第15話 買い物


「ここには、越竹にない、生活魔法や、上級魔法がありますよ」


 おお、得意気に教えてくれるグエナちゃんはかわいい。


「みんなも、欲しいのがあったらプレゼントするよ」


 店内を見渡すと、確かに越竹では見ない生活魔法がたくさんあった。そして、とても気になる物を発見した。


 ダーク、初級闇魔法、必要ステータス、闇5、光1、土1、2000万円。


「すいませーん。この闇魔法なんですけど、初級なのに、何で2000万もするんですか?」


 光と闇はレアだからかとも思ったが、他の初級は300万で売っている。


「何でですかね? 魔法の値段は元から決まっている物なので、価格変更は出来ないんですよ」


 そうなのか、武器屋とかは価格変更してたよなあ……。

 店員さんが、知らないならどうしようもない。


「ダーク下さい」


「えっ? あ、はい」


「それと、スローを15個」


 スロー、生活魔法、近くの指定した物の時間を少し遅らせる。必要ステータス、闇2、風1、俊敏1、MAXレベル5、完全に時間を止める。


「みんなは決まったー?」


「私は『ロックバレット』にするわ」


 ロックバレット、初級攻撃魔法、必要ステータス、土5、風1、300万円。


「私は『ドライ』を一つと『エアー』を三ついいですか?」


「うん。もちろん。もっと良いよ」


「ううん、ステータス足りなくて、私、今、ドライレベル1だから、2にして、3にしようとすると、火属性が1必要になっちゃうから」


「ああ、なるほど、じゃあ火のアクセも買おうよ。そうすれば、3に出来るでしょ?」


「良いんですか?」


「もちろん『エアー』は何で?」


「カズキさんの作ったマフラーを見て、自分でもエアーしながら、自転車漕いだらラクかなって」


「なるほど、面白い。じゃあ、もっとレベル上げちゃおうよ」


「エアーは4から光1が必要なんですよ」


「じゃあ、光のアクセも」


「いやいや、光は高すぎますって、遠慮させて下さい」


「そか、わかった」


「カズキさん、グエナに甘すぎない? じゃあ、私も『エアー』二個追加でー」


「二個とは、グミエさんにしては、お優しい」


「風のアクセも買ってくれるなら、もっと追加しちゃいますけどー」


「あ、二個で……。ジョン君は?」


「いえ、僕は結構です」


「ん? 遠慮しなくていいよ」


「ご主人様に怒られてしまいます」


「えっ?」


「欲しい物があれば、自分で買うようにとブラックカードを持たされているので」


「な、なんと……」


「では、カズキさん、会計は、とりあえず、私がしときますね」


「うん。ありがとう。グミエさん」


「じゃあ、そろそろ私たちの実家に行きましょう」


「うん」


 グミエさんたちの家に到着。とても立派な家だ。


「ただいまー」


「あら、おかえりなさい」


「はじめまして、最上一輝です」


「はじめまして、カズキ様の弟子をやらせてもらってるジョンです」


 様て……。


「これはこれは、ご丁寧に。グミエとグエナの母のガーテラです。とりあえず中へ、どうぞどうぞ」


「おじゃまします」


「主人は仕事中でして、グミエ案内してあげて」


 案内されて、談笑しながら、くつろいだ。目に付いたのが、釣り竿や魚拓が飾られていた。

 お父さんの趣味は魚釣りかな? ん? 趣味って流行らないのでは?


「カズキさん。お母さんが、ご飯出来たって」


 かなり豪華なご馳走だ。味わえない事を申し訳なく思いながら、いただいた。


「ウチの娘を二人とも奴隷にしていただいて、ありがとうございます」


「えっ? あのー、奴隷になってもらってないですよ」


「お母さん、奴隷じゃないって言ったでしょ」


「ウチの娘が何かお気に触る事とか?」


「いえいえ、とても助けられています。二人ともよく働いてくれてますし」


「グミエ、グエナ、カズキさんの、お店で住み込みで働いているのよね? ご飯も食べさせて貰って、カズキさんが好きなのよね?」


「そうだよ。言って上げて、お母さん、カズキさんは、奴隷にしてって頼んでもなんか、誤魔化されちゃうのよ」


 グミエさん、そんな言い方は……。


「やってる事は、主人と奴隷よね? んー…、わからないわ。奴隷にすれば、特典とかあるから、損する事は無いと思うけど……?」


「えーと、俺のいた世界では、奴隷と言う言葉に良いイメージなくて、特典って?」


「スキルの共有とか、ポイントカードの共有とか、あとはー……」


「ポイントカード?」


「そうよ。ギルドに登録してる店なら共通で貰えるやつよ。あれも主人の許可なしじゃ使えないから損する事もないはずだし……10パーセントも戻ってくるんだから、お得よね」


