第2話 初めての街

 

 段々、人とすれ違うようになったけど、どうしようかな? やっぱり定番の冒険者ギルドとか探したいけど、そもそも存在するのか知らんし……。

 なんか、すれ違う人から視線感じるんだよなあ。いろいろな髪の色いるけど、黒髪も結構いるし……。

 んー、門番とかいてくれたら、色々きけたのになあ。

 通行料とか言われても金ないけど……。


「ママーー! ぐすんっ」


 ――迷子イベントか!?

 即座に近寄ってその少女の目線に合わせて、


「どうしたの? 迷子かな?」


 なるべくやさしく話しかけた。

 すると少女は、すぐに走りだし、


「ママ!」


 すぐに見つかってしまった……。

 母親らしき人が会釈をしている。

 なんだか、少し注目を集めてしまった。視線をものすごい感じる。そんな時、見るからに警官っぽい人が駆け寄って来た。

 !!! 何か疑われてる?


「あのー、勇者ですよね?」


「あ、はい。そうみたいです」


 やはり、警察官のようだ。


「勇者がいると通報がありまして」


 通報って……、特に隠す必要も感じないので、話ししてみる事にした。


「俺も急に、この世界に連れてこられて、困ってるんです」


「とりあえず、交番行こうか? そこで、話し聞くよ」


 んー何か悪い事した気分になる……。

 警官の後をついて行く。

 その時、警官の腰を見ると、拳銃の様なものがある。

 魔法のある世界なのに、拳銃……。

 

 交番で、金がない事と泊まる場所もない事、とりあえず簡単に出来る仕事などを聞いた。

 カツ丼を、ご馳走してくれた。やはり、悪い事をした気分に……、やはり、味がない。


 警官の話しだと、ここは市街地のかなり外れの方で、中心に向かうと冒険者ギルドもあるらしい。なんと鉄道も走っているようだ。

 とりあえず、駅前に向かう事にした。

 ――駅には着いたが、人があまりいない。金がないので線路(モノレール)沿いを歩き始めた。とても綺麗な街並みで、同じ様な建物がかなり並んでいる。整備されすぎな気もするが………逆に迷いそうだ……。


 しばらく歩くと、かなり栄えてきたと感じる。いろいろな店が建ち並ぶ。

 おっ遂に発見! 冒険者ギルド!

 荒くれ者に絡まれないかと、ドキドキしながら入店。

 なんだか、市役所に近い感じの所だ。

 丁度、受付が空いたようだ。


「あのー、初めてなんですが」


「はい。冒険者カードの発行ですね。まずはステータスの確認なのですが、指輪をしていらっしゃるので、うーん……少々お待ちください」


 奥の部屋に行ってしまった。しばらくすると、そこから、いかにも偉そうなオジサンが出て来て別室へ案内された。


「はじめまして! ギルドマスターのギルマスです」


 ギルマスって名前? マジか、適当すぎん……。


「勇者ですね。そのステータスの指輪はアップグレードされてないようですので、いちおう冒険者カード発行の為に計らせてもらいます」


 コンコンッ!

「失礼します」


 あっ、受付のおねえさん。

 その手には異世界でよく見る丸い水晶! これって割れちゃうやつでは?


「こちらに、手をかざして下さい」


 恐る恐る手を出した。


「はい。結構です。申し遅れました。受付のグミエです。よろしくお願いします。では、こちらでカード発行しますね。少々お待ちください」


 割れなかった……。


「最上一輝です。こちらこそ、よろしくお願いします」


 カードが出来るのを待つ間に、ギルマスにギルドの事を聞く事にした。


 冒険者にランクなどは無く、ステータスで依頼が受けられるシステムのようだ。張り出されてる依頼書に必要ステータスが、載っているらしい。だが、その多くが、雑用などである。他に出来ることは、パーティーメンバーの募集、ギルドカードのステータス更新。そして、金も借りられるとの事だ。


 コンコンッ!

「失礼します」


 カードが出来たようだ。


「こちらが、冒険者カードになります。使い方は、指輪と同じで、カードを持って意識すると、ステータスが表示されます。身分証にもなります」


 なるほど、普段の表示は名前と時間、受注している依頼のようだ。スマホの様だな。時間の表示はありがたい時計ないし、夜のない世界だもんなぁ……。


「では、一万円になります」


 ッ……!!!


「すいません。お金がないのですが、借りれますか?」

 

いきなりの借金生活である。十万借りた。通貨単位が『円』なんだな……まあ、わかりやすくていいか。


「とりあえず、何か依頼は受けれますか?」


「はい。カズキさんのステータスなら、今出てる依頼なら、ほぼどれでも受けれますよ。オススメは依頼ではないのですが、ダンジョンですね。当ギルドでは、ダンジョンでのドロップ品の買い取りも行っていますよ」


「あっ、依頼を受ける場合は張り出されてるものを受付にお持ちください」


「了解です」


 では、早速見に行ってみる。


 おおっ! いろいろあるな!

 ホワイトラビット肉一羽、5000円買い取り中! ホワイトラビットって、ただのウサギでは? 推奨レベル1からか、要するに誰でもかな? あとはワイバーン100万〜、なるほど、これはとりまスルーだな。

 迷子の猫探しに、料理人募集に、引っ越しの手伝いに……、 なんでもありだな。パーティーメンバー募集もあるのか!

 うーん……、俺は、とりまこれだな!


 土木作業員常時募集、9:00〜17:00、筋力10から、15000円。


 まあ、筋力は余裕で足りてるし、今は、15時半か。とりあえずコレを受付に持って行くんだったな。


「グミエさん、これお願いします」


「……これですか? かしこまりました」


 なんだか不満そうだが、淡々と処理していく。


「では、こちらを」


 返された冒険者カードに『越竹建設9時』と足された。


「カズキさん、ダンジョンには行かないのですか? ステータス的には、余裕で挑戦できるかと思うのですが……」


「まだ、魔法の使い方とかもわからないし……」


「あ、それでしたら、図書館へ行ってみるのはいかがですか?」


「それはありがたい。まだ知りたい事も沢山あるので是非、行きたいです」

 

 簡易的な地図を書いてもらった。


「図書館には、私の妹が働いてるので、力になってくれると思いますよ」


「ありがとうございました」

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