第26話 虹アタック


 ダンジョンに罠を仕掛け続けて30日が経過した。五日に一回くらい休みの日も作っている。22階層まで進めた。早めに切り上げたとある日、


「そろそろ、要らないアイテムとか、王都で換金してくるね」


「ファイア」


「ちょっ! グミエ何してるの?」


「ん? ああ、クソ勇者からの置き手紙、燃やしただけだよ。たまに、置いてあるんだよ。人の家の前にゴミ置いていくなって感じだよな」


「……何て書いてあったの?」


「読んでないよ」


「…………、行ってくるね」


「いってらー」


「豚肉忘れないで下さいねー」


「りょ」


 王都に到着。まずは久しぶりの王都なのでジョン君の顔を見に、魔動車工場へ向かった。


「こんにちはー」


「これはこれは、最上様」


 そこには、ジョン君ではなく、セバスさんがいた。どうやら、ジョン君は、今は越竹にいるらしい。


「最上様、こちらをご覧下さい」


 そこには、前にカゴのついたママチャリの様な物と、軽量化したという、スポーツタイプの自転車が並んでいた。スポーツタイプには、なんと二段階だけではあるが、ギア付きだ。


「こちらは、ジョンおぼっちゃまが開発なされた物です」


 流石ジョン君だ。


「そうなんですね。凄いです。本当に」


 セバスさんに、挨拶をし、何か新しい魔法はないかと、お隣へ。


「こんにちはー、何か新しいのあります?」


「いらっしゃいませ。最上様。いくつか入ってますよ。ちょうど、開発者の方が新しいやつを持ってきています」


 色々、物色してたら、いきなり声をかけられた。


「あなたが、妹サイクルの勇者最上ね?」


 キョロキョロ見渡したが、誰もいない。


「下よ。下」


 そこには、白衣を着た小さなメガネの少女がいた。何か魔法の巻物を持っている。


「ずいぶんと失礼ね。まあ、いいわ。あなた、ニセ天才さんの光線魔法を買ったそうじゃない」


 ん……? ああ、ただのビームの。


「あ、はい」


「この真の天才が作った魔法はちゃんと見たのかしら?」


「ん? その手に持っているやつですか? どれどれ?」


 魅了(仮)必要ステータス、結婚して下さい勘違いしないでよね魔法名なんだからね、ちょっとだけよー、吸収、ホワイトアロー、火100、水50、光200、闇200、対象者から、好かれる。すぐに奴隷可。4000万円。


 え? マジで? めっちゃくちゃ凄い。かなり欲しいんだが……。


「えっ? 何? これに興味あるの? まあ、これも私が作った物だけど」


 本物の天才か?


「…………い、いや、特に興味は……」


「まあ、そうよね、こんな簡単な魔法じゃね、それより、コレよコレ!」


「あ、1兆の……そんなお金ないですし、値段は見たけど、なんか一杯書いてるので、読むのめんどくて……」


「勇者ってバカなわけ? ちゃんと読みなさいよ。覚えてくれるなら、安くするから、私はね、この世紀の大魔法に名前を着けたいだけなのよ」


 また、名前か……。


 究極爆裂魔法(仮)必要ステータス、全属性の上級アロー、どっかいっちゃえー、お祭りだーい好き、ビックリしちゃうよ、爆ぜろリア充、くらえ極めドッカーン、器用さ300、全属性魔法300、全属性の超高威力魔法、1兆円。

 備考、製作者コメント、こんな凄い魔法存在する? いや、しない。これを使える人なんていないと思うけど……。時代が私に追いつかないわ。最強光線(仮)何が最強よ、寝言は寝て言いなさい。ちゃんちゃらおかしいわ。弱点なんて気にしてられないのよ。そもそも意味ないわ、だって全属性なんだから、この真の天才様が、すべてを破壊し尽くすわ。あーはっはっ。もし、本当にこれが覚えれる人がいたら必ず連絡なさい。連絡先は⚪︎⚪︎⚪︎-⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎、必ずよ必ず、1兆円払えたとしても連絡なさい。あ、そうそう、書き忘れたけど、最後に勝利を祝福する虹が出るわ。


「…………よ、読みました……」


「それで、どうなの? 覚えられそう?」


「いや、『爆ぜろリア充』だけ、持ってないですね。それ以外はイケるかと……」


「ああ、それも、私が作ったのよ。最近、人気なのよね。ちょっと、待ってなさい。すぐ作って持ってくるから」


 行ってしまった。


「他に良いのは、ないかなーっと、おっ、コレいいじゃん」


 誘導(仮)必要ステータス、ストーカーじゃないですよ、あの海に浮かんでるのブイって言うのね、前の車を追ってくれ、ターゲットロックオンしました隊長、風30、闇100、器用さ200、(付与専用)3000万円。


「コレもいい!」


 ガチャ


「待たせたわね。はぁはぁ、と、とりあえずコレ『爆ぜろリア充』覚えなさい。1000万よ」


「あ、はい……」


「次にコレ、叡智の結晶よ」


「あ、覚えられました」


「やったわ。これで、あのクソ自称天才にドヤられずに済むわ。で、名前なんだけど『とくと見よこれがスーパーウルトラミラクルエキサイティングスペシャルレインボーアターック』で、頼むわ」


「いやいや、長すぎますって」


「ダメよ!この名前が採用されないのであれば、1兆円よ」


「…………いざと言う時、長すぎて、間に合わなくて、真の天才様が、作った魔法を持ってる俺が負けたとか噂になったら、真の天才様も困るでしょ?」


「そ、そうね。じゃあ、フリガナを貴方が決めてイイわ」


「フリガナ?」


「そう、フリガナよ。この魔法名、全体にフリガナとして登録するの。そうしたら、そのフリガナで発動出来るわ」


「じゃ、『虹アタック』で」


「パッとしない名前ね。まあいいわ」


 それでいいの……?


「じゃあ、100億円に、おまけしてあげるわ」


「ッ……! ……あのー?」


「まさか、勇者様ともあろうものが、払えないって言うの? 1兆円から100億円よ。99パーオフじゃない」

 

「ぐぬぬ……。ニセ天才さんは、タダにしてくれました。まさか、真の天才様がー、ね?」


「し、仕方ないわね。タダでいいわよ。爆ぜろリア充の、1000万は払いなさいよね」


「はい、喜んでー」


「じゃあ、私は、超超超特大魔法の開発に戻るわ」

 

 行ってしまった……。

 こうして、俺は『とくと見よこれがスーパーウルトラミラクルエキサイティングスペシャルレインボーアターック』(虹アタック)を手に入れた。


「すいませーん、この『魅了』(仮)も下さーい」

 

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