第27話 魔王


 魔法屋を出て換金へギルドに向かう。

 そだ。ニセ天才さんが、特別依頼も受けるって言ってたな。ギルド行くついでに出してみるか。ただのビーム強すぎて素材残らないもんな。

 ギルドで大量のアイテムを換金中。

 掲示板はどこだ? お、流石、王都のギルド。掲示板デカいな。どれどれー?


 特別依頼任務、勇者シリーズ何でも高く買います。勇者、麻衣子。


 あ……、見なかった事にしよ。特別依頼出すの初めてだな。んー、ヤベッ、ただのビームの人の名前なんだっけ? いくらくらいにすればいいんだ?

 特別依頼任務、ただのビーム開発者様、素材が残る魔法の研究、お願いします。依頼料、5000万円。最上一輝。

 こんな感じでいいか。


 ギルド職員「買い取り金額でました」


「はい。じゃあ、この依頼お願いします」


 そして、帰宅した。


「ただまー」


「おかえりなさーい」


「なんか、疲れたー、お腹空いたー」


「あ、私達も夕飯これからです。生姜焼きにしようと思ってます」


「カズキ、おかえり。早く出して。私達もお腹ペコペコだよ」


「ん?」


「ぶーたーにーく!」


「あ……。ごめん、忘れた」


 二人とも、崩れ落ちた。

 豚肉好きすぎん?


