第31話 記憶
それから、数日後、33階層を攻略中、ダンジョンから戻ると、家の前にマイが座っていた。
「カズくん、おっそーい!」
「何してる? クソ勇者!」
「うっさい、成金ー……、でもないわね……」
「マイどうしたの?」
「どうしたのじゃないでしょ、手紙にも書いてたじゃない」
あっ…………。
「手紙なんか読むわけないじゃない。この嘘つき勇者」
「嘘つき?」
「お前、カズキと付き合ってないんだってな。ハルカが言ってたよ」
「そうですよ、そんな嘘ひどいです」
「ちょっと待って。ハルちゃんに会ったの?」
「はい。もう私たち、お友達です」
「で、どうなんだ? カズキと付き合ってたのか?」
「え、えと、まあ、正確には付き合ってはいなかったんだけど……」
「やっぱ、嘘つきじゃないか」
「ち、違うの。聞いて」
「ちょっと、待って、マイ。ハルとは仲悪かったんだよな? ハルちゃん、って呼んでたのか?」
「カズキ、こんな嘘つきの話しなんて、聞く必要ないよ」
「んー、みんな、家の中で話そう」
「カズキさん、お家に入れちゃうんですか?」
「うん。そんなに悪い人じゃないと思う。たぶん。それに、記憶の事とかも聞かないと」
「カズくん、たぶんって、酷いよぉー」
「ま、ま、いいから、いいから、入ってー」
家の中へ。
リビングに座ると隣にマイが座ってきて、
「嘘つき勇者、カズキにくっつき過ぎだ。離れろ」
「いやでーす。お客なんですよ、お茶くらい出ないんですか? オバサン」
「誰が、オバサンだ! カズキ、やっぱコイツ追い出そう」
「まあまあ、マイも少し離れて」
「はーい」
「マイコさん、はい、粗茶ですが!」
ん? グエナちゃんも何か怒ってる……?
「えと、とりあえず何から聞こうか? うーん…マイは何しに来たの?」
「待ってカズキ。それより先に、コイツが、日本って所で、カズキの彼女じゃなかったが先。ハッキリさせとかないと」
「うん。じゃあマイ。俺とは恋人じゃなかった。って事でいいんだよね? 何でそんな嘘を?」
「嘘じゃないもん。恋人では無かったけど、限りなく近い幼馴染って言うかぁー」
「嘘じゃねーか」
「だから、嘘じゃないって、カズ君も私の事、好きだったし」
「ハルカさんも、自分の事、カズキさんが、好きだったって言ってましたよ?」
「それが、嘘なんだよ。カズ君は私の事が、好きだったの」
「俺の記憶が、無いからなんとも……そう、記憶だよ。マイは、この世界に何で来たかわかる? それと、消えた記憶とかある?」
この答えは、ハルとほぼ同じだった。
「じゃあ、グミエとグエナちゃんが、俺の奴隷だって事何で知ってたの?」
「だって、王都で噂だもん。妹サイクルの勇者は二人の奴隷がいるって」
「マイは、何でハルを倒そうとしてるの?」
「だって、ハルちゃん魔王なんだよ。勇者の私かカズくんが、倒さなきゃ」
「何で? ハルは悪い人じゃないよ。それに、勇者が魔王を倒すなんて使命無いはずだよ」
「えー、騎士団の人も私が、魔王倒すって言ったら応援してくれるしぃ、それに私達は、西と東の総長なんだよ。仲良くなんか出来るわけないじゃん」
「そうなの? ハルちゃんって呼んでるのに?」
「うーん、とにかく、そうなのぉ」
…………。
「そういえば、今日何しに来たの?」
「そうだよ。忘れてた。カズくん、手紙にも書いたけど、勇者の装備、全部買っちゃったでしょ? お店の人言ってたよ」
「あ、うん」
「それでね、ハルちゃん、すっごく強いの。魔王を見たって言う鑑定を持ってる人がいて、えーと、ホントに強かったって。属性魔法も全部1000超えてて、だから、今日カズくんに勇者の装備譲ってもらいにきたの」
今や1000どころじゃ無いけどな……。
ああ、特別依頼出してたもんなぁ……。
「それに、鑑定したの、結構前だから、もっと強くなってるかもだし、だから、勇者のやつ、ちょーだい」
まあ、あげても良いんだけど……。
「そういえば、あの玄関のドア何? 勇者の大盾じゃない、今日だって待ってる間、居留守使ってるんじゃないかって、蹴っ飛ばしたんだけど、私が痛かったよ」
「お、よくわかったね。それに人んちのドア蹴らんでよ……。あれは、大盾の標準装備の物理反射だよ。魔法反射もあるけど、それを常に起動するようにしたからね。まあ、MP消費は激しいけど、寝る前にうちの魔力のバッテリーフル充電してるからね。余裕、余裕」
「使ってないじゃない? ちょーだいよ」
「使ってるよ。ドアに……」
まあ、在庫はあるけど……。
「他にも、あるんでしょ? 全部買ったの知ってるんだから」
