第2話
「ローズ来たぞ!」
「キャッ!!陛下ッッ!!」
(おっ!来たなゴリラ)
嬉しそうに駆け寄るローズ。
このローズ(齢28)はスメイルの愛妾一号だ。
ピンクの長い巻き髪に整った顔、愛嬌たっぷりな性格はスメイルからの寵愛を一番に受けている。
皇宮に来てから七年になるが、ここへ来るまでは平民街外れにある小さな酒場で歌う売れない歌手であった。
鳥のような美しいな歌声と容姿に魅了されたスメイルが、当時21歳だった彼女を、金と権力により囲い手に入れた。
「ローズ、君に会いたくて堪らなくてここへ来てしまったよ」
(頬がピンクに染まって愛らしい…)
皇后宮から、ローズの住む別館はかなり離れている。
「走って来たから汗を搔いたよ」フゥ
「まっ!…嬉しい!陛下愛しています!!」
(汗臭ッッ)
「ローズ…」
(薔薇のように美しい女だ…)
スメイルは愛しそうにローズの頬を撫でギュッ抱き締めた。
「陛下……」ギュッ
(うっ…苦しい……汗臭いぃ……体を洗ってから来てくれよ……鼻が曲がる…)
「直ぐに君を抱きたい…」
(この薔薇の香り…堪らんぞ)
ローズの耳に優しく呟く。
「ヒィ…」
(無理ッッ!!)
「…陛下、わたし汗を搔いてしまって…湯を用意して貰いますから一緒に入りましょう」
(…うぅ…くさっ…ゴミ食べてきたの?)
「君の汗の臭いなど気になるものか!この芳しい香りは恋のスパイスだ…」ドヤッ
「陛下…素敵な言葉!詩人のようです」
(いやいやいや、問題はお前だよッ!体洗って)
「ローズ…君の唇は小鳥みたいで可愛いらしい…」ブチュゥ
スメイルは、ローズの唇を吸うように咥え込んだ。
「はうッッ!!!ん…へ……陛下ぁ……んんんっ……んはっ……」
(痛ッ……いたたたたッッ)
「愛らしい唇だ…」ハァハァハァ
「…………んは……ん……んっ……」
(咥えられてるから息しずらい………ふぅふぅ……苦しい……腐った臭い……)
「はぁはぁはぁはぁ……可愛いローズ…」息ブハァ~
「くっ………くぅぅ………」
(耐えろ…ローズ…コイツはスメルの皇帝…)
「愛しいローズ…」ペロペロ
スメイルは唇回りをゆっくりと丹念に舐めまわした。
「ん…陛下ぁ…キスはそろそろお止めになって…もうわたし我慢できません」
(もう、限界…秒で死ねる…)
ローズはドレスを捲りあげた。
「いや、もう少しだけ可愛らしい君の唇を味わいたい」
「えっ…」
(終わった…ローズ享年28歳…)
一瞬だが、ローズの顔色が変わったように見えた。
スメイルは、ローズの一瞬の気の緩みを見逃さなかった。
「………」
(キスが嫌なのか…?)
怯んだかのように見えたローズ。
スメイルは、ふと、ダリアの言葉を思い出した。
【【口が臭いんです。ワインで口の中も染まっていますね、それだけで気持ちが削がれます】】
【【ヨダレで口のまわりはべちゃべちゃになって不快】】
ギュッと目をつむり、雑念を追い払うスメイル。
「…キスは好きか?」
「え…?も……もちろんです!!」
ローズはたじろぎながら答えた。
「……」
(怪しいな…)
スメイルは気を取り直し、ローズの胸を鷲掴みにし、揉んでみた。
「はぁん…はん……あぁ……ん……陛下ぁ……気持ちぃ……もっとしてぇ…ィャん……」
(いってぇッッ!潰れるぅうッ!!やめろっての!)
「……」モミモミモミ
(なんて感度だ…本当なのか…?)
「ベッドへ行こう…君の鳥のような喘ぎ声を聞いていたら、息子が暴れたがって仕方がないんだ」ハァハァ
スメイルはローズを抱き抱え、ベッドに運び乱暴に放り投げた。
「キャーーッッ…………ウフフ」
(痛ッッ!なんで投げるのよ、カス!)
