第35話 単車


「私は、うーん、そうね。何か違う、勇者シリーズちょうだい。武器がいいわ」


「んー……、まぁいいか。でも、武器はダメ。俺が決める、それ貰ったら、大人しく帰る。約束出来る?」


「わかったわよ。約束するわ」


「おけ。じゃあ、コレ。勇者のビキニ(下)どぞ」


「何よコレー!」


「あはは、似合いそうじゃん、マイコ。それとも太い足出すのが恥ずかしいとか?」


「太くないわよ」


「はーい。じゃあ、マイ。またね」


「帰るわよ。その前に、ギュッ! チュッ!」


「コラッ! 何してんだ。早く帰れー」


「ベー、だ。じゃあ、カズくん、またね」


 マイは、帰っていった。

 あ、連絡先交換するの忘れたな……、また急に来られるのは、ちょっと……。


「次は、私だね」


「軽めの、おなしゃす」


「私はもう決まってる。バイク作って」


「バイク?」


「そうよ。ズルいじゃない? マイコもみんな単車持ってて」


「単車って……。まぁそれならいいか。わかった」


「やったー。カッコ良いのにしてよね」


「なあ、バイクもう、普通に売ってるはずだけど、マイも持ってたし。お金が無いのか?」


「お金は、あるわよ。土のゴードンってやつの近くで鉱石だって金だって採れるわ。なぜか、ウチの近くに来る人間は、勝手に、お金置いてくし」


「ん? ハルって、今どこに住んでるの?」


「決まってるじゃない。魔王城よ」


「へー……。あっ、グミエ達、今、王都かな? エンジン買ってくるように、連絡してみるよ」


「あ、うん」


「じゃあ、作り始めるか、ハル、手伝って」


「わかったわ」


「じゃあ、とりあえず、この鉄の木を、2メートルくらいにして」


 おお、手刀か……流石。


「エンジン買って来てくれるってー」


「そう。次は?」


「この温めた、鉄を叩いて伸ばして。俺はタイヤから始めるから」


 拳だと……凄いな……。


「なあ、何で、お金あるのに、バイク買いに行かないの?」


「えっ、だって、私、一応、魔王じゃん。だから、なんか行きづらいって、ゆーかー」


「おお、ハルは、偉いなぁ。ヨシヨシ」


「頭撫でるなぁー。まあ、うれしいけど……。って、タイヤで汚れてるじゃないかー!」


「あー、ごめんごめん。『クリーン』」


「そ、それにさ、王都は、マイコの縄張りだろ? そこ、荒らしたら戦争だよ」


「縄張りって……。でも、うん。偉いな。ヨシヨシ」


「だからー、頭やめろー」


 黙々と作業を進め、


「カズー、あとコレどれくらい必要?」


「えっ? あ……、やりすぎもう要らないよ」


「コレだけで、いいの? だって、100台は作ってもらわないと」


「はっ? ムリムリ、ハルのだけだよ」


「何でー、それじゃ族つくれないよー」


「創らなくていいよ」


「やだ。つくるぅ」


「えー、じゃあ、こうしよう、俺が、妹サイクル二号店に、バイク注文するよ。そして、ウチに届けてもらう」


「それなら、うん。カズに、お金渡すね」


「うん」


「それにしても、それ曲げるの上手いなあ。私もやっていい?」


 鉄が、ゴミ屑のようにしかならない。


「あ、ハルは、うーん……、もう大丈夫だから見ててよ」


「……クソ。何でそんなに上手いんだ?」


「んー、器用さと、鍛治スキルかな?」


「ハルは、筋力と魔力がエグいよね。魔力なんて、ほとんど、俺超えてるし、特に闇」


「まあ、魔王って言ったら、闇でしょ」


 グミエ達が、帰って来た。


「おかえりー」


「ただいま。何してんの? あのクソ勇者は帰ったの?」


「うん。帰ったよ。今は、ハルのバイク作ってる」


「あ、鉄板がいっぱいあるじゃないですか。コレでたまには、外でバーベキューしましょう。豚肉買って来ましたよー」


「私も食べるよー」


「うん。私が用意するので、ハルカさんも待っててくださいねー」


「なあ、ハル? 食べ物って味する?」


「え? 何言ってるの? グエナ料理、すごく美味しいよ」


 なんだと……、ズルい。


「その単車も、さっきのやつもだけど、音がしなすぎじやないか? あと、妹プロトタイプって何よ?」


「そりゃ、そうだよ。妹プロトタイプには、遮音結界、さっきのには、確か『ちょっとー男子ー静かにしなさいよ』が、付与されてたな。それに、バイクには、名前付けるだろ? 普通」


「まあ、名前は、置いといて、私の単車は、スッゴイ音出る様にしてよ。マフラーとか、直管でさ。そのダサい名前の魔法は、いらないから」


「そもそも、マフラーじゃないし、それ、スピード出る様にしてるだけ、エンジンの音だけだよ」


「えーっ! ちゃんと、コールきれる様にしてよー」


「いやいや、さっきも、乗ったでしょ。ギアもクラッチも無いから、スクータータイプだよ」


「じゃあ、ちゃんとカッコ良くはしてよ。ロケットカールとかにして」


「ロケットカールって、何?」


「焼けましたよー。はい。ハルカさんも、どーぞ」


「うん。ありがとう」


「それにしても、グミエとグエナちゃんは、本当に豚肉好きだよね?」


「いや、それが、さあ。今日はタコパってのやりたくて、タコ買おうとしたんだけど、売ってなくて……」


「何、グミエー、たこ焼き食べたいの? じゃあ、四天王のクラーケンに足一本持って来させる?」


「ん? この前、ウチに四天王連れて来ちゃった時、そんなの居なかったような……」


「ああ、あの水のは、四天王代理だよ」


 四天王代理って何? それ四天王じゃないのでは?


「水の四天王の座を、争って、クラーケンと大王イカが、せってたんだけど、なんか急に大王イカいなくなっちゃって……」


 あっ…………。


「それより、今日のグエナの飯は、美味しいけど、いつものが美味しい気がするな」


「あ、ごめんなさい。忘れてました『おいしくなーれ、萌え萌えキューン』」


「おお、ホントに美味しくなった。日本にもまさか、魔法ってあったのか? メイド喫茶って行った事ないと思うけど、今度行ってみたいな。カズ』


「あ、うん。そだ『ダーク』と『お祭りだーい好き』」


「わー。何ですか? これカズキさん。キレー」


「花火って、言うんだ。これも試そう『虹アタック』」


 何で、ダークで、光遮断してるのに、虹がでるんだよ……どんな原理だ?


「じゃあ、そろそろ帰るね。ありがとう。美味しかったよ」


「ハルカー、ちょっと待って。手を出して」


「ん? 何かくれるの?」


「捕まえた。まずは『極まだまだ若いモンには負けられねー』で、スキル『三連突き』おりゃ」


「痛ったぁー……、くわ無いけど、グミエのその、しっぺ喰らうと、グダッて、するんだよね」


「さっきの、ババ抜きのしっぺが、まだだったでしょ?」


 どれどれ? 『鑑定』、ゲッ、HP3000も減ってるじゃないか! その辺のカラフルなら、グミエのしっぺでイケるのでは……?

 こうして、この日は終えた。

 最近、頭に響く声ないなぁ……、この生活で合ってるのか……?


 数日後。ハルのどうしても音が出したいと言う要望を聞き『ブーブークッションでしたー』をアクセルに付与しハルのバイクは、完成した。原チャリでコールをきるという、とてもダサい人間が、同時に誕生する事になった。

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