「あるっちゃーあるけど、ハルを倒そうとしてるんでしょ? だったら、あげられないよ」
「えーどうしてー、ハルちゃんに私が負けても良いって思ってるんだぁー。一緒に遊びにも行ってるんでしょ? ハルちゃんばっかりずるい」
「違うよ。ケンカしないでほしいんだよ。それにね、勇者の装備しても、ハルには勝てないよ」
「何で? 私、騎士団に入って毎日、稽古してるんだよ」
「俺も、鑑定持ってるんだよ。しかもMAX。だから分かるんだよ。ハルは魔王の支配とかいうスキル使って部下が凄くいるんだよ。マイも奴隷の事は勉強したでしょ? 図書館に本増えてて分かったんだけど、奴隷と部下は、ほぼ同じなんだよ。魔物はそこら辺で生存競争してるでしょ? おそらく、そこでの経験値も入ってるから、何もしなくても強くなるんだよ」
「そんなの、ずるい……」
おそらく、マイは勇者の指輪や魔王の指輪が、重ねがけ出来る事知らないな……、これは黙っておこう。
「カズくんはダンジョン行ってるんだよね? どうやって戦ってるの?」
「えっ? 俺? 石投げたりとか」
「は? 武器は何使ってるの?」
「いや、使ってないけど……」
「じゃあ、勇者シリーズ全然使ってないんじゃない」
「あっ! 誘導尋問だ。汚いぞ、マイ」
「使ってないなら、ちょーだいよ。おねがーい」
猫なで声で擦り寄ってきた。
「カズキさん? ちょっと揺らいでません?」
「ゆ、揺らいでなんか……ちょっと、カワイイと思っただけだ」
「はぁ……カズキ……」
「マイ。とにかくダメなものはダーメ。ハルと仲直りしたら考えるよ。それに使ってるよ。木を切ったり、叩いたり、それになぁ、勇者シリーズは研げる人居ないんだぞ。俺は研げるようになった。鍛治もMAXだ。切れ味落ちた事ないから意味無いけど……」
「なによ、けーち」
「それに、マイの為でもあるんだよ。もし勇者シリーズでウチのドアに攻撃したら、反射して、マイ死んじゃうぞ」
「それじゃあ、私、弱いままじゃない。私もカズくんの奴隷にして、守って」
「は? ふざけるな! この嘘つき勇者」
「ちょっと、何このオバサンほんっとに、うざい」
「良い根性してるな、表出ろ」
「イイわよ。じゃあ私が勝ったらオバサンがここを出て行って、私がここに住む」
「ああ、もう、二人ともそこまで、俺は二人にも仲良くしてほしいんだよ。それに、今、闘ったらグミエが勝つ」
「カズキ、それじゃ、クソ勇者、居座るつもりだよ」
「いいじゃない。だって、私とカズくんは恋人同然なんだから、一緒に住むのは当然よ」
「おま、カズキに、ひっつくな、このビッチ勇者」
「マイ、ちょっと、離れて。よく考えてみて、幼馴染だった記憶があって、ずっと一緒にいた記憶があっても、俺が何してた人か知らない。何をしてたか知らない人を好きってのも変じゃないかな?」
「それは、そうなんだけど、好きなものは好きなの」
「いいから、早く出てけ! もう話す事ないよ」
「やだ! オバサンが出て行って」
「やっぱ、こいつブッ飛ばす!」
「カズくん、今の私は、この、オ、バ、サ、ン、よりも弱いんでしょ?」
「まあ、そうだね」
「そんな、かよわい、私を放り出す気?」
「コイツーーー!」
「わかった。じゃあ、勇者シリーズの防具、一つあげるから、それ貰ったら、マイは大人しく帰る。それでいい?」
「わかった。で、何くれるの?」
「それは、まだ、ヒ、ミ、ツ」
「カズくん、それは、私みたいな、カワイイ子が、やるからいいんだよ。若干キモイよ」
「……、文句はなしだよ。約束出来る?」
「はーい。女に二言はないよ、カズくん」
「じゃあ、コレを『勇者のビキニ(上)』」
「カズキさん……」
「ちょっ、グエナちゃん? これ本当に凄いんだよ。鑑定してみて。性能も凄いけど、標準装備で、オッパイを自然に盛れるなんてのも付いてるんだから」
「カズキさん…………」
「もう、カズくんの、えっち」
「とっとと、帰れ、クソ勇者」
「じゃあ、またね。チュッ」
「やっと、帰ったか、今日はカズキ、ご飯作ってね」
「えっ? 何で?」
「そうですね。今日はカズキさんが、反省しながら作って下さい」
「えっ? 俺この世界で作った事ないけど、味わかんないし……」
「大丈夫だよ、料理スキルMAXでしょ?」
「ああ、なるほど。出来るかなあ? やってみるよ」
…………大丈夫かなあ?
「出来たよー」
「カズキ、ほら、ちゃんと魔法使って」
「はい。『おいしくなーれ、萌え萌えキューン』……」
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