「待ちきれないわ…!!陛下ぁ……挿れてぇ……」
(さっさと終わらせてやる…)
ベッドへ横になるなり、足を広げるローズ。
「陛下ぁ…欲しいの……早くぅ……」ゴクリッ
(怖ッ…あんま暴れんじゃねぇぞ…)
「もう、挿れていいのか?」
(ゆっくりなぶるように舐めたい所だが…)
「いつもは我慢できないわたしのために、直ぐに挿れてくださるじゃないですか!……我慢できませんわ…」
(一刻も早く終わらせたるわッ!!)
「…そうか、焦らすのも良くないな、挿れてやろう!いつもわたしを待ってるご褒美だ」
自分の唾で恥部を湿らすローズ。
(ちと待て、これ大事)
「まだ濡れてなかったか……?」
「い、いいえ、念のためです!!」
(いつもは気づかないのに…)
「陛下ぁ……早く……」
「欲しがりでスケベな小鳥だな」ベロンッ
「……」ゴクリッ
(くぅぅう…ッ!想像通りの刺激臭ッッ!!)
ローズに覆い被さると、スメイルは照準を合わせた。
「おらッッ!」ズブッ
「ぐはッ…ぐっ……」
(いきなりすぎぃぃッッ)
「はぁ……ぁあん……」
(ヤバッ、全然濡れ足りん…)
「動くぞ……おらっ……」パンパンパンパンッ
「あん…あんあんッあんあんあん…陛下ぁ…ぁあんッッ」
(くそがッッ!ゴリラ暴れ過ぎだよッッ!馬鹿なの?死ぬの?ゴリラなの?)
「ローズ、君は感度が最高だな…」モミモミモミ
胸を揉みながら、ダリアの言葉が頭を過る。
【【塩を舐める牛でもこんな舐め方しないわよ】】
【【痛い!!貴方の手はガサガサで痛いんですよ、これじゃ垢擦りとかわらないわ】】
【【愛妾達はご奉仕する気持ちが余程強くて我慢しているか、肌を守る鱗があるかのどちらかですね】】
「……」パンパンパンパンッ
(……そんなはずない…そんなはずはない…)
「あ-ッッ!最高ぉぉん……あんッあんッ……イクイクイクぅぅぅ……陛下もイッてぇぇん」
(そろそろイっとくか)
【【なんて愚かな…女の演技を信じておられるのですね?お可愛いこと】】
「……気持ちいいか?」パン… パン… パン…
「……あんッあんッ最高ですわぁ……陛下もイッてぇ
イクぅぅぅぅぅう!!!!」
(今日のゴリラなんか変だな?…さっさとイケや!)
「ごめん……萎れてしまった…」シュン
「え?大丈夫ですか!?」
(中折れ…?頑張ったのに子種なし?ざけんな)
「きょ、今日は疲れていたし、酔いすぎたようだ…」
(情けない…わたしは夜の皇帝でもあるんだぞ…)
「そ、そうですか…大丈夫ですか?ご無理なさらないでください」
(…でも、助かった…終わった……)
「…ローズ、ちゃんと君を満足させられたか?」
「もちろんです!!天にも昇るほどの気持ち良さで、体が溶けてしまうかと思いましたわ」ニコッ
(はっ!?中折れしといて生意気!!)
