第3話 物価と魔法

 

 冒険者ギルドから出た俺はなんだか少しの安心感と疲れからか、若干の眠気に襲われた。が、図書館を目指す事にした。貰った地図を見ながら街を歩き始めた。

 やはり、視線が気になるなあ……でも、それよりも『妹』という響きが気になっていた。


 妹か……いいな!


 俺はこの世界に来る前には妹がいたのだろうか?

 などと考えてるうちに図書館へ到着。


 入館料、2000円…………。


 かなりの本が並んでる。一通り見渡していると、


「あの、すいません、勇者のカズキさんですよね?」


 とてもカワイらしい声で話しかけられた。


「もしかして、グミエさんの妹の?」


「はい。グエナです。お姉ちゃんに手伝ってあげるように言われて……」

 

「そうなんだ。よろしくね。それより、すぐ来たはずなんだけど、どうやって?」


「ああ、冒険者カードですよ。アップグレードで通信機能も追加できるんですよ。じゃあそういったのやつも載ってる本持って来ますね。他には何か探してる本とかはありますか?」


「この国の歴史とか載ってるやつとかもお願い」


「はーい」


 その後もいろいろ手伝ってくれた。人懐っこい性格のようだ。

 妹いいな――


 しばらくの間、持って来てもらった本に没頭した。

 この世界の事が、色々知れた。

 食料以外ほぼすべての物がダンジョンで入手可能な事。この世界は、人族、魔族、魔物に分けられている事。魔族と魔物の違いは、死んだ時にそのまま残るか、クリスタルになるかの違いらしい。ダンジョンに出現するのが、魔族で、森や未開の地には、魔物がいる。いわゆる動物も魔物のカテゴリーのようだ。

 魔法については、ステータスが足りている者が、魔法の巻物を読むと使えるようになるらしい。入手方法はダンジョンで手にいれる。魔法ショップでも売っているらしい。使い捨てである。そして、最後に読んだ『勇者について』では、青い光と共に現れて、主人公である。としかされてなく、よくわかってないらしい。勇者の指輪を装備すると、力を解放するとも明記されていたので、試しに外してみた。ステータスチェックしてみたら、全ての数値が半減されていた。そんな時、グエナちゃんが、駆け寄って来て、


「カズキさん? 勇者じゃなくなった?」


 なるほど、もう一度、勇者の指輪を付けてみた。


「あっ! 勇者になった。おもしろーい」


 外しても称号は勇者のままだが、見た目は隠せるらしい。視線浴びるのヤダから外しとこうかな。


 いつの間にか、21時になろうとしていた。


「グエナちゃん、色々ありがとう。そろそろ行くね」


 「うん。またねー」

 

 図書館を、あとにしたが、外は明るい変な気分だな。

 そろそろ仮眠をとりたいので、警官に教えてもらった宿はあるけど、金がないならフリースペースでテント泊という事なので、まずは雑貨屋に寄ってテント購入かなと思い、ギルドから図書館の間に来る途中でどちらも見かけたので、ギルド方面へ――


「すいません。テントってありますか?」


 安めの寝袋セットで1万のやつを購入し、いざ、フリースペースへ――


 フリースペース入場料1000円……。


 フリースペースとは……。

 空いてる所にテントを設営し、ステータスを確認して、すぐに眠りについた。


 5時起床。当然、空は明るい。腹ごしらえに。


 街には、美味しそうな店も建ち並ぶが、パン屋へ行き安いパンを購入。やはり、味がない。まだ仕事までの時間はあるので、ブラブラとショップめぐり。やはり一番気になるのは魔法ショップだ。先にアクセサリーショップを見つけた。入ってみることに。


 ステータスの指輪や他の何か効果のついた物が売っている。勇者の指輪まで売っている。


「いらっしゃいませ。お客様、それは、勇者にしか装備できないので、ただのオブジェクトにしかなりませんよ?」


 勇者の指輪は外しているので気付かれなかったようだ。が、とにかく高い。すべてが高い。オブジェにしかならん指輪が、100万円。あとは各属性プラス一が、200万円。など、すべてが高すぎる。


「お客様は、ステータスの指輪はお持ちですね。見た所、初期状態の様なので、アップグレードは一つで出来ますよ」


 ステータスの指輪、200万円。


「あ、いえ結構です」


 逃げるように後にした……。

 スキルショップもあるが、スルーして、嫌な予感はするが、魔法ショップへ。


 やはり、高い。


 ファイアーボール、必要ステータス、火5、風1、300万円、

 攻撃魔法の初期でこの価格だ。

 適正は余裕で足りてるが……。


 生活魔法というのもある。いろいろ種類があり使える人も沢山いるとグエナちゃんから聞いていた。実はコレが目的である。生活魔法は本当に種類が豊富だが、俺はとりあえず『ファイア』が欲しい。その場に火を出すだけの魔法だが、色々使えそうだし、とにかく魔法を使ってみたい。店内を見回すと、生活魔法コーナーがあった。

 全品10万だ!

 まあ、コレなら最初の目標が決まった気がした。

 あとは一応、絶対に買えなそうだけど、図書館で見て欲しい定番の『アイテムボックス』である。

 店内に見当たらないので、聞いてみる事にした。


「すいません。アイテムボックスって有りますか?」


 驚いた表情で、


「もちろん、あるよ」


 そう言うと、一番隅に案内されて、在庫が溢れていた。

 

「闇30、も必要だから売れるわけないんだよね」


 光と闇の魔法適正者が少ない事は、図書館での知識として知っていた。値段を見てみると、500万円。


「あのー? 売れないで在庫余ってるのに安くならないんですか?」

 

「んー、一応、中級魔法だからね」


 …………意味がわからなかった。


 そろそろ、仕事に向かう事にする。初仕事だ。モノレールで、現場近くまで、冒険者カードをかざすと、無料で乗れる仕組みだ。

 依頼者からの交通費支給って感じかな?


 ふぅ! 仕事終了。

 味のない食事をし、日用品を一通り買い揃え、フリースペースへ帰る――


 十日ほど、この様な生活を続けた。依頼(バイト)を増やした。魔力供給というバイトだ。MPを消費してバッテリーみたいのに魔力を貯めるバイトだ。これはなかなか効率良い仕事ですぐに終わる。睡眠と食事でMPは回復するので、MPが溜まったら、入れるようにした。

 さらに十日ほど過ぎた。借金は返済し、いつの間にか筋力3、土魔法2、上がっていた。

 建設現場のバイトをやめ、ペンキ塗りや、鍛冶屋の手伝いなどもした。火魔法2、水魔法1、上がった。

 そんな生活をしていたら、目が覚めた時、


「つまらん……」


 と、空からか頭に直接聞こえる様な声が聞こえた気がした。だが、夢だったのか寝ぼけていたので、そんな生活を続けた。


「マジでつまらん。いい加減にしろ」


 ハッキリと脳に直接聞こえた。


「誰だっ!!」


 返事はない……。

 まあ、うすうす俺も感じていた。

 ファンタジー感ないなって! 

 今日の予定は公園の掃除のバイトも早く終わるはずなので、遂に魔法を買いにいくのだ。


 遂に手に入れた。


「ファイア」


 おお! 

 ショボいライターのような火が出た。これまでの生活で、ちょいちょい見てきたので、そこまでの感動はなかった。


 更に、バイトを続けて、生活魔法『クリーン』を手に入れた。

 よし。これで銭湯に行かなくて済むぞ!


 そんな中、無視を続けてきた頭に響く声の頻度と汚い言葉が増えていった。


 一体なんなんだ! ムカついてきた。

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