第5話 デート?


 ガサッ……と音がした。


 よし! 掛かったと思った数秒後、全身に電気が走る様な、少し温かい様な、気持ちの良いものが、駆け抜けた。


 んっ! まさかっ!


 ステータスを確認。HP200、MP100、他、全ステータスが、20づつ上がっていたのである。

 ステータスの指輪がレベル1なのでレベルの確認が、出来ないが、おそらくこれはレベルアップ! さらに気付いた事は、罠で倒した敵からの経験値で、レベルが上がった事だ!

 罠に掛かったオオカミを回収し、罠を作り直していると、大きな物音がした。とっさに身を隠し、様子を見ていると、カラフルな赤、緑、青のクマらしい魔物が見えてきた。 ファンタジー感あるなぁ。アイツら会話してないか?


 罠を見破られた様だ。うさぎ肉に近づいていく。俺はレベルアップで浮かれていたのか、投石もせずに三匹の前に立ちはだかった。

 赤いクマが、少し前へ出て、何か叫びだした。なんだか、聞いた事のあるような言葉だが、ヤル気まんまんに見える。

 しかし、本当にカラフルだ。あと二匹いたら、何とかレンジャーだな…。

 そして、いきなり赤いやつが、火を吐いてきた。予想外の攻撃だったが、俺はすかさず横へ飛び、なんとかかわせた。実質、初の戦闘だが、そんなに恐れはなかった。交わした所に、赤いやつが、もう突進してくる。目の前で、止まり接近戦だ。鋭い爪の腕を大きく振りかぶり攻撃してくる。引っ掻かれたら、かなりヤバそうだ。俺は、とりあえず回避に専念した。連続攻撃から後ろに飛んで交わすと、そこに、後ろの青いやつからの攻撃魔法だ。これは交わせず、もろに食らってしまい、吹き飛ばされ木に激突! かなり痛い。

 こいつら連携するのか……。

 すぐに、ステータスをちらっと確認。一発で、HPの半分くらい持って行かれた。初めてHPを、削られてかなり焦った。次は、緑のやつが、何か魔法を狙っている様な気がしたので、足元の小石を、すぐに投石。俺はかなり焦っていたのだろう。おそらく全力の投石だ。首から上を吹き飛ばした。それを見た赤いやつと青いやつの怒りが、伝わってくる。青いやつは、先ほどより凄そうな魔法を構えだし、赤いのは、また突っ込んできた。大きな腕を振り上げた所をナイフで、腕ごと『スパッ』その勢いのまま、首を斬り落とした。続けて、青いやつの大技、詠唱中に決死の覚悟で、飛び込み、心臓を一突き。詠唱は止まり、安堵した。その瞬間、またさっきの全身に走る光。


 おお、レベルアップか。んっ? 痛くないぞ。


 ステータス確認したら、全回復していた。安堵と爽快感で腰を落とした。


 ふぅ、まぁ、今日はこんなものか!


 カラフルな三体を回収し、帰路へ――



 ギルドに到着。買取の列に並び、


「魔物の買取お願いします」


 少し広めのスペースへ連れて行かれて、アイテム袋からすべて出したら、ギルド内が、ざわついた。


「少々、お待ちください。鑑定レベル3、の職員を連れて参ります」


 と、どこかへ消えてしまった。

 グミエさんが、いつも冷静なのに、かなり驚いた様子で、走り寄ってきた。


「カズキさんって、この後、空いてます? 食事でもどうですか?」


 今度は、満遍の笑みだ……。


 デートの誘いか? 嫌な予感しかしないが……。


「特に用事があるわけじゃないけど、図書館にでも行こうかなって」


「ああ、調べ物ですか? じゃあ、妹も誘って、お食事にでも行きましょうよ。あの子、たぶん図書館の本、もう全部読んじゃってると思うから、何でも知ってますよー」


 グエナちゃんが、来るなら仕方ない。まあ、グミエさんにも、お世話になってるし、妹が来るなら、仕方ない。うん、仕方ない。


「じゃあ、行きますか」


「そうこなくっちゃ! じゃあ、準備して来ますねー」


「あの? 仕事は?」


 ……もういない……。



「査定終わりましたー。全て買取でよろしいんですよね?」


「はい」


「930万8000円になります」


 マジか……。

流石に驚いた。ちょっとした小金持ちになってしまった。


「お待たせしましたー。じゃ行きましょ」


 かなり気合いが、入っている様にみえた。私服姿は、初めて見た。かなり綺麗な、おねえさんって感じだ。


「うん。行こうか」


 デートみたいで、少し緊張してきた。


 うん。見た目は良い! 少しお金に汚いイメージがあるけど、仕事でやってるだけだもんな、うん。これはかなりラッキーだ。


「妹、もう少しかかるって。どうしようか? 何食べに行く?」


「お店とか、まだあんまり詳しくないから、任せちゃってもいいかな?」


「もちろん、任せて」


 食べ物は味しないし、正直どこでもいいけど、普段のお礼だしな、ちょっと怖いけど……。


「あ、ちょっと、魔道具屋よりたいんだけど、いいかな?」


「うん。いこーいこー、何買うの?」


「アイテム袋が欲しくて」


「ああ、いいねー、私も欲しーい」


 ゔっ!! ヤバい、やっぱりか……。


「着いたよー」


 店内を見渡す。かなり色々な物がある。


「ん? あれは?」


 水道の蛇口のようなものが、売っている。


「あれはね、ウォーターの魔法が付与されてるの。で、魔力が切れたら、このバッテリーと交換するの」


「へー。このバッテリー充電するバイトした事あるわ」

 

「あはは」


「あ、こっちだよー、アイテム袋」


 かなり色々なデザインがある。アイテム袋というより、アイテムバッグだ。ブランドバッグの様なものまである。

 ゲッ! 鬼高い!!