「…そうか」ホッ
「紅茶淹れますわ」スタスタスタ
(アーッ喉乾いたぁ)
ローズはサッと衣服を直し、紅茶の準備を始めた。
(絶頂を迎えたばかりだというのに…スタスタと歩いている…切り替えの早いものだ…)
「具体的にどういう所が良かったのか聞かせて貰えないか?」
「へ…?」
(面倒くさっ…こういう人いる)
「わたしとの夜伽で何が最高だったのか聞きたい」
「逞しい体です…力強くて…陛下に抱いて貰えるだけで天にも昇る気持ちなんですから!!もう、恥ずかしい…言わせないでください!」ポッ
(くそっ…ゴリラゴリラゴリラ)鼻ホジ
ローズは熱い紅茶とチョコレートをスメイルに差し出した。
チョコレートはスメイルの好物だ。
ローズは、スメイルが訪れた際には、チョコレートは欠かさず用意していた。
「そうか…そうだな、わたしに抱かれるのだから最高に決まっているな…」チョコパクッ 紅茶グビッ
「熱ッッ!!!あちちッ」ブハッ
スメイルはカップひっくり返し紅茶を吹き出した。
「なんてこと!!大丈夫でございますか!?」
ローズは拭くものを用意すると、紅茶のかかったスメイルの下半身を念入りに拭き出した。
「火傷していたらどうしましょう!心配です」オドオド
(おいっ!子種だけは大事にしろよ…てかさ、コイツなんでこんだけヤってんのにガキできねーんだよ、種無しぶどうかよ)
「ありがとう…ローズ…君は心優しいな」
スメイルはローズの頭をワシャワシャと撫でた。
「へへへ…お慕いしておりますわ」ニッコリ
(髪がボサボサになるだろうが、ゴラァ)
ローズとの幸せな時間。
いつもなら、スメイルにとって癒しの時間。
しかし、スメイルの頭からは、ダリアから言われた言葉の数々が離れなかった。
ぐるぐると回るように何度もダリアの言葉が頭を駆け巡る。
そして、府に落ちないローズの態度や言動。
「…そろそろ行くよ」
「え?今晩はこちらでお休みになられないのですか??残念です…」
(おーっさっさと帰れぇい!ゴリラはゴリラの寝床でどうぞ)
「あぁ…今夜は疲れた」ハァ…
「そうですか…ならばお部屋までお送りします…」
(めんどくさッ…つか疲れたのこっち…)イラッ
「すまないな」
「陛下となるべく一緒にいたいんです…」照レ
(おい、断れよぉ…)
夜は既に更けていた。
皇宮を照らすあかりが幻想的に灯る。
「外はだいぶ冷えてきましたね」トコトコ
青々としていた木々は、赤や黄色に染まり、澄んだ空気に吐く息がうっすらと白くなる。
「そうだな」スタスタ
「陛下…お待ちください」ウフフ
(歩くの早い…ゴリラの歩調に合わせる人間の
身になってください)イラッ
「陛下寒くありませんか?」
(あ~ぁ…上着持ってくればよかった…寒っ)
「わたしは大丈夫だ。寒くもなんともない」
「それは良かったです」クシュン
(なら、上着貸せよ…ゴリラ!お前には毛皮があるだろうが)
「ここまででいい!ローズ、君はもう帰りなさい」
「え…?」
(ここってマーガレットーの住む別館の近くじゃん!!はぁ~?中折れしたくせにふざけんな!他の女に子種とか最悪)
「陛下…また会いに来てくださいね…」
(お願いします…今度は子種だけ持ってきてください…)
「ごめんな、ローズ…今度はゆっくりしていくからな…」
スメイルは、名残惜しそうにするローズを見て少し申し訳なくなった。
「おやすみ、ローズ」ブッチュゥ
「お休みなさい陛下」ニコッ
(くさッッ…ふざけんな最後に置き土産残して行きやがって…)
スメイルは、ローズの頬に軽くキスをすると、マーガレットの住む別館へ向かって歩いて行った。
「陛下、お気をつけて」
(また来いよ、ゴリラ)
ローズはスメイルの姿が見えなくなるまで手を振った。
トコトコトコ……
「ローズの所へ行ったが、結局何もわからなかったな…」
スメイルはマーガレットの元へ向かっていた。
「はぁ…気乗りしないな…やはり今日はやめておこうか…」
「陛下!!嬉しいですわ!!来てくださったのですね」ハァハァハァ
スメイルの姿が窓から見えたため、マーガレットは駆け足でやってきた。
「いや、今日はもう自分の宮へ帰ろうと思って…」
(疲れた…湯に浸かり体を休めたい…)
「そんなことおっしゃらずに!!せっかくここまで来たのですから!湯を用意しますわ」
マーガレットは、愛妾の中では最年長の34歳だ。
彼女は19歳の若さで夫を亡くし、20歳でスメイルの夜伽を成し遂げた。
そんな彼女は、その後も皇宮で働き侍女として皇帝に健気に尽くしてきた。
長いこと献身的な彼女を見ていた皇帝が
心を打たれ五年程前から愛妾2号として迎え入れたのだ。
「こちらへ来てぐっすりとお休みください…」
「…そうだな……ならば寄って行こう」
(ダリアの言う通りなら、わたしに夜伽を教えたマーガレットのせいになる、確かめねば…)
スメイルはこの日
献身的な彼女の口から、とんでもない事実を聞かされるのであった。
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