっ子はね、私の、ミッキーマウスマーチが古いとかぬかすのよ」


「そんなの、ダサいに決まってるじゃない。そもそも、ギア付いてないバイクでコールって」


 いや、ミッキーマウスマーチっ何? 原チャリで、コールはダサいと思うけど……。

 なんか、奴隷や部下の人達もみんなヤル気だなあ……。


「そもそも、マイ、なんだその格好は? 舐めてるの? 痴女なの? 痴女」


 あっ……、俺がツッコまなかったのに……まあ、俺のせいでもあるけど……。


「だって、しょうがないじゃない。カズくんが、これしかくれなかったんだもん。勇者シリーズよ」


 一番はじめに目に着いたツッコミ所の、この戦場に、ビキニ上下、違和感しかない……。


「んで、どうやって決めるの?」

 

「全面戦争って言ってるじゃない、殺し合いよ殺し合い。魔物なんて全員、駆逐してやるわ」


「上等だ。そんなにジャラジャラしたやつら沢山つれてきやがって、そろそろ始めるよ、カズ、下がって」


「早く、カズくん下がって、そもそも無法地帯でしょ、やらない理由がない」


「最上殿、お下がり下さい。我々もその為に来ています」


「……わかった。じゃあ、初めは奴隷と部下たちの対決って事でどう? その間、ハルとマイは、手を出さない」


「私はいいよ」


「じゃあ、決まりね」


「みんな、魔王の命令だ。ボコボコにしてやんな」


 魔物達は、雄叫びをあげた。


 魔物のみんなは、ハルの言う事は理解できるようになったらしい。優秀だな。


「みんなも、ガンバってねー」


 物凄く、盛り上がってるな……。


「じゃあ、どうぞー」

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