第6話 奴隷について


「グエナちゃん、今日行く前に少し話した、奴隷の事聞きたいんだけど」


「はい。いいですよ」


「この国は奴隷制度があるって事だよね?」


「はい。普通にありますよ。カズキさんの世界では無かったんですか?」


「うん。少なくとも俺の住んでた日本って国では無かったと思う。まあ、記憶がないんだけど」


「じゃあ、例えば、孤児の子とかは、どうしていたんですか?」


「うーん。孤児院とかそういう施設かな?」

 

「酷いですね」


「んっ? 酷い?」


「親のいない子とかは施設に入れられちゃうって事ですよね? 酷くないですか?」


「奴隷のが、酷くない?」


「…………???」


「なんか、誤解があるっぽいね?」


「……そうですね」


「んー、奴隷ってどんな制度?」


「えとっ、簡単に言うと、お金持ってる人が、奴隷希望の人を生活の支援してあげて、買われた奴隷の人が、買ってくれた人の言う事をきく。みたいな」


「……まあ、うん、そうだよね」


「嫌々、奴隷になる人はいないですよ」


「えっ!? そうなの? だって言う事聞かなくちゃいけないんでしょ?」


「そうですよ。奴隷の人は言う事聞いてあげたいから問題なくないです?」


「うーん……、嫌な事命令されたら?」


「嫌な事命令する人なんていないですよー。何でそんな事するんですか?」


「何でって……、例えば、キツい仕事とか、言いづらいけど、エッチな事とか?」


「そんな人いないですって。だってそうしたら嫌な人になっちゃうじゃないですかー。エッチな事もお互いが良ければいいんじゃないですか? カズキさんの世界では嫌な人になってもいい人がいるんですか?」


「嫌な人になってもいい人はいないと思うけど……」


 …………難しい。


「主人と奴隷で結婚する人もたくさんいるんですよー。小さい子の将来の夢が、超お金持ちの奴隷とかだったりもします」


「マジか……」


「ちなみに、命令を聞かなかったら、首がしまっちゃったり、爆発しちゃったりする?」


「あはは、何ですかそれ? そんなのあるわけないじゃないですかー」


「そういえば、奴隷商とか見た事無いけど?」


「あっ、奴隷商会は王都にありますね」


「言うの忘れてました。奴隷契約すると、特典もあるんですよ。スキルが共有されますね」


「そうなんだ」


「試しに私と共有してみますか?」


「えっ!? 奴隷契約?」


「違いますよー。パーティーです。やってみましょう」


 そう言うと、彼女は冒険者カードを取り出し少しいじりだした。俺の冒険者カードがブルった。


「許可してみて下さい」


 パーティー申請、はい、いいえの文字が出ているので、『はい』を選択。


「スキルを、使おうと意識してみて下さい」


 何か使える気がしてきた。


「私の唯一のスキル『千里眼』です」


 おお、店内を見渡せる様になった。言わば、フォークアイだ。


「どうでしたか? ここは天井があるので、店内だけだったかと、思いますが、外ならもっと広く見渡せますよ。千里眼もレベルが上がれば、天井も突き抜けて見渡せるようになるんですが……」


「いや、これはホントにすごいよ。なるほどね、パーティーか」


「では、パーティー解除しときますね」


「私のスキルも試してみる?」


 グミエさんが、寝ていたと思ってたんだが、入ってきた。

 

「じゃあ、試してみようかな」


「まだ、ダーメ! 私を奴隷にしてくれたら試せるよ!」


「えっ!」


「冗談だよ。はは、まあ、冗談でもないか。カズキさんなら奴隷になってもいいよ。ちなみに、私も妹もまだ奴隷契約してないから」


「わ、私も、カズキさんならいいですよ」


 な、なんですと!!


「ちょっ! だから、私と妹の反応の違いッ!」


「ははは、とりあえず、保留で……まだ、奴隷の事あんまりわからないし」


 普通に奴隷になって良いと言った感じの二人。


「カズキさんは闘技大会出場しないんですか?」


「んー、あんまり興味ないかなあ」


「えーっ! 勿体無い。カズキさんなら優勝できますよ。そうすれば、一千万円と王様の奴隷も」


「王様の奴隷って?」


「そこからか、ちと長くなりそうだから飲み直そう」


「もう、お姉ちゃん、飲み過ぎー」


「とりあえず、出ようか?」


 会計を済ませた。目が飛びでるとはこの事だ!


「ごちそうさまでした」


「うん。どうしようか?」


「お姉ちゃん飲み過ぎなので今日は連れて帰りますね」

 

「そだね。色々話聞かせてくれて、ありがとう」


「いえいえ、こちらこそ、ありがとうございました」


「じゃあ、また図書館行くね」


 そう言って別れ、今日は初の宿に泊まる事にした。


 ――十日で4万か、これにしよう。

 夜が無いので、24時間で一日というシステムだ。24時間ごとに、一度のバイキング付き、いつでも食べられる、部屋はそんなに広くはない。フリースペースのテントより、いくらかマシな程度である。ほぼ寝るだけの為の部屋なので、悪くない。


 さて、そろそろ……の、前に、


「おい、頭に喋ってくる声のやつー! どうだぁーソロでの換金記録らしいぞー。やってやったぞー、もう出てくるなよーーっと」


 よし、寝よう……。


 次の日、とりあえずギルドへ向かう。グミエさんはいない様だ。カードを更新して、レベル3、までのアップグレードをした。色々な機能が追加された。


 コレ、ほぼスマホだな。


 小金持ち気分も束の間だった俺は今日もとりあえず、魔物の素材集めに行く事にし、アイテム袋レベル2を三つレンタルした。

 少しだけ、魔物について、調べてから行こうと、図書館へ寄ってから行く事にした。


 『越竹森林の魔物』という図鑑を読んでる最中に、


「あ、カズキさん、昨日はごちそうさまでしたー」


「お、グエナちゃん、おはよう」


 もう働いてるのか。働き者だな。流石、妹!


「今日は、お勉強ですか?」


「いや、少しだけ調べてから魔物の素材とりに行こうと思ってるよ。まだ、色々、気になる事あるけどね」


「そうなんですね。私で良ければいつでも教えてあげれますよ」


「助かるよ。じゃあ、連絡先いい?」


「もちろんです。アップグレードしたんですね」


 よし、自然に連絡先ゲット!


 植物図鑑も、少し読み、


「じゃあ、いってくるねー」


「はい。お気をつけてー」


 越竹森林での狩りは、順調で、レアそうな個体とは、出くわさず、かなりの無双感を感じつつ、三日ほど、経過した。

 レアな植物の群生地なども見つけ図鑑に『とりすぎてはいけない』という曖昧な注意書きに従い、ほどほど、採取したりして、レベルも1上がった。今はレベル4だ。

 資金も順調に貯まり、アイテムボックスをレベル2に上げたり、生活魔法を増やしたりもした。

 しかし、やはり、戦うのはあまり好きでは無い事にも気づく。と言うより、弱い者イジメしてる感覚になったのかもしれない……。

 戦わなくても良いようにバイト生活に戻ることにした。今のところ、お金には困らなくなったので、勉強のためだ。色々なバイトを始めた。

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