第20話 初ダンジョン


 翌日。


「これは警告だ。バーカ、もっと勇者らしい事しろよ」


「いや、だから、勇者らしい事って何だよ!?」


 返事はない。


 その日は、バイク作りに専念した。


「みんな、見てくれ、遂に出来た」


 総工費、1億以上もかけたかなりの自信作だ。エンジンはジョン君の工場で特注し、使ってる素材もレアな物ばかり、魔道エンジンは廃棄ガスは出ないが、マフラーを付けて、エアーの上位『うざぁあっちいって』の更に上位『どっかいっちゃえー』を付与し、スピード使用。魔道エンジンのバッテリーは運転中でも充電出来る用に調整している。ブレーキは水シャークと土シャークの素材で、ディスクブレーキを彷彿とさせた。あまりにもスピードが出る為、パラシュートも開く。ボディーにも各種結界を付与し、ライト部分には、アイテム袋レベル1を付け、自動パチンコ式の鉄の玉が出る。見た目はハーレーをイメージした。


「カズキ、やりすぎ……」


「じゃあ、明日これで、王都行くよ。ジョン君は、お留守。すぐ帰ってくるから、お店よろしくね」


「任せてください、師匠」


 翌日。


「二人とも準備いい?」


「はい」


「いいよ」


「ジョン君、あと、よろしく。お土産買ってくるから」

 

「レッツゴー」


「おおー」


「カズキさん、英語わかるんですか?」


「いやいや、わかんないよ」


「でも、レッツゴーって」


「はは」


「カズキ、これ静かだな」


「ああ、エンジンに遮音結界着けてるから」


「あ、そう……」


「そろそろ、街出るね。飛ばすよ」


 グエナちゃんは、俺の後ろに、グミエはサイドカーだ。


「カズキ、速すぎて目が開けられないよ」


「前に付いてる、黄色いスイッチ押してみて」


 サイドカーからもガラスもどきがシールドとして競り上がるシステムだ。当然、他の結界も張ってある。


「おお、これなら平気だ。てか、一体いくらかけた?」


「…………さあ、もっと飛ばすよーこれなら三時間くらいで着きそうだ」


 約三時間後、王都に到着。教会へ向かっている途中、


「ねえ、カズキ、奴隷契約したら、お互いで何か贈り物する習わしがあるの知ってる?」


「そうなんだ」


「契約後に、別行動で、何かプレゼント選びに行かない?」


「いいね。もちろんプレゼントするよ。どんな物がいいのかな?」


「一般的には、何か身につける物ね」


「了解」


 そして、つつがなく契約が終わり、


「じゃあ、プレゼント選びに別れようか。買い終わったら集合はどこにする?」


「うーん。適当でいいんじゃない? 忘れたの私のスキル」


「ああ、GPSか。なるほど、了解」


 そういえば、デパートで逸れたジョン君もすぐ見つけたって言ってたもんな。俺が図書館にいるのもバレてたし……。てか、GPSって何の略だろ? 衛星飛んでないよなぁ……。


 しばらくして、合流した。


「じゃあ、私達からは、これ」


『体内時計』が付与された腕時計形?ソーラーパネル付きブレスレットだ。


「カズキさん、ホッとくと、ずっと、お仕事してる時あるから」


「ありがとう。大切にするよ」


 体内時計、『三時のおやつかな?』の上位、正確な時間がわかる。


「じゃあ、俺からは、まずグエナちゃんには、これ」

 

『元気モリモリ』が付与されたブレスレット、自動回復が速くなる。


「ありがとうございます」


「で、グエナには、これ」


『太ってなんかないんだからね』が付与された、髪飾り、体重が10パーセント減り、俊敏が10上がる。


「ん? 太ったって言いたいの?」


「ああ、いやいや、グエナも戦ったりするから俊敏上げた方がいいかなって……」


「そ、そう。ありがとう」


 あれ? 何か不服そうだ……。失敗したか?