 それから、数日後。の休みにした日。


「ヒマだねー」


「そうですね」


「たまには、のんびりも良いんじゃないか?」


「そだ、釣り行こう。そういえば、まだ海に行ってないよ」


「私はあんまり、釣り好きじゃないんですよ。小さい頃、お父さんに連れて行かれて、何回か行った事はあるですけど……」


「あったね。グエナは、目的地着く前に、船酔いしちゃってたもんなぁ」


「今なら、大丈夫じゃない? 『リフレッシュ』あるし」


「あ、そうかも、行きますか?」


「うん。いこ。今日はタコパだぁー」


「カズキ、私はちょっとイモぺ、見てくるよ」


「そか、了解。俺は、チャチャっと釣竿つくるよ」


「私、お弁当つくりますね」


「私は、ダンジョン行ってるよ」


 俺は釣竿を作り始めた。

 餌の部分に『誘導』を付与してーっと。

 その時、


「カズー。急に抱きつかれた」


 えっ? 何この子? てか、何でここまで、来れんの? 罠は……? んんん? 魔王か。

 その姿を、見ただけで、なぜか魔王とわかった。


「カズ、やっと会えた。ずっと探してたんだよ」


「ちょっと、離れて君だれ? 魔王なんだよね?」


「うん。あ、そっか。私は中村遙なかむらはるか、魔王だよ」


「えと? 日本人? で、俺の知り合いなのかな?」


「そだよ。知り合いなんて酷い」


「ごめん。俺、記憶無いんだ。とりあえず中入る?」


「うん」


 家の中へ。


「カズキさん、その人誰ですか? えっ!? 魔王! お知り合いなんですか?」


「うーん……、そうみたい。今から聞く所。敵意は無さそうだから」


「んー、そうですか。カズキさんが言うなら……お茶淹れますね」


「何から聞けば、いいんだか……君は、日本では人間なんだよね?」


「カズ、君はやめて、日本では、ハルって呼んでたから、ハルって呼んで。もちろん人間だよ」


「ハル、じゃあ、こっちに来て、人間じゃ無くなったの?」


「今も人間だよ。魔王なだけ」


「じゃあ、その羽は?」


「あはは、これは、たぶん魔王しか着れないただの装備だよ。脱げるよ、ホラ」


 そう言って、羽を外した。


「マジか……。じゃあ何で魔王なの? 魔物の国には、人間もいるの?」


「なんで魔王かは、わからない。カズだって、なんで勇者かわからないでしょ? 国には人間はいないんじゃないかなぁ? わかんないけど、親が人間のやつはいそうだけど」


「なるほど、うーん、あとは、魔王の目的とかってあるの?」


「特に無いと思うよ」


 グミエが帰ってきた。


「カズキ、まだ居たのか。釣りに行ったんじゃ? あ、それどころじゃ、外が大変な事になってるよ」


「外?」


「てか、誰? 魔王?」


「あ、お邪魔してます」


「あ、ども。それよか外!」


 外に出た。


「カズキさん、あれ、全部魔物の四天王ですよ」


 見覚えのある土の大きいやつもいる。アイツ大きさ復活してるな。


「あー、また着いてきちゃったかあ、あの子達は私の部下。言葉通じなくて、着いてきちゃうんだよね。大丈夫だよ。私が敵って思わなければ攻撃とかしないし」


「なるほど、奴隷みたいな物なのかな? 今のグミエなら、四天王にも勝てるんじゃないかな?」


「あなた、グミエさん、って言うのね。私は、中村遙、ハルカでいいわ」


「あそこにずっと居られると困るけど、もうちょっと、中で話ししよか? グミエも聞いて」


 家の中に戻った。


「ハルカ、早速だけど、質問。魔王ハルカは、人間を滅ぼしたりするのか?」


「おお、流石。良い質問」


「えーっ? しないよー。何で?」


「何でって魔王だし……」


「魔王はそうするものなの?」


「え? いや、わかんないけど……」


「あ、でもねー、マイコって知ってる? 勇者なんだけど、あの子だけは許さない!」


「お、ハルカ、わかってるじゃないか。ハルカとは気が合いそうだな」


「もう、お姉ちゃん」


「そう言えば、マイも、因縁があるとか言ってたっけ? 何で?」


「カズ、マイコに会ったの? 何て言ってた?」


「まあ、会ったっていうか、勝手にくるっていうか、なんか日本だと、俺の彼女だったらしいけど……」


「カズ、騙されちゃダメ。それ嘘だから」


「あんの、クソ勇者、やっぱりか」


「そなの? でも、俺の事、知ってそうだったよ」


「カズ、騙されてるよ。カズは私の事が好きだったの」

 

「えーっ? じゃあ、俺は、ハルと付き合ってたの?」


「いや、付き合ってはいなかったんだけど、まぁ、ほとんど付き合ってるって言っても過言じゃ無いような……みたいな?」


「カズキさん、わかりました。ハルカさんと、マイコさんは、カズキさんを取り合って因縁があるんじゃないでしょうか?」


「え? ああ、まぁ違うとも言い切れないと思うけど、違うよ! 私とマイコは、西と東の、暴走族レディースの総長だったの。だからずっと対立してるの」


「は? ちょっと、待て、待て。なんで俺はレディースの、しかも、西と東の総長と知り合いなんだ?」


「カズキ、暴走族って何?」


「えっ、ああ、説明むずいな……ごめ、それより、俺は何者だったんだ?」


「カズは、私の事が好きで私も……って、言わせないで」


「ごめ……、質問変える。俺は、日本で何してた?」


「んーわかんない。記憶ないんだよね」


「……記憶ないのに、俺が好きだったの?」


「うん。それは間違いない。って、だから言わせないでって」


「……ちょっと、整理しよう。ハルは何を知ってて何の記憶が無い?」


「えと、この世界に来て、目が覚めたら、暗い洞窟にいてー、名前は覚えてて、総長だった事も覚えててー、んーって考えてたら、スキルポイントを振ったのを思い出してー、その時には、もう魔王ってなっててー、あとは覚えてなかったんだけどー、マイコも一緒に、この世界に来た事が、なぜかわかってー、カズもいるーって、わかってー、んーそれだけ」


「なるほど」


 ほとんど俺と同じで、日本人の事はわかるって、事か。あー、俺は前に何してたかが、わからないんだった。


「そう。それでね、すぐ、カズを探そと思って、でも、言葉通じなくて、魔王専用スキルの魔王の支配っての使ったら、みんなが優しくなって、ステータスを開いたら、みんな部下になってて、色々、食べる物とか、着るものとかくれたの」


「レディースの総長ってのも気になるなぁ? マイにしても、ハルにしても、そんな可愛らしい華奢な体つきでなれるものなのか?」


「もう、カズ。可愛らしいなんて、照れるよ」


「まあ、今なら強いんだろうけど、日本だと……って、その手の指輪、まさかっ!?」


「コレも貰ったの、魔王の指輪だって、これ付けると凄く強くなるの」


 その両手には、勇者の指輪より、黒ずんでいるが、同じ指輪が、親指に一つ、他の指には、二つづつ、全部で十八個もついていた。


「ステータスの指輪は?」


「それも、初めに持ってたけど、強くならないから捨てた。だってもう、つけられないもん」


 …………。

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