「あ、私、コレ欲しいー」


 …………900万円! ……。

 

「ねえ、やっぱり魔法ショップいこう」


「ん、わかったー」


 ふぅ。破産させられる所だった……。

 

「あっ! 妹が、合流出来るって」


「じゃあ、魔法ショップで合流しよう」


「りょ」


 到着。


「いたいた、グエナー」


 小走りで近寄ってきた。


 流石、妹だ。カワイイ……。


「お姉ちゃーん、あっ、カズキさんも、こんにちはー」


「こんにちは、ちょっと、魔法ショップ寄りたいんだけど」


「はい」


「すいません。アイテムボックス下さい」


「えっー! アイテムボックスですか? そんな魔法使える人初めて見ますよー」


 驚いてる妹もいい。


「カズキさん、私、ファイアーボール欲しいなー」


「ちょっ! おねえちゃん……」


「受付に、ファイアーボールはいらんでしょ?」

 

 ちょっと膨れた顔をしている。姉よ……。


「良かったら、二人に生活魔法とかならプレゼントしたいなって、普段お世話になってるお礼だから遠慮しないで」


「いいんですか?」


「うん。もちろん」


「じゃあ、『ドライ』にしようかな?」


「ドライ?」


「はい。えと、髪を乾かす時に便利かなって、本来は、湿った木の枝とか、薪にする時とかに使うらしいのですが……」


「なるほど、俺も買おうかな」


「じゃあ、私は『ドライ』と『クール』にしよ」


「ちょっ! お姉ちゃん、もー」


「いいよ、いいよ、二つくらいなら、それより『クール』って?」


「ちょっとした、冷たい風が出るんですよ。レベルを上げると氷も出るみたいです」


「グエナちゃんは物知りだなぁ」


 少し誇らしげな表情だ。


「私も、それくらい知ってるし……」


「じゃあ、グエナちゃんも、クールも買う?」


「いえ、実は私は、クールレベル3、なんですよね」


 おっ! ドヤ顔に変わった。

 カワイイ……。


「おお、じゃあ氷出せるの?」


「いえ、氷はレベル5、ですね。私はかき氷くらいです」


「その、かき氷は、おいしそうだなあ」


「カズキさん、私と妹で態度違くない? ちょっとキモいです」


「妹は、正義」


「私の妹だからねー」


「妹よ、他のやつはいいの?」


「はい。大丈夫です」


「じゃ、そろそろ、ご飯いこうか」


 俺は、ドライとウォーターとリフレッシュを買い、クリーンをレベル3、までアップグレードした。


 グミエさんが選んだお店に到着した。案の定とても高級そうだ。


 よくわからない食材のメニューが、並んでいる。


「注文も任せちゃっていいかな? まだ、食材よくわかってなくて……」


「おねーちゃんに、まっかせなさーい」


「グエナちゃんも、遠慮しないで頼んでね」


「ありがとうございます」


 グミエさんが、流暢に知らない魔物の長い注文していく。ギャルがカフェ行った時を彷彿とさせる……。

 次々と、料理が並んでいく。


「いただきまーす」


 食事を始めた二人はとても美味しそうにしている。来て良かったと思えた。が、俺は味がしない……談笑しながら、食事を進め、グミエさんの頬が少し紅く、ほろ酔い始めた頃、


「そういえば、カズキさん、火ベアーと水ベアーと風ベアーも倒したって、お姉ちゃんから聞いたんですけど」


「あ、うん。倒したよ。強かったなあ」


 少し興奮した様子でグミエさんが、会話に入ってきた。


「あれは、ソロで倒せる敵じゃないんだよ。レベル30くらいの人達が、パーティーでやっと倒せるくらいの魔物なのに、どうやって?」


「うーん。どうやってって言われてもなあ、あっ、途中で、勇者のナイフ買って行って、これがもうスパスパ切れるのよ」


「スパスパって……、解体屋が、困るレベルの肉の硬さの敵ですよ。肉が硬すぎて食用にはならないし」


「そうなんだ、じゃあ何に使われるの?」


「主には、皮が防具で火のベアーのやつは火耐性って感じで、爪や牙は武器にもなるし」


「なるほど、そういえばレベル上がったと思うんだけど、カード更新するの忘れた」


「じゃあ、明日更新して、アップグレードもしようよ。私たちの連絡先欲しいでしょ?」


「通信機能も付くんだっけ? じゃあ、グエナちゃんの連絡先をお願いします」


「レベル3にアップグレードすれば、ダンジョンでマッピングしたのとかも見れるようになるよ。てか、私の連絡先はーー?」


「すいませーん。同じワインをー」


 …………。


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