第23話 別の勇者
帰宅した。これからの、ダンジョンについてのすり合わせをしようと、二人と家の中で相談する事にした。
「ダンジョンって、何か捨てても勝手に消えるんだよね? 死体も捨ててるし……」
「そうですね。いつの間にか消えます」
「と言う事はダンジョン内で、キャンプしたらどうなるの? テントとか、他の物とか消えちゃうの?」
「そうみたいです。眠ったり、意識を失うと物体は消えちゃうみたいですね。深層に行くと安全地帯と呼ばれるエリアもあるみたいです」
「あ、それは読んだ事ある。そこは、モンスターも来なくて休憩出来るんだよね?」
「そうです、そうです」
ビビッ、ビビッ!
罠にかかると、音が鳴るシステムにした。
「あ、また何かかかったね」
「私、見てきます」
「やりましたよー、豚です。豚肉ゲットです」
「グエナ、バーベキューにしよう」
「いいね。それと誰がいますけど……カズくん居るか? って、勇者の方です」
「えっ? 今いくー」
そこには、なんだか、ボロボロになった勇者がいた。何やら怒っている。
勇者、初めて見た。なるほど、こうやって見えてるのか。
「最上一輝です。えと、どちら様?」
「私は、鈴木麻衣子。日本から来たのよ、カズくんの幼馴染で彼女よ」
「ええー! マジ?」
「カズキさん、彼女居たんですか?」
寂しそうな顔をしている。
「いやいや、知らない、知らない、覚えてない」
「カズくんは、覚えてないかもだけど、それより何なのよ、この家『クリムゾンファイア』撃ったら、跳ね返ってきたわ。ドアもどうなってるのよ? ビクともしないし、どんだけ蹴ったと思ってんのよ?」
それで、ボロボロなのか……。
「あはは。上級魔法程度なら、この家は壊せないよ。上級魔法反射も付与してるし、状態異常みたいな攻撃でも、へっちゃらだよ。ディスペルも付与してるしね。ドアは勇者の大盾で作ってあるからね」
ドヤってやった。
「カズキ、あんたまたやり過ぎてるね」
「いやいや、二人の安全の為だよ。あとはー」
「そんな事より、マイコさんでしたっけ? 人の家に魔法放つとはいい度胸してるじゃない?」
「お姉ちゃん、一応、勇者だよ」
「勇者? そんな事関係ないよ、カズキの恋人だって?」
「上級魔法とドア蹴られても、気づかなかったね。うーん…遮音結界が凄すぎるなぁ。あっ、もしかして、警官がなんか外で倒れてたやつとかも、もしかして反射で自爆したのか、盗賊どうしでやり合ったかグミエかグエナちゃんがやったかと思ってたよ。とりあえず、インターホン付けるか」
「ちょっ、カズキさん、それどころじゃ……」
「ああ、んで、えーと……鈴木さんでしたよね? 何で怒ってるの?」
「マイでいいわよ。マイで、そう呼ばれてたから」
「じゃ、マイ。なんで怒ってるの?」
「むー。私だってまだ、カズキさんに、グエナちゃんって、ちゃん付けなのに、マイって……」
あら? グエナちゃん嫉妬かな? カワイイ。
「んー、もう、あんたたち、ムカついてきたー」
そう、言って飛びかかってきた。
俺には、まだまだ、全然余裕なので、交わし続ける。
「ちょっと、何?」
「あー、もう、ちょろちょろとー、喰らいなさい『ライトニングアロー』」
『ブラックホール本当はブラックホールじゃないけどね』
この魔法名、恥ずかしいな……。
吸収した。
「どいて、カズキ、私がやるわ」
なんか、グミエも怒っている……。
「待って、待って、殺しちゃダメ」
「いいわよ。そこの成金! かかってきなさい。勇者の実力見せてあげる」
「だーれが、成金だー」
そういうと、グミエはマイに突っ込んでいった。
おお、いい勝負だな。
観戦した。しばらくして、二人はボロボロだ。止めに入った。
「はい、はーい。終わり、終わり」
『ヒール』
二人にヒールをかけた。
「んで、マイ。ちょっと、話きかせてよ」
「……カズくんのバーカ。カズくんのせいで、こんな成金にも、魔王にも……」
バイクで、走り去ってしまった……。
ん? あの、バイク。魔動車屋、完成させたのか。
「グミエ、おつかれー、てか、何だったんだ? とりあえず部屋戻ろうよ」
「あれ? 私たち何の話ししてたんでしたっけ?」