「何か食べて帰ろうか」


「お寿司が、いいわ。シャーク巻、死ぬほど食べてやる」


「太るよ……?」


「カズキさん、シッ!」


 また、三時間かけて帰宅した。王都日帰りが出来てしまった。


「ジョン君、ただいまー」


「あ、みなさん、おかえりなさい、本当に早かったですね」


「はい。お土産」


『おっちゃんに任せとけー』の上位『まだまだ若いもんには負けられねー』が付与された、アンクレット、一時的に筋力が上がる。やる気みなぎる。


「ありがとうございます、師匠」


「カズキさん、ジョン君、めっちゃ若いですよ」


「いや、名前つけたの俺じゃないし…」


「じゃあ、僕、夕飯作りますね」


「ジョンー、私、少しでいいわ」


「お姉ちゃん、まだ食べるの?」


「あはは」


 本当に太るのでは……?


 それから、数日後。


「バーカ、勇者らしい事しろ、つまんねーんだよ」


 だから、勇者らしいって何?

 最近の頭の声のブームは勇者らしい事だ。


「師匠ー、また来てますよ、エアーアシスト付きの指名依頼」


「ああ、なんか最近多いね」


 妹サイクルでは、エアーアシスト付きは販売していない。なぜなら、魔道具付きはバッテリーが必要で、そのバッテリーはダンジョンで特定のモンスターからドロップする物だからだ。指名依頼が来たらバッテリーは購入して製作していた。しかし、バッテリーは300万もするのだ。そもそも、自転車を300万で売っているのに、それを付けて売るとなると、価格のバランスが崩れるからだ。


「バッテリーのストック無いね。ジョン君、悪いんだけどバッテリー買ってきてもらえるかな?」


「了解しました、師匠」


「カズキ? そろそろダンジョン行ってみない?」


「まあ、いいけど、ちと、めんどくさいよね」


 俺はかなりチートだと、自覚しているが、やはり戦うのは好きではないみたいだ。


「ほら、本で勉強したけど、法律とか無いんでしょ?」


「そうだね」


「だよね。まあ、少しだけ今日覗きに行ってくるよ、たぶん、すぐ帰って来る」


「カズキの事だから、大丈夫だと思うけど、気をつけてね」


「うん。ありがとう」


 それから、鉄の木の加工だけ済ませて、ダンジョンに行く事にした。


「ジョン君、今日の指名依頼を一人でやってみない? 鉄の下準備はしといたから、もう一人で出来ると思うよ」


「はい。やってみます、師匠」


 それから、俺は愛車をかっ飛ばしてダンジョンへ向かった。

 ダンジョンは地下へ広がる。最深部は50階で、5フロア毎に、ボスがいて、それを倒すと、ワープスポットがあり、地上へ戻れ、次はそこから入れるらしい。よくあるファンタジー使用だ。ダンジョン内では、落ちている物は、時間が経つと、消えるらしい。ゴミも捨て放題だ。全て、図書館での知識だ。


 さて、どんな感じかな? っと。

 おお、屋根あるのに、明るいじゃん……どゆこと?


 ダンジョンのフロアには、色々な地形があり、当然、深層になればなるほど、出現するモンスターも当然強くなるらしい。暗いフロアもあるみたいなので、対策は必須の様だ。そして、初エンカウントした。

 ゴブリンだ。見るからにゴブリンだ……。

 ちと、頭に響く声を思い出してしまった。

 この世界きて、どれくらい経ったかわからないけど、初日に出会ってでも、おかしくない敵やん……。

 当然、楽勝なので、デコピンで倒してやった。すると弾けるように消えて、小さなクリスタルが落ちた。そして、千里眼を使いながら、順調に進み、3階で、初宝箱。

 おお、まあ、汚い茶色い宝箱だし……。どうせ、ゴミアイテムでしょ。

 と思い宝箱を開けた。モンスターだった。初宝箱で予想してなかったのでビックリしたが、ゲンコツで倒した。そして、5階の、あからさまなボス部屋の扉を開き、巨大なオークの武装したやつが、待ち構えていた。

俺は試し切りがてら、初、勇者の剣を振るい、真っ二つにしてやった。すると、少し大きめなクリスタルと、宝箱が出現。流石に無いよね? と恐る恐る開けてHPポーションをゲットした。

 さて、帰るか。


 帰宅した。


「ただいまー」


「おかえりなさい、カズキさん、どうでした?」


「うーん…。5階まではクリアしたんだけどね、バッテリーで使うクリスタルは出なかったよ」


「そうでしたか」


「師匠、見てもらってもいいですか?」


「あ、ジョン君、もう出来たの? どれどれ、――うん。完璧だよ」


「ありがとうございます、師匠」

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