「ちょっと待って下さい。それ俺知らないです。どこのお店でも聞かれた事ないし」


「そりゃそうよ。ポイントなんて使わない方が、カッコいいと思ってる男の子多いし、店員さんがそれを邪魔するわけないわ」


 グミエさんが、汗だくだ……。

 そういえば、買い物とか、率先して行ってたな。

 今日の支払いもグミエさんが……。


「グミエさ……ん」


「ごちそうさまー」


 逃げやがった……。


「カズキさん達は、いつまで王都にいるの?」


「えーと、明日は図書館に行かさせてもらいます。明後日は折角だから、武道大会見て、それから帰る感じですかね」


「今日は泊まっていきますよね? 明日の朝、主人と図書館交代なので、一緒行きましょう」


「わかりました。よろしくお願いします」


 風呂に入り、就寝した。


「マジでバーカ、バーカ」


 んんん……。王都に居るのに、この声か……。


 朝食をごちそうなった。ガーテラさんも一緒に図書館へ向かう。


「じゃあ、カズキさん、私とジョンは、別行動するわね」


「僕もですか?」


「カズキさんとグエナは図書館行ったら、ずっーと、動かないわよ」


「僕も調べたい事あるので、師匠達と図書館へ行きたいです」


「ジョンあんた9歳なんだから、子供らしく遊びにいくわよ。それとも、私と二人じゃ嫌なわけ?」


「そんな事ないですけど……」


「私を一人にする気? さあ、行くわよ」


 グミエさんにジョン君は連れて行かれてしまった……。


「じゃあ、グエナちゃん、俺たちは、アクセサリーショップ行ってから、図書館にしようか? 火のアクセ買わないと」


「はい。じゃあ、お母さん、あとで行くね」


「いってらっしゃい」


 グエナちゃんとデートみたいだ……。ちょっと、グミエさんに感謝だな。


「あ、カズキさん、見て下さい。ウチの自転車乗ってる人いますよ」


「あ、こっちにも、いるよ。近づいてくるね」


 まだ、少しだが、本当に王都にも自転車が広まっている様だ。なんだか、誇らしい。


「俺たちの自転車ってすぐわかるね」


「はい。やっぱり、いろんな色の自転車あった方が良さそうですね」


「まあ、そうなんだけど、そこじゃ無いよ」


 俺は向かってくる自転車を指差した。


「ほら、あれ見て『妹サイクル』って」


「その店名なんとかなりません? ちょっと、恥ずかしい……」


「何を言ってるんだグエナちゃん、妹と言う称号は勇者なんかよりも素晴らしいんだよ」


「妹は称号じゃないですぅ」


「はは」


 ちょっと照れたグエナちゃんは、やっぱりカワイイ。


「あ、そうだ。パーティー組みましょうよ」


「パーティー?」


「はい。図書館着いてからでも良いんですけど、私の『千里眼』で本が探しやすくなりますよ」


「なるほど、ってまさか、その為に千里眼とってたの?」


「あはは、そうですよ」


 マジか……。


「昨日、魔法ショップで見たんだけど『ズーム』って千里眼といっしょに使えるのかなあ?」


「使えますよ。良いですよねズーム。もっと本が見つけ易そう。王都の図書館は広いですから」


「じゃあ、近くだし、魔法ショップも寄って行こう」


「私も欲しいんですけど、光1、必要なんですよね。だから私は無理なんですよ」


「じゃあ、やっぱり、エアーも欲しいでしょ? 光アクセも買おうよ」


「で、でも……」


「大丈夫。グミエさん、ポイントカードの事黙ってたし、秘密でプレゼントするよ」


「私も、ポイントカードの事、伝えてなかったし、でも、わざとじゃないですよ。普通に知ってると思って……」


「ポイントカードって、そんなに簡単なの?」


「そうですね。冒険者カードのマップの次のページに言って見て下さい。そこの左下に、お店のマークあるじゃないですか? そこをタップすると……」


 あ、マジか……。現代でスマホを使ってたはずの俺がなんたる見落とし……。スマホも使い切れてなかったんだろうなぁ……。


「ポイント貯めるのは別にそのページに行かなくても良いんです。冒険者カードをいっしょに出すだけで店員さんが、勝手に、ピッってしてくれますよ」


 本当に簡単だったんだな……。


「でも、グエナちゃんは、俺が知らない事を知らなかったんだよね?」


「はい」


「グミエさんは確信犯だ。俺のポイントも絶対に自分の物にしてる顔してた!」


「どんな顔ですか? あはは」


 魔法ショップに立寄り、俺はズームをMAXまでとグエナちゃんは、ズームとエアーを買った。そして、レジで、冒険者カードをだし『ピッ』と、アクセサリーショップだ。


「越竹のより、ずいぶん大きいね」


「そうですね。アクセサリーショップはここの他にもありますよ。ここは比較的に大きい方ですが、何て言うか普通な感じと言うか……」


「そうなんだ」


「アクセサリーは装飾に凝った物とかも、出来ますから、貴族様が行くような高級なお店とか、若者向けみたいな、お店もありますね」


 グエナちゃんも若者だよね……。


「ここで良かったかなあ?」


「はい。私はジャラジャラしたのとか、可愛いすぎるやつとかも、あんまり好きじゃないって言うか……」


「カワイイのは、似合うと思うけどなあ」


「またまた、あはは」


 いや、マジで……。


「火の指輪はこれでいい?」


「はい」


 越竹にも売っている本当にシンプルで、火を取得するためだけの指輪だ。


「どうせなら、光はネックレスにしない?」


「いいんですか? じゃあ、カズキさんが選んでください」


 本当にデートみたいだ。

 ジャラジャラしたのは、嫌いみたいなのでなるべくシンプルなデザインのやつにした。


「これなんてどう?」


「わあ、とてもステキです。でも本当にいいんですか?」


「もちろん、もう魔法も買っちゃったし」


「ありがとうございます」


 とても、喜んでくれたみたいだ。

 


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