短編「風邪を引いた友達」(ネット掲示板から一部抜粋)

*某有名オカルト掲示板に掲載されていた怪談を、一部抜粋しました。



 これは小学生二年生の弟から聞いた話です。弟の友達にM君という子がいました。


 M君の家は近所でも有名な、お金持ちです。玩具おもちゃは、数え切れないほど持っていますし、幼稚園の時から英会話教室に通っていたので、英語も少し分かります。おまけに、性格まで完璧なM君は、いつも友達に玩具を貸してあげていました。


 もちろん、内気な私の弟にも、毎朝あいさつをして、玩具も貸してあげていたそうです。ありがたい事ですね。私にも、そんな友達が欲しかったです。

 ウチは貧乏ですから、私が弟ぐらいの歳であった時は、流行りの人形を持っていないせいで、私だけドールハウスごっこに入れて貰えませんでしたから。


 そんな、ある日のことです。

 M君が風邪を引いたそうです。

 可哀想。

 そう思った私は、弟に「M君に、お見舞いの電話をかけてあげなさい」と言いました。

 弟は「はいはい」と、口を尖らせながら家の電話へ向かいました。


 私は通話の内容を聞いていないので、ここからは弟の証言です。


 まず弟はM君に、体調は大丈夫か聞いたらしいです。M君は咳き込みながらですが「大丈夫だよ」と答えたそうです。風邪の影響か、少し声がおかしかったそうですが……。



 話すことがなくなったので、弟はそのまま電話を切ろうとしましたが、それより前に、受話器の奥でガシャン、という物音がしたそうです。慌てた弟は「大丈夫か?」と聞きました。すると、電話の向こうから「あぁ、大丈夫だとも」という声が聞こえてきました。


 不思議な事に、おかしくなっていたはずの

M君の声が元通りになっていたそうです。

 M君は弟に聞きました。「君は俺を友達だと思っているだろう?」と。弟は「当たり前だろ」即答しました。それから数秒間二人の間には沈黙が続きましたが、やがて受話器の向こうからM君の物ではない声が聞こえてきました。


「ボウズ、嘘はいかんよー」


 

 その後、弟は何と言い返そうか、あれこれ考えていたらしいですが結局、その前に受話器の向こうから、電話が切れたことを告げるツー、ツー、ツーという音が聞こえてきたそうです。


 それから、数日後、私は弟に聞きました。


「M君の風邪治った?」


 弟は答えます。


「うん、もう二度と風邪引かないよ」

 






 



 

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