第34話 チキンレース

 

 更に、そこから、一ヶ月が経ちダンジョンの階層毎の広さなどが、厳しくなって来た、とある休みの日。ハルが遊びに来てきた。最近の俺達のブームは、なぜかトランプ、もちろん自作。グミエが、無駄にスキル三連突きを使い、ババ抜きで負けた、ハルに、しっぺをしていた頃、


 ピンポーン


「あ、俺出るよ」


「ハルカー私のしっぺから逃げるなー」


 外で待っていたのは、マイであった。

 あっ、ヤバ……。


「オバサン、出てきなさい。私と勝負しなさい」


「誰が、オバサンだあー」


 グミエは、勢いよく出て行ってしまった。


「オバサン抜けたから、ババ抜きは私の勝ちー。ん? 今の声って、マイコ?」


 ハルも出てきてしまった。

 ヤバい……。


「ハルちゃん? 何でハルちゃんがここにいるわけー」


「出たな、ぶりっ子、私が叩き潰してやる」


「オバサンを倒しに来たんだけど……、いいわ。ハルちゃん勝負しなさい」


「だから、誰が、オバサンだって?」


「あんたよ、あんた」


 んー……、すごく面倒くさくなりそう……。


「グミエ、グエナちゃん、今日、買い物行く予定だったよね。悪いんだけど、二人で行ってもらっていい? 王都にポーションも、売らないと、妹プロトタイプ貸すから」


「カズ、何これ? 超イカすじゃーん」


「ハルは見るの初めてだっけ? 俺の愛車、妹プロトタイプだ」


「シスコン」


 シ、シスコンだと……、


「わかりました。カズキさん、さ、お姉ちゃん行くよ」


「しょうがないなあ……」


 グミエ、グエナちゃんは行ってくれた。


「逃げる気ぃー、オバサン」


「誰が逃げるかー嘘つき勇者じゃ相手にならないのよ」


 シ、シスコン……。


「マイ……、後ろの二人は誰?」


「私の奴隷よ、貴族のね」


 マイは三人で、バイクで来ていた。


「マイコー。あんた、カズの彼女って、謳ってたらしいじゃない? 私のよ」


「はー? 何言ってるの? そんな事より、私のカズくんに、くっつくなー、ワ、タ、シ、の」


 シスコン、良い響きだ。


「いや、どっちのでも無いけど……」


「ハルちゃん、私とタイマンよ。勝った方が、カズくんの彼女って事でどう?」


「面白そうじゃない? いいわ、ここで会ったが100年目」


 いや、今時、それ言う?


「待て、待てーい。俺はどっちの彼女にもならないよ。それに、マイじゃ絶対ハルには勝てないよ」


「わかってるー、カズー」


「くっつくなー。何でぇー、私、すごく強くなったんだよ。それで、ホントはオバサン倒しに来たんだから」


 どれどれー?『鑑定』おおーマジでめっちゃ強くなってる、スキルも沢山。あ、奴隷か。この二人だけじゃないな。どれだけ増やしたんだ……? でも……全然だな。そもそも、マイ、勇者の指輪一個だし……俺のせいでもあるが、ハルは、十八個だもん。俺よりチート……。


「じゃあ、カズは私の物って事で、ギュー」


「だから、くっつきすぎー『ライトニングショット』」


 あ、バカ……。

 俺とハルは反射的に避けてしまった。当然、家から反射され、


「や、やるじゃない……くっ!」


「あんな、ぶりっ子バカ、ほっといて中いこ、ダーリン」


「いいわ。じゃあ違う事で勝負よ」


「なんでよ? カズはもう私の物、勝負する意味ないじゃない? ホントにバカなの? マイコ」


「いや、俺、ハルのじゃないよ。じゃあ、三人でババ抜きでもする?」


「カズくん、何でババ抜きなのよ? そうね、チキンレースよ」


「チキンレース? そう言うのって、崖とかでやるんじゃないの? 知らんけど……」


「ハルちゃん、ビビッてるのー?」


「ビビる訳ないでしょ、私を誰だと思ってるのよ」


「じゃあ、決まりね。ルールは、バイクで、カズくんの家に突っ込む。先にブレーキかけた方が負けよ」


「じゃあ、勝った方がカズの彼女って訳ね。乗ったわ」


「彼女にはしないよ。それに俺の家に突っ込むって何?」


「カズくん、わかってないのね? この辺は崖無いでしょ? だから、この辺で一番危険な場所と言えば、カズくんの家じゃない? アンダースタン?」


「……勝っても彼女にしないよ」


「それじゃあ、勝った人はどうなるのよ?」


「え? うーん。勝ったー、わーいで良いんじゃない?」


「ダメよ、そんな子供騙し」


「じゃあ、勝った方がカズに何でも言う事を聞いてもらえるって事でどう?」


「ハルちゃんも、たまには良い事言うじゃない。それにしましょ」


「いや、何で俺が……」


「じゃあ、カズくんも参加するって事でどう? ちょうどバイク三台あるし、カズくんが勝ったら言う事聞かなくて済むでしょ」


「えーっ! やだよ」


「何、カズくん、ビビッてるのー?」


「うん。ビビッてる」


 俺が家に突っ込んで、家が壊れる事を。あ、ハルでも壊れるのかな……?


「カズくん、それでも、男なの? キンタマ付いてるの?」


「あらやだ、はしたない。キンタマだなんて」


「カズ、だから、キモいって……」


 そして、半ば強制的に、家から、300メートルくらい離れた場所に連れて行かれた。


「ねぇ? 本当にやるの? 危ないよ」


「カズ、覚悟決めなさい。そして私の物になりなさい」


「いや、だから、何でもは、聞かないよ。彼女とか奴隷とかもダメだからね。あー、一緒に済むとかも」


「カズくんも、ハルちゃんも、準備いい? じゃあいくよ。レディー、ゴー!!」


 始まってしまった……。

 とりあえず、ついて行く。残り50メートルをきり、


「カズくん、ハルちゃん、ビビッるなら止まってもいいのよ」


「だから、ビビッてないって、言ってるでしょ」


「そろそろ、本当に危ないよ。二人とも」


 全然、二人は止まる気がない。


「俺、ビビッてるので止まりまーす」


 俺は止まった。


「もう、俺の負けだよ。何か言う事聞くから、二人も止まってー」


 全然、止まる気が無さそうだ。

 仕方ない。まずは、スキル『魔法リキャスト短縮』


『ウー、前の車止まりなさい。速やかに、左に寄せて停止しなさい』


「カズくん、そんな事言ったって、止まらないわよ」


『ウー、前の車止まりなさい。速やかに、左に寄せて停止しなさい』


 二人を魔法で、強制的に止めた。


「ハルちゃん、私の勝ちね」


「私は、ブレーキかけてない。勝手に止まったんだ。マイコこそブレーキかけたんじゃないか? 私の勝ちだな」


「私も、かけてないわよ。勝手に止まったの。私のが、進んでるじゃない。私の勝ちよ」


「はいはーい。そこまで、二人とも、勝ちだよ。何か言う事聞くよ。出来る範囲の事だよ。軽めのやつで、よろしく」

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