第9話 新生活
モノレールで一駅分だ。歩いても、たいして変わらないが、久しぶりに乗ってみることにした。このモノレールで気になる事もある。それは、景色を見る時間もなく目的地に着いてしまう事だ。早く着く事は良い事なのだが……。
そして、時間を気にして乗ってみる事にした。すると、特には速くない。なんと言うか普通だ。景色も見れた。んー……。
そして、元孤児院に、着いた。俺の土地だ。なんだか、感慨深いものがある。少し浸ってしまった……。
地図で見て大きさも説明はされたが、予想以上に広い。孤児院の建物は一般的だが、庭もあり、ちょっとした農業もやっていたらしい。何かを囲っていたような柵もある。その柵は、丸太と丸太を組み合わせた作りだが、全て同じ形なのである。木なども、ほぼ同じ形なのに見慣れたせいか、あまり気にならなかった。
囲っていたのはペット候補? 奴隷にでもしてたのだろうか? この地の周辺は、都会過ぎず、程よく自然も残っていい感じだな。
やる気も出てきて、一気に孤児院の建物を、ぶっ壊した。そんな時に、
「おまたせー」
すでに、埃まみれだった俺。グミエさんとグエナちゃんも来たようだ。とても、大きな荷物を持ってきている。
「おっ、いらっしゃーい『クリーン』」
「こんにちはー、よろしくお願いしまーす」
「こらー、カズキー!」
え? 何っ? グミエさん、怒ってる? てか、呼び捨て。
「どうしたの?」
呆れた顔に変わった……。
「やりすぎ、もう孤児院ないじゃない」
「フッ! 日頃のバイトの賜物さ」
「今日、私たちどこで寝るの? 孤児院少し掃除すれば、寝れると思って、私たちアパート引き払ってきたのよ」
「……ここに住む予定なの?」
「当たり前じゃない! 雇ってくれるって」
「住むとは、聞いてないけど……」
「土地が、有るのに住まないわけないでしょ」
「そなの? ごめんね。大丈夫すぐ住めるくらいのは作るから」
「すぐって、あんたねぇ」
あんたって……段々、口が悪くなってきたな……。
「あの? カズキさん、私たちは何すれば良いですか?」
「今は特に無いかなあ。自分たちの布団とか寝袋だけ用意して」
「わかりましたー」
「じゃ、俺はササッと、二人の寝るとこ作るね」
とりあえず、プレハブみたいなのを元畑が、あった場所に建てることにした。小一時間ほどで、完成した。簡易なペットを二つ作り、テーブルとイスも作った。出来たプレハブで簡易な作業場などの図面を作ろうとしていたら、二人が買い物から、帰り、かなり驚いた表情をしていた。
「おかえりー」
「ははは、本当に出来てる。アンタ凄すぎだよ」
頭を雑に撫でられた。
完全に、アネゴって感じだな。
「カズキさん、ホントに凄すぎます」
妹はカワエエのう。
「とりあえず、二人はここで寝てね。ちゃんとした家も作るからさ」
「全然ここでも、暮らせるけどね」
「カズキさん、私たちは何をすればいいですか?」
「とりあえず、休憩しない? 休憩しながら決めよう」
「はい。じゃあ、お茶入れますね」
グエナちゃんはヤカンを取り出し、
『ウォーター』
「お姉ちゃん、お願い」
「あいよ『ホット』ちょっと時間かかるけど」
俺はそれを見て、ニヤリとした。
「グミエさん、ちょっと貸して」
『ホット』
「はい」
すぐに沸かせて見せた。少し悔しそうな顔が見れた。
「あんたホットのレベルいくつ?」
「ふふっ! MAXの10だよ」
呆れられた。
「あ、それより、二人の家どうする?」
図面を見せた。
贅沢な、悩みだが、土地が広すぎて困っているのである。図面を指差し、
「この辺でいいかな?」
グエナちゃんが、指差し、
「ここは何ですか?」
「俺の家だよ。作業場と繋げようと思って」
「えっ? 一緒に住まないんですか?」
「……一緒に住むの?」
「当然だよ。勿体無い!」
なんか、グミエさんが怒り気味だ。
「わかった。書き直すよ」
「位置はこの辺で、いいのかなあ?」
「はい。大丈夫だと思います」
家はかなり大きめに作る事にした。シェアハウスの様なものを、検討中だ。
現代知識無双してやるぅ。
「仕事はとりあえず、グミエさんに、会計を全て任せたいんだけど、いいかな?」
