クソみたいな世界
@mumumumum
第1話 勇者
俺は、ふと目覚めた。と言うより、意識を取り戻したという感覚に近い気がする。
辺りを見回すと見慣れない景色……。
なんだか、頭がボーっとするが、意識はしっかりしている。自分の名前は、
が……記憶がない。
最後の記憶が、ゲームの様な画面でステータスを決めた事。
辺りは、喉かな景色だか、日本ではない事はわかった。晴れている空が白いのだ……。
とりあえず、少し歩き出すと、水の流れる音が聞こえそっちの方へ向かうことにした。
道中、持ち物の確認をすると、何も持っていないと思っていたが、ポケットにニつの指輪が入っていた。
両方ともはめてみた。その内の片方の黒い石っぽいのが装飾されている方を見ていると、自分のステータスらしき数字が浮かび上がってきた。これには本当に驚いて、尻もちをついてしまったのだ……。
立体的に出てきた文字にではなく、アニメなどに出てくる異世界召喚なのかと……。
と、同時に恐怖心が襲ってきた。魔物がでてくるのでは? 僕は戦えるのか? 知識はあるが、記憶がない……。
恐怖心からか僕はおもむろに走り始めた。すると、なんだか感覚がおかしい。いつもより速く走れる気がしたのだ。少し冷静になったのかステータスを確認する事にした。ステータスを表示した方の指輪を意識すると自動的にステータス画面が飛び出してきた。
もうひとつの指輪は今の所、用途不明である……。
そういえば、自由に割り振れるポイントを僕は、ほぼ均等にふった事を、思い出した。
今の敏捷は、88これで速く感じたのかな?
他は……まあ、平均的である。普通がどれくらいなのかわからないので、強いか弱いかもわからない。
!!!
称号、【勇者】
さっきこんなのあったかなぁ?
そして、気になるのが、
火20、風20、土20、水20、光20、闇20。
やっぱり、これって魔法だよな! 気持ちが昂ぶった。
よし! ちょっと恥ずかしいけど、周りに誰もないし、
「ファイアーボール…………」
何も起きない。めっちゃハズイ……。
魔法の使い方がわからないのである。
気を取り直して、一応近くに落ちていた木の棒を拾い、水の音のする方へ歩き始めた。
周りに警戒しつつ、誰かに会いたいとか考えながら、しばらく歩き続けて、やっと水の流れる川にたどり着いた。とてもキレイな水が流れている。水に映る自分の顔を見て、姿は変わっていないように感じた。
喉が渇いていた俺は、その水を飲んでみる事にした。
サバイバル知識がないことに気づいた俺は、とてもキレイに見える水も異世界であるだろう所の水を飲むのは怖かったが、勇気を出し、飲んでみる事に、
「ゴクッ……」
大丈夫なようだ。しかし、何か違和感があった。味がしない……。
そもそも水に味と呼べるものがないのだからなのか?
若干の違和感を覚えつつ川沿いを下る事を決めた。
喉を潤した俺は、また恐怖心が襲ってき来る事になる。だんだん自分の事がわかってきた俺は、
慎重な性格なのか臆病者なのか? こんな俺が魔物に合ってしまったら戦えるのか?
川沿いに平坦な道が無くなってきて徐々に背の高い木々が増えてきている。
また、ここで違和感が……。
木や他の植物が同じなのだ………、正確には、木は4種類草は3種類、ほぼ同じ形をしているのだ。
異世界の遺伝子はこんなにも正確に同じ形を成すのか!?
そんな事を思いながら進んでいたら――
何か来る!
周囲を警戒し、背後の空から、
「ド、ドラゴン?」
三匹の大きい鳥のようなのが、こちらに近づいてくる!
異世界初のエンカウントってスライムとかゴブリンとか、百歩譲ってツノの生えたウサギとかじゃないのー!
慌てて走りだそうとしたが、すでに回り込まれていた。
すると目の前の上空から声が聞こえた。
「私は、桜ヶ丘東国、近衛騎士団団長バーリエである! 貴殿に話が聞きたい」
そう言うと、鷹のような大きな鳥から見るからに豪華な鎧を着た三人が降りてきた。
「そなたは、勇者であるな? ここで何をしている?」
兜を外した団長らしきとても綺麗な金髪の美女が問いかけてきた。日本語である。いきなりの攻撃の意思はなさそうだ。
「俺の名前は、最上一輝。申し訳ないですが、俺もよくわかってないのです。こちらからも質問してもよいですか?」
「ああ、かまわない」
「まず、あなた方はどうしてここに? なぜ、俺が勇者だとわかったのですか?」
「今から、三時間くらい前に空が青く光ったからだ! 調査にきたのだ! 古い文献に青白く光った空に勇者が、生まれる。とある! それに、そなたは見るからに勇者だ」
俺の手を指差しながら、続けた。
「それは、勇者の指輪だろう? 勇者以外には装着できない」
ふっと彼女たちの手を見るとステータスの指輪? らしき物はしていた。もちろん勇者の指輪はない。
用途不明の指輪は、勇者の指輪らしい。
「俺以外に勇者はいるのですか?」
「いや、勇者を見たのは初めてだ。勇者を見たと言うのも聞いた事がない」
「勇者とは、何か使命みたいなのがあるのですか? 勇者とは何なのですか?」
「古い文献には、勇者とは、変化をもたらす者!意味はわからんが、『主人公』である!と」
主人公だと……。
それから、いろいろ話しをしてわかった事が、この地は桜ヶ丘東国の何もない所。生物もなぜかいないらしい。
勇者は特に高い地位があるわけではないと言う事。
勇者は見た目で勇者と判る事。俺にはわからないが、人が男と女を見分けるくらいにわかりやすいらしい。
この世界には夜が無いと言う事。そういえば、太陽らしき物がニつ見える、自転をしてるのか?
俺は、記憶が無い事は伝えた。
最後に街の場所を大まかに聞いた。王都は少し遠そうだが、川を渡った先に、
「本当に送って行かなくて良いのか?」
「はい、いろいろありがとうございました!」
俺は、めんどくさくなりそうだし、断った。
あの鳥に乗るの怖いし……。
早速、川を渡ってみることにした。橋なんて無いけど、今の身体能力なら飛び越えられる気がした。まあ、落ちても平気そうだし、
よっと!
楽勝だな。
少しの林を越えたら、街が見えて来た。定番の中世ヨーロッパ風を想像していたが、もう少し技術が進歩しているようだ。そもそも城壁などには囲まれておらず、徐々に家が、密集していく感じだ。
俺は自然と足取りが軽くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます