とある女性の日記
〇2012年3月21日
今日、我が家に新しいメンバーが増えました。今年で四歳の……ちゃんです。四歳だとは思えないぐらい利口で可愛い子なんですよ。この子を産んだ、お母様は「手が焼けて面倒な子」だと仰ておりましたが、まったくそんな事はありませんね。少なくとも今のところは……。
子供を身篭ったことがない……いえ、身篭れない私が、……ちゃんの母親になれるでしょうか?
それが一番の心配事です。
〇2012年3月24日
予め覚悟していたことですが、あの子が全然口を聞いてくれません。いきなり知らない環境で暮らすことになって混乱しているものだと思います。
やっぱり、前の、お母さんに会いたいのかなと思っていたのですが……あの子ったら「ママは私のことを『鬼の子』だって言ってた。私がいると、みんなが不幸になるんだって」なんて言うんですよ。まだ五歳の女の子がこんなことを言うなんて……こんなことが許されていいはずがありません。あぁ、……。大丈夫、私は貴方にそんなことは言わないから。
○2012年5月4日
今日は……と川へ遊びに行きました。
同封した写真をご覧いただければ分かると思いますが、 出かける時は新品同様だった綺麗な、お洋服があっという間にビショビショになってしまいました。
部屋の中でも同様に、しょっちゅう走り回っていて、我が家では、お
最近、村の幼稚園にも通い始めましたが、お友達とは、あまり上手くいっていないようですね。幸いお勉強の間は問題行動は起こしていないようですが。きっと本人なりに頑張っているんですね。
○2012年6月14日
……に友達ができたみたいです。本当に良かった。
一人は女の子、もう一人は男の子です。
女の子は、お昼休みの時間いつも……と、砂遊びやブランコで遊んでいます。もう一人は近所に住んでいる小学生の男の子です。いつも学校帰りに、来てくれるんですよ。……も「お兄ちゃんができたみたい」と言って喜んでくれています。
それはそうとして、鎮めの儀式は上手くいかないかもしれません。あの子には子供達と
○2012年9月26日
この手紙に書かれている内容は、他の方には言いふらさないで下さい。
昨日、幼稚園から帰ってきた……が私に「ママも私のことが嫌いなのか?」と聞いてきました。「どうして?」と聞き返したら、あの子は「私はもうすぐ死ぬんでしょ?」と言ってきたんです。
誰かが、あの子に霊依について教えたんです。
このままでは最悪の事態が訪れます。
もし家族に、あの子が鬼依の真実に気づいていることがバレてしまえば、きっと殺されてしまいます。でも、ここで私が家族に事実を伝えなければ、黒宮一族――■■■■村が千年かけて積み上げてきた嘘が破綻してしまいます。
きっと私はおかしくなってしまったのでしょうね。このまま家族に相談して、……に真実を教えた裏切り者をあぶりだすことが、正しい道だと分かっています。
でも、それでも、私は……。
■■■■年■月■日
今思えば外から嫁いできた……というより無理やり村に縛り付けられた私には、■■■■に対する思い入れはありません。
ただ一つある記憶は跡継ぎを産まない私を罵る一族の顔と、毎日祟りに怯えて偽りの平和を享受する村人達の姿だけです。
そんな暗闇の中に差し込んだ一条の光こそが、あの子でした。あの子が私の支えでした。あの子だけが希望でした。
いっそ、あの子が
黒宮家と氏子共が千年かけて積み上げきた、嘘が、計略が、偽りが、全て破綻してしまえば、いいのに。
一族の罪が許されなければ、いいのに。
あぁ、泣かないで。
大丈夫。
だいじょうぶ。
守ってあげる。
あいしてる。
世界で一番。
あいしてる。
貴方を守れるなら。
私は悪魔でも、雷神にでも、餓鬼にでも、何にでもなれるわ。
だから、なかないで。
だから、自分を責めないで。
どんなてをつかっても、まもるから。
あぁ、いい方法を思いついた。
多少の危険は伴うけど、これなら貴方を救えるかもしれない。ちょうど、使えそうな子がウチに来たから。
お母様が守ってあげるからね、みさき。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます