第16話 特別生活魔法


 続いて、図書館に到着した。


「お、お母さん」


「静かに見るのよ。ごゆっくり」


「カズキさん、ここからは別行動ですね」


 なんだか、浮かれてるなぁ。ホントに本が好きなんだな。


 流石、王都の図書館だ。四階建てで、一回は、軽食などを楽しめるスペースで、サービスエリアのような造りだ。ここは本の持ち込み禁止である。実質、二階からが図書館で、二階には、カウンターと本の読めるスペースと、少量の本が並ぶ。三階と四階は、全て本で埋め尽くされている。


 じゃあ、早速『千里眼』そして『ズーム』!

 おお、コレはかなり探しやすいぞ。まずは、魔物にたいて、だな。グミエさん達の、お父さんが釣りやってるみたいだし、海の魔物も知っときたいしな。あれ?ここから海って近いんだっけ?

 俺の目的は魔物とダンジョンの事と奴隷のこと、あと出来たら魔法の値段が、決まってしまっている意味など。これは王都の図書館になら、という期待でしか無い。

 三階は魔法コーナーは見つけることが、出来たが、魔物は無いので、四階に移動した。一番奥で魔物コーナーを発見したが……。行ってみる事にした。


「ゲッ!これほとんど英語じゃないか……」


 かろうじて、日本語の本もあり、数冊とり、奴隷についても探して見たが、目ぼしいのが、見当たらず、近そうな、国の歴史の本や、やさしい法律などという本を手に取り、二階のスペースで時間を忘れ読み耽った。

 よし、だいたいいいかな。次は魔法っと。

 三階の魔法コーナーに到着。

 しかし、魔法の本、多すぎん……?

 どれが良いかわからず、困っていると、


「カズキさん、お姉ちゃんが、一階で待ってるって」


「もう、そんな時間?」


「そうですね。五時間くらいたったかなぁ?」


「グエナちゃんは、探してた本読めた?」


「はい。カズキさんは?」


「まだ、魔法の本が……」


「レンタルもしてますよ。どうします?」


「王都に返しに来るのも大変だし、どれ借りて良いかわからないし……行こか」


 一階へ。


「二人とも、おそーい。アンタたち迎えに来なかったらずっと居たでしょ?」


「…………」


「折角、王都に来たんだから、どこか行きましょうよー」


「うん。そだね。行こか? その前にここで何か食べていく?」


「ここじゃなくて、ここに迎えに来る途中に屋台がいっぱい出てたとこ見つけたから、そこ行きたいな。なんか武道大会の予選会場の近く」


「ああ、なるほど、今日まで予選か。じゃあ行ってみる?」


「さんせーい」


「はい。師匠」


「じゃあ、私達は、お母さんに挨拶してくるね」


「うん」


 予選会場の方へ向かう途中。


「カズキさん、ありがとね」


「…………」

 

 グミエさんが、成金が持ちそうな豪華なバッグを見せながら、寄ってきた。

 絶対高い……!


「ジョン君、止めなかったの?」


「いえ、それが、デパートに着いた後、グミエさんと、連絡先交換してから、はぐれてしまって、すいません」


 グミエさん、巻いたのか……。


「ジョン君、迷子になったの?」


「いえ、連絡したら『すぐ合流するから適当にまわってていいよ』って言われて……。僕も変えのシャツとか欲しかったので買い物してました」


「もう、お姉ちゃん、ちゃんと保護者しないと」


「いえ、すぐ見つけてくれて、その時にはもうバッグ持っていました。そういえば、グミエさんはあんなに広いデパートで、どうして見つけられたんですか?」


「えっ、ああ、女の感よ」


 ジョン君に目で合図を送った。


「ジョン君……頼む……」


「え? あ、はい。『鑑定』……。アイテムバッグレベル2ですね。風属性プラス2の装飾も付いています」


「ちょっ! ジョンーー!」

 

 レベル2だと、姉め……。


「そんな事より、あの豚串食べましょ? あ、射的もあるわよ」


 そんな事か……。

 ん? 射的か、ニヤリ。


「射的やってみようか?」


「師匠やめた方がいいです」


「何で?」


「景品は凄いんですが、いわゆる、ボッタクリです。スキルも魔法も禁止なんです。魔法探知機までありますよ」


「ほう」


 俄然やる気が出た。


「まあ、いいから、いいから、遊び、遊び」


 どれどれ? なるほど、めちゃくちゃ小さいのに当てるだけか、倒して落とせ。とかじゃないなら楽勝だな。


「みんな、何か欲しいのある?」


 景品には、小さな的が設定されてる一等、二等、三等は魔法だ。他は、オモチャやお菓子など、まあゴミだ。


 一等、精密射撃、二等、ファイア、三等、ウォーター


 精密射撃? そんな魔法あったか? てか、射撃の景品が、精密射撃って……。


「オッチャン、一回!」


「あいよ、1万円ね」


 は? 1万……遊びじゃない……お菓子とかって狙うやついないだろ……。


「バンッ!」


「一等」


「オッチャン、もう一回!」


「バンッ!」


「一等」


「オッチャン、もう一回!」


「か、かんべんしてくれ……」


「ふっ」


「師匠、すごいです」


「チーターめ」


 まっ、楽勝だな。それより、精密射撃って?


 精密射撃、必要ステータス、何かしらの攻撃魔法、器用さ20、風4、光1。


「ジョン君。はい。精密射撃」


「よろしいのですか?」


「うん。俺いらないし、持ってないよね?」


「はい。ありがとうございます。師匠」


「で、ファイアはグエナちゃんに」


「わーい。ありがとう」


「うん。俺はもうMAXだしね」


「私は、私は?」


「えっ……、オッチャンに止められちゃったし、無いよ」


「えーーっ、私も精密射撃欲しいー」


「アレ、器用さ20必要だってよ」


「ううう、やけ食いだぁーりんご飴買ってくるぅー」


 行ってしまった……。

 俺たちも好きなものを食べ歩いた。


「さて、お腹も膨れたし、これからどうする? みんなが、特に行きたい所ないなら、魔動車屋に行きたいんだけど」


「カズキさん、魔動車買うんですか?」


「いや、買わないよ。自転車作りの何か参考にならないかなって」


 グミエさんは、まだ両手いっぱいに食べ物を持っているな……。


「それなら、魔動車工場のが、良いんじゃ無いですか?」


「ああ、確かジョン君の家の近くにあったよね。図書館の地図で見たよ。でも、工場って勝手に見学させてくれるのかなぁ?」


「師匠、それならたぶん大丈夫です。その工場はご主人様のやってる所なんですよ。僕もそこでお手伝いしてました」


「ジョ……ジョンの……と……この貴族は魔動車やって……る……のか」


 グミエさん、飲み込んでから喋ろう……。


「はい。工場行くのでしたら、連絡してみます。僕も近くの魔法ショップ行きたいので」


「魔法ショップ?」


「はい。あの辺は工業地帯でして、隣が、魔法研究所なんですよ。その近くに小さいですが、特別生活魔法と初級攻撃魔法のショップがあるんですよ」


「特別生活魔法って?」


「特別生活魔法って呼ばれていますが、攻撃魔法のような物とかも有ります。魔法研究所で作られた魔法が売ってるんです」


「えっ? 魔法って作れるの?」


「そうですね、正確には、既存の魔法を組み合わせて作るというか、発見するって感じみたいです」


 図書館で、魔法の本読み逃したのが痛いな……。だから、あんなに本があったのか……。


「先ほど、いただいた、精密射撃も特別生活魔法ですね」


「なるほど、だから魔法ショップで、見なかったし、必要ステータスに攻撃魔法も入ってたのか」


「そうですね。あと、面白いのが、作った人が、魔法の名前をつけれるんですよ。既存の魔法は基本的には英語ですからね」


「例えばどんなのが、あるの?」


「僕もあまり詳しくはないんですが『くらえ、ドッカン』なんてのもあります」


「マジか……」


「ロックバレットとファイアボールとミストと土属性22、風属性10、とかでした。なんでも、粉塵爆発を利用した魔法らしいです」


「いやいや、詳しすぎない? ジョン君、ホントに9歳?」


「ご近所だったので見に行っていただけですよ」


 ジョン君が、優秀すぎる。本当に俺の弟子でいいのだろうか……?


「あ、それでジョン君の欲しい魔法って?」


「『カラー』です。師匠の自転車の色を付けるのに良いかと思いまして」


「おお、それは良さそうだね。じゃあ、みんなもそれで良いかな?」


「はい。特別生活魔法っておもしろそうですね。私もある事は知ってたんですけど、必要ステータスが厳しいものが多くて気にしてませんでした」


「グミエさんは?」


「……み……水ー……」


「よし、行こう」


 モノレールに乗り、魔動車工場に着いた。


「こんにちはー」


「ああ、ジョン久しぶりだな。自由に見て行ってくれ」


「はい。ありがとうございます」


 基本、流れ作業のようだ。色々、参考になったが、一番気になったのは、鉄や金属や木などを使っているが、音が余りしない。


「あのー、皆さん結構ガンガン作業してますが、うるさくならないのは、なぜですか?」


「ああ、それは、あそことあそことあそこ、ほら、あそこもだ」


 機械の近くにある黒いスピーカーの様なものを指差してる。


「あれらに『もう、うるさくないもん』が付与されてるんだ」


 名前のセンス……。


「まあ、あの一番音の出るやつには、ちゃんとした『遮音結界』が付与されてるけどな。隣に売ってるよ」


「なるほど、ありがとうございます」


 ぐるっと工場を一周して、最後に見学したのは、エンジンを作っている場所だ。しばらく見学したが、俺には作れそうもない。


「ありがとうございましたー」


 

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