「ダンジョンの進め方が、ただ攻略するって事じゃないって、カズキが言ってたから、その作戦よ」
「そうでした。お茶入れてきますね」
「どこまで話したっけ? ああ、安全エリアの事か」
「カズキもグエナもしっかりしなさいよ」
「はは。えと、ズバリ、罠を張ろうと思ってるんだよね」
「罠?」
「そう。魔族って、魔物と違って、急に現れるんだよね? 子供とかじゃなくて」
「そう言われてるわね」
「だから、その急に現れる位置に罠を張るんだよ。いわゆる、リスキル」
「リスキルってのは、知らないけど、面白そうじゃない」
「でしょー」
「でも、カズキさん、罠には、魔族は引っかからないですよ」
「それがさあ、引っかかるんだよね。前にダンジョンに来た時試したんだけど、罠に人しか引っかからないのは、体重のせいなんだよ」
「そうなの? 気にした事無かったわ」
「魔族って持ち上げた事ある? 魔族って、体全部が魔力で出来てるでしょ? だから、体重はクリスタルの分だけなんだよね」
「持ち上げた事なんてある訳ないでしょ」
「まあ、そうだよね。前に来た時、目の前に罠置いて、その上に来た時に『グラビティ』を発動したら罠が作動したんだよ」
「なるほどね、てかアンタ何で体重が無いって気づいたよ?」
「10階のボスのサイクロプス? みたいのに、ちょっと痛いのかなって、踏まれてみたらさ、なんか重さと言うより魔力で押されてるって感じがしてさ、あと、倒した時、すぐ消し飛んじゃうでしょ、だからかな」
「踏まれてみたって……、確かに消えちゃうのは普通の事だったから気にした事なかったわ」
「というわけで、作戦、まず1階は、他の人も結構来るから、無視して、2階でやろうと思う」
「そうですね」
「で、三人で、手分けして、バラバラに広がって千里眼を使う。二階ならゴブリンとかだから、一人づつでも平気でしょ?」
「まあ、楽勝ね。グエナも平気よね?」
「はい。任せて」
「で、急に現れた位置を冒険者カードのマップに印を付けていく。なるべく正確にね」
「うんうん」
「もし、それが同じ位置なら、この作戦は使えると思うんだ。たぶんいけると思ってる。だって宝物って同じ位置しか湧かないでしょ? だから魔族も」
「確かにいけそうね」
「すごいです、カズキさん」
「まあ、成功したらだけどね、もちろん触れるだけでグラビティが発動する罠は製作済み」
「なんか、コソコソ作ってると思ってたわよ。それだったのね」
コソコソは別にしてないが……。
「そうすれば、レベルが上がり放題。あっ経験値って罠を仕掛けた人に入るの? みんなにも罠渡すね」
「それなら大丈夫よ。奴隷契約してるじゃない私たち」
「うん」
「奴隷契約してると、その誰が経験値を得ても、主人に100パーセント、奴隷に50パーセント、私達の場合は二人奴隷だから、25パーセントづつね」
「100パーセントって? そこから分けるんじゃなくて?」
「そうよ。だから全部で、150パーセントよ」
「何だそれ? マジか……」
「だから、奴隷は損する事ないって、言ってたじゃないの。もっと早く奴隷にしてくれてたら、素材集めで倒した経験値も私達に入ってたのよ」
「ああ、なるほど。まあ、これからは経験値入り放題だし」
「じゃあ、早速、行きましょ。ワクワクしてきたわ」
「お、やる気だね。行こー」
「オオー」
ダンジョン2階層。
「じゃあ、これから、千里眼の範囲が被らないように、別れよう」
「そうね」
「ふと思ったんだけどさあ、千里眼ってあんまり持ってる人少ないって言ってたじゃん? 普通の冒険者たちはどうしてるの?」
「普通は、だいたいパーティーの内一人が『みーつけた』の上位の『サーチ』を持ってるわね」
「なるほどね、あ、俺、両方持ってた」
「……さ、別れるわよ」
とりあえず、千里眼とサーチ。
なるほど、こんな感じか……。
その後は、順調に作戦通り進んだ。やはりリスポーン位置も同じで、しっかり罠も発動して、倒せる事もわかった。
「じゃあ、ほぼほぼ仕掛け終わったね。今日はとりあえず帰ろうか」
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