第18話 武道大会


実況「それでは、みなさん、お待たせしました。ただいまより、決勝戦を始めます」


 もり上がってるなあ。


 実況「まずは、この方、みんなご存知、近衛騎士団長、バーリエ!」


「おお、大人気だ」


「師匠、お知り合いですか?」


「知り合いというか、この世界に来た時、一番初めに会った人だよ。まあ、その一回しか会ってないから」


 実況「続いてこの人、歳を感じさせないパワフルな動きで、ここまで勝ち上がってきた、ギルマス!」


 マジか……ギルマスって強かったのか……。


 実況「それでは、早速始めてもらいましょう。ファイト!」


 凄まじい盛り上がりだ。

 ギルマスが、ガンガン突っ込んで行き、バーリエさんが、交わしながらの、まさに一進一退の攻防が続く。


「ギルマスって強かったんだね」


「そうですよ。昔は結構有名な冒険者でしたよ」


「でも、流石にバーリエさんが勝つよね? 団長なんだし」


「いや、マスターは、元々、このスタイルの戦い方なんですよ。冒険者時代も使っていた武器はナックルだったし」


「バーリエさんは?」


「普段は剣を使っていますね」


 そう言えば、前のやつの写真で、剣掲げてたな。


「あれ? 武器って禁止なの?」


「師匠……。この大会は『武道大会』なんですよ……。前回は『闘技大会』で何でもありだったのですが」


「あ、そうだったのか……。同じと思ってた」


「カズキさん、興味なさすぎですぅ、この大会は魔法も魔法が付与された防具も禁止です。スキルはありですけど」


「なるほど、なるほど」


「マスターは近接戦闘に特化したスキル沢山持ってるよ、だから、マスターのが有利なんじゃないですかね?」


「お姉ちゃん、忘れたの? バーリエさんが結婚した事」


「あ、そうか」


「ああ、前の優勝で奴隷にした人と結婚するとか、言ってたっけ?」


「そうです。その相手が、スキルマスターの称号を持つ副団長です」


「スキルの共有か、じゃあ……」


「でも、おかしくないですか? バーリエ団長、スキル全然使っていないような……」


 確かに、特にスキルっぽい動きはないな。


 実況「ああーっと、ここでギルマス選手の頭がクリーンヒット! これには、バーリエ選手もよろけるぅー、まさに石頭あああー」


「あれはスキル『ダイヤモンドヘッド』ですね」


 …………。

 大盛り上がりだ。バーリエを応援する声や野次が飛び交う。


「でも、何でバーリエ団長、スキル使わないのでしょうか?」


「自分に誓約をしてるとかですかね? 元々の自分のスキルしか使わないとか? どうなんですかね? 師匠」


「いや、俺に聞かれても……」


「確か、騎士団長のスキルは、ほぼ剣技のスキルだったはずだ」


「それでも、ほぼ互角って、やっぱバーリエさんは強いんだなあ」


 実況「両者、睨みあっている、両者ともふらふらだぁー、そろそろ決まるかぁー」


 実況「ダ、ダウンー、優勝は、ギルマス選手ーーー!!」


 大歓声だ。


「ギルマス、一瞬消えたように見えたけど……」


「ですね。あれはマスターの得意なスキル『瞬間移動』視界内なら瞬時に移動出来る」


「へー」


 実況「では、盛り上げてくれた、両者にインタビューしたいと思います。まずは、バーリエ選手から」

 実況「お疲れ様でした。スキルを使われてなかった様に見えましたが、現役のハンデ的な何かですか? ……ふん……ふん。なるほど、どうやら、副団長とは、騎士団性の違いで、別居中で、奴隷契約も凍結中だそうです。ありがとうございました」


 騎士団性って何……?


 実況「では、続きましてみごと優勝した。ギルマス選手にお話を聞いてみたいと思います。優勝おめでとうございます。ズバリ、勝因は?」


 ギルマス「愛だ! 愛しい物への愛だ!」


 実況「なるほど、では、その愛しい物の為に闘ったと?」


 ギルマス「そうだ。今からその愛を見せてやる」


 実況「なんと、ギルマス選手、副賞である超貴重アイテム『エリクサー』をここで使う様だ」


 ギルマスはエリクサーを一気に飲み干した。


 ギルマス「おおおおーー!」


 髪の毛が生えてきた。大歓声だ。

 く、くだらない……。


「エリクサーって、髪にも効くの?」


「そ、そうみたいですね……」


 こうして、武道大会は終了した。


「そろそろ、帰ろうか?」


「そうですね。あー楽しかった」

 

 俺たちは越竹に帰った。


 次の日。


「バーカ! 副賞にエリクサー用意してやったんだから、普通、出場するだろ! ちゃんと伏線回収しろや!」


 俺は飛び起きた。


「ちょっと、待て、用意したって、お前、王様なのか?」


 返事はない……。

 朝食を食べ、自転車作りに。ジョン君の『おいしくなあれ』で、少しおいしく感じた。味は無いが……。


「みんな、早速『カラー』試したんだけど、どうかな?」


「あ、いいじゃないですか。どんどん色増やしましょ」

 

 カラーは六色しかない。色を混ぜようとして、上から違う色のカラーをしても、混ざらなく、キレイに上書きされて、しまうのだ。


「ジョン君ー、ちょっと手伝ってー」


「はい。師匠」


「そっちから赤のカラーして」


 同時に、俺は青のカラーをして、キレイな紫に染められた。


「みんな、見て凄くない?」


 グミエさんとグエナちゃんは、何だかあまり晴れない顔をしている……。


「カズキさん、凄いですけど……」


「師匠。すごいです」


「あんたねぇ、普通に紫のスプレー缶の魔道具、売ってるわよ」


 ……なるほど。俺は、色々な色のスプレー缶を自作した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る