「もちろん、任せといて」
「グエナちゃんは、どうしようかなぁ? とりあえず、アドバイザーで、あとは、その都度、お願いするかも?」
「了解です」
「ちなみに、料理はどっちが得意? 俺は作れないから……」
「うーん、二人とも作れないわけじゃ無いけど、得意って訳でもないですね」
「そうなんだ。じゃ、その辺は任せるね」
そろそろ、始めるか。
「えと、なんていうか、こう言う経営的なのとかやった事ないから、至らない点ばかりだと思うけど、よろしくお願いします」
二人は真面目な顔を、してくれた。
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「グミエさん、アイテム袋のレベル3のレンタル十日くらいって出来るかなあ?」
「出来ますよ。行ってくるね。ちなみに、一日10万だから100万だけど、大丈夫かな?」
「うん。経費でよろしく」
「グエナちゃんは、とりあえずこの辺の掃除かな?」
「はーい」
よし、まずは作業スペース設営に必要な素材のピックアップ。壊した孤児院でまだ使えそうな物を仕分けた。そんな時、グミエさんが帰って来た。
「おかえりー」
アイテム袋を受け取り、
「グエナちゃん、ゴミ貰うね」
グエナちゃんが、集めたゴミと、孤児院の解体で、出たゴミを、アイテム袋に入れた。レベル3のアイテム袋は、100メートル×100メートルなので、いくらでも入る。
「グミエさん、経費として、20万貸してください」
ちょっと、申し訳なさそうに頼んだ。
「何に使うの?」
「勇者の大剣とハンマーを買うんだ。建設や素材集めに、必要なんだ」
「わかったわ。あと、ゴミ出すんでしょ? ギルドで出せるけど、その量だと、それも、お金かかるわよ」
「なるほど」
お金を受け取り、とりあえず、武器屋へ行く事にした。
「二人は、適当に先に休んじゃっていいからねー。じゃあ、武器屋と、越竹森林、行ってくるー」
「森林? 何しに行くんですか?」
「鉄、取ってくる」
「お気をつけてー」
武器屋で、大剣と、ハンマーを揃えて、越竹森林の、西側へ。というのも、西側には、鉄の木の生息地が、あるのだ。鉄は鉱石からじゃないか? と言うのは、無視した。そこに、鉄の木の生息地があるから。なぜ、鉄なのかと言うと、鉄には、魔法が付与出来るからである。木には出来ないらしい。道中、投石無双しつつ進む。
ローンあるし……。
鉄の木の群生地に着いた。すると、虎っぽいやつの群れに、出くわした。ボスなのか、ひときわ大きい個体がいる。まずは、もちろん投石! まあ、投石というより、ただ、小石をばら撒くに近い。今までは、これで足りていたのだ。小さい虎でも、投石を交わすやつがいた。
おお、やるなあ。確か、俊敏が高いやつだよな?
図鑑で見た事がある魔物だ。
少し、本気で投石した。小さい個体は全滅させられたが、ボスの虎は、まだ生きている。スピード勝負をしたくなったので、ダメージを与えない様に、少し開けた所に、誘導した。ボスは、群れをやられて、怒り狂っている。当然、飛びかかってきた。
「ヨーイ、ドン!」
俺は逃げた。と言うより、追いかけっこだ。当然、追って来る。俺はまだまだ、余裕がある。もう少し速度を上げて走ると、着いて来れない様だ。
「勝ちー」
もういいかなと思い、少し戻って、鉄の木をジグザグに走りながら、
「アイテムボックス」
さっき、入手した、勇者の大剣で、鉄の木を切り落としながら、走った。ボス虎を、鉄の木の下敷きにしてやった。そして、虎たちと、鉄の木をアイテム袋に詰めて、
「今日の仕事終了ー」
まだ家とは呼べないが、家に帰ることにした。
帰宅。二人の姿はない。
プレハブでもう、寝たかな?
俺も寝る事にした。久しぶりのテントを設営し、就寝。
目が覚めた。久々に頭に流れて来る声が、聞こえない。清々しい朝だ。ま、ずっと外は明るいが……。
「カズキさん、おはようございます。朝食出来てますよー」
ありがたい。
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