第22話 ただのビーム


「じゃあ、行こうか? まあ、いざとなれば、フリースペースあるし」


 フリースペース、プラネタリウムなのだが、今は、暗くて評判の寝床だ。無人で、入場料2000円の料金箱を設置しているが、これが、結構貯まっていたりする。


「ちょっとー、何で私が自転車なのよー?」


「だって、しょうがないでしょ? そこに妹かジョン君乗せるつもり?」


 妹プロトタイプは、本体の右側にサイドカー、ここにはジョン君、本体の後ろにグエナちゃん、急遽、一番初めに作った試作品の自転車を左側に付けたのだ。


「もう、あんまり飛ばさないでよね」


「大丈夫、大丈夫、ロックウォール使えば。じゃあ、しゅっぱーつ」


「ちょ! ぎゃああああ」


 王都に到着。


「俺は、とりあえず、魔動車工場行ってくるよ」


「じゃあ、後で合流ね」


 魔動車とのエンジンの取り付け方のちょっとした違いをレクチャーした。特に気をつける事は、体がエンジンに近いので、クールの付与を忘れない事を注意した。30億を受け取り、隣の特別生活魔法ショップへ。


「すいませーん」


「あ、まいどー」


「ここから、ここまで全部下さい」


 一度言ってみたかったのだ。


「えっ、あ、はい。ありがとうございます」


 店員さんの、ちょっと驚いた顔が、なんだかたまらなく、上級特別魔法コーナーにも行き、


「あ、ここからここまでも全部」


「よろしいんですか? 1京円超えますよ?」


「えっ? あ、すいません。無しで……」


 恥ずかしかった……。

 1京って、何……?

 並んでいるものを、見てみると、1兆円、9999兆円とかがあった。

 なんだコレ?

 値段だけを見て買えるやつは全て買った。が、上級攻撃魔法を必要ステータスにしている物もあり、全ては覚えれなかった。

 次は、普通の魔法ショップだな。とりあえず、二人と合流するか。

 スキルGPSを使い、デパートで二人と合流し、みんなで、とにかく金を使いまくった。少し前くらいから片鱗を見せていたが、グミエは、もはや成金そのものだ。俺は、上級攻撃魔法も全て揃え、勇者シリーズも買い占めた。越竹には無かった、勇者のネックレスもあり、チート具合はさらに増した。街中で、二人は、女の勇者を見たとか、魔王が出現したと言う、うわさを耳にしたとか。少し引っ掛かったが、自転車屋も辞めたし、と言う事で、その日は、ずっと会えなくなるなるわけではないが、ジョン君も呼び、お別れ会と言う事で王都で豪遊した。


「では、みなさん、お元気で」


「うん。ジョン君もね」


「いつでも、遊びにきて下さい。今までありがとうございました。師匠」


 次の日、ダンジョンへ向かった。


「さて、まずは住める所作るよ」


「ダンジョン行かないの?」


「とりあえずね、次はダンジョン16階からだから、バッテリーの素材が落ちるとこだから、行きたい気持ちはあるけど、先に家だよ。超安全な家作るよ」


 そうして、ダンジョンの真横に、かなり広いスペースを使い、柵を並べていった。看板も建てる事にした。魔動車工場で、英語が出来る人にも手伝ってもらって作った看板だ。


 【この先、進入禁止、死にます】


 かなり広いスペースを取ったのは、罠を仕掛ける為だ。一応まだ、人を殺す事には抵抗がある為に、家に近づくほど、危険な罠にするつもりだ。作業を続けていると、本当に普通に襲ってくる。その中には、冒険者パーティーなどもいる。二人には、簡易的に作った結界やシールドに守られた場所をとりあえず提供したが、襲ってくる盗賊たちより、強いのである。この世界は強さが装備で盛れるからだ。躊躇なく二人も襲ってくる人らを殺して行く。俺は二人に頼まれて、人の死体を運ぶ為の、台車を作らされた。その死体はダンジョンの中に捨てるのだ。頭では、わかっていたが、一番驚いたのは警官が襲ってくる。二人の話だと警官は盗賊率が高いらしい。これは納得である。悪い事をしない世界で警察官はオワコンだからだ。なんで、警察官がいるのかと聞いたら、孤児院と同じく古い文化の名残りらしい。そして、数日が経ち、家が、完成。もやは要塞だ。ダンジョンを踏破するより、難しい気がする。食料は王都で買い込んで来た分で、まだまだ余裕があるが、襲って来た魔物で食べられるやつは食べている。その要塞の、最後の罠に、麻痺と猛毒の池をつくろうとしているのだが、素材が足りないので、とりに行って来た。


「ただいまー、やっと見つけたよ、カラフルスライムキング」


「おかえりなさい」


 二人もこの生活に慣れて来たようだ。そして、そのスライムの素材で、最後の罠をつくっていると、


「あああ、カズキさん、あれ」


 指差している方を見てみると、妹プロトタイプに乗り走り去っていくやつが、そう、盗まれたのである。いつもはアイテムボックスに入れているのだが、油断した。


「大丈夫、見てて」


 俺は、警官の持っていた、拳銃を少し改造して、発信機を撃てるものを作った。スキルGPSで追える様にだ。まだ、俺は人を殺すのには、抵抗があった。


「ちょっと、取り返してくる」


 バイクより俺が走る方が全然速いのだ。


 盗賊「ぬ〜すんだバイクで走りだす〜ゆく先も〜」


 そして、追いつき、引きづり下ろした。

 国外で追いつけて良かった……。国内で引きづり下ろしたらどうなるんだろ?

 そんな事を、考えながら帰宅した。


「ちょっと明日、王都行ってくる」


「何しに行くんですか?」


「ジョン君に、バイクに鍵を付ける事を提案してくる」


「ああ、なるほど、自転車じゃ国外に出ないですが、バイクだと、出るかもですもんね」


「そそ」


 そして、最後の罠を設置し、本当に完成した。表札も作り『妹ハウス』にした。


 次の日、王都の魔動車工場で鍵の提案をし、感謝された。帰ろうとも思ったが、隣の魔法屋へ向かった。


「こんにちはー、何か新しいやつ、ありますか?」


「最上様、はい。この前、今まで売れなかったやつが、たくさん売れた事が、魔法研究所の方にも伝わったみたいで、みなさんとてもヤル気が出たらしく、どんどん新しい魔法が届いてますよ」


「それは、ありがたい、どれどれ? 結構上位が増えてますね」


 地雷(仮)必要ステータス、お祭りだーい好き―――


 お祭りだーい好きは、拳銃に付与されてるやつだ。その上位か……。大砲作れそうだな。そういえば、お祭りだーい好きは、持ってるけど、使った事無かったな、これ花火あがるだけだよな。夜ないのに……。おお、これは、


 飛行(仮)必要ステータス、浮遊、ダイエット成功、太ってなんかないんだからね、どっかいっちゃえー、風150、光100、器用さ150、俊敏150。5000万円。


「おお、いいねぇー、あれ? 浮遊って? 持ってないな。すいません。浮遊ってありますか?」


「ああ、売り切れちゃったみたいですね、少々お待ちください、製作者に連絡してみます」


 他には……。


「すぐ、こちらに来るみたいです」


 ガチャ


「おお、貴方が勇者最上、浮遊が欲しいとか、持って来ましたよ、それでですね、飛行(仮)も私が作ったやつなんですよ。これを買っていただいて、すぐ覚えいただければ、浮遊はタダで差し上げますよ」


「タダで?」


「はい。浮遊なんてつまらない名前が決定しちゃったでしょ? 飛行を覚えていただければ、ちゃんと使える事の実証になりますので、私に名前をつける権利が生まれる訳なんですよ、あー浮遊も誰が買って行ったんだろう、その時居合わせられれば、くだらない名前にならなくて済んだんですけどねぇー」


 くだらないか……?


「わかりました」


 俺は、飛行(仮)を買い、浮遊を貰って、名前は『そ〜らをじゆ〜に飛びたいな』に決まった。


 浮遊、必要ステータス、エアー、スロー、人がゴミのようだ、――――。


「ありがとうございました。では、また」


 言ってしまった……。


「最上様、もう一人会いたいと言う方が、こちらへ来ます。こちらの商品を作った方です」


 最強光線(仮)必要ステータス、ライトニングアロー、貫通、パラライズ、吸収、ライトニングウォール、カラー白、エアーショット、筋力200、器用さ200、光200、他全属性100、9999兆円


 …………必要ステータスエグいな、9999兆円ってコレか……。


 ガチャ


「勇者最上ー! 待ってたよ。うわさは聞いててね。この値段にすれば僕を呼ぶしかないだろ? まさか、買えちゃう?」


「買えない、買えない」


「そうだろ、そうだろ、あははー、で、どうだい天才が創ったこの魔法すごいだろ?」


 テンション高いな……。


「凄いと、思います」


「勇者最上。テンション低いなぁー、これは本当にスゴイ魔法なんだよ。どんな敵でも貫通する特大な光線が出て消費MPも大きいが心配するな。光の速さで進むこの光線は当たった相手からMPを吸収するから、発動のMPさえあれば、ただのようなもんさ。そうこんなスゴイのが、ただで撃てるんだ」


「それは、本当にスゴイです。でもお金が……」


「ああ、この値段なんてのはジョークさ、名前さえ、決めさせてくれれば、ただで、あげちゃう。ただで撃てる光線だけにね。あっはっはー」


「ただですか? じゃあ……」


「うんうん。早速覚えてみて」


 俺は、この、光線を覚えた。


「じゃあ、名前なんだけど、実はもう決めてるんだよねー『かめは⚪︎波ー」だ!」


「いや、その名前は、ちょっと……いろいろダメな気が……」


 すごい、テンション下がったな……。


「えーっ、この名前がダメなら……『ただのビーム』でいいよ。ただだけにね」


 …………最強光線、ただのビームを手に入れた。


「勇者最上。何か作って欲しい魔法があれば、この天才の、この僕に指名依頼でもしてくれ。じゃ頼んだぞ」


 そそくさと、行ってしまった……。

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