タイムリミット

えでぃ

#1

あの時。

私が膵臓がんⅣ期だと知った時、私は何を思っていただろうか。

今では考えられないくらいやっと死ねるなどと思っていたのかもしれない。




「航也帰ろー!」

「ちょっと待てよ咲」

「いつもの桜の木の下まで行っとくよ!」

「わかったわかった」

「絶対来てね!」


中学生だった頃、私はとても仲の言い友人がいた。いや、片思いの女の子がいた。

いつものように丘の上にある一本の大きな桜の木の下で放課後を過ごすのが日課だった。

ある日、いつものように咲が早くに行ってしまってそれを追いかけるかのように行く自分を想像していたのと裏腹に一人の教師が正面玄関で僕に話しかけてきた。


「おい上田、ちょっといいか?」

「なんっすか?」

「ちょっとだけ時間くれ」

「あー、わかりました」

咲を待たせているのは申し訳ないが、少しくらい良いだろうと思って私は先生について行った。

これが間違いだったと気づいた時には咲はもうこの世にはいなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私は彼女が死んだという報告を聞いた時、気が動転してしまいすぐに寝込んでいたらしい。あまり記憶にはないが、毎日毎日泣いていたと後で親から聞いた。あの事があって一年丸々寝込んでいた私は高校受験というものすらすることができなく、一時精神科に通ってみることになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「先生、先生に大切な人はいますか?」

「もちろん、僕には家族がとても大切だよ」

「じゃあその人たちが死んだらどんな気持ちですか?」

「とても悲しいね」

「そんなの知ってますよ。ですが先生はそれを体験していないのになぜそう思うのですか?」

違う。。。

「それはそんな状況になっている人を多く見てきたからだよ」

「それだけですか?」

違う。こんな事が言いたいんじゃない。

「それだけでも僕は航也に寄り添いたいと思ってるよ」

「そうですか、ありがとうございます」


「俺死のっかな」

家に帰ってそのままベットに飛び込んで俺は思った。

こんな考えだめだとわかっていた。

けど、どうしてもあいつのことが頭にあって眠れない夜は数えられなかった。正直もう疲れた。


「こんにちは。あの、昨日はすいませんでした」

「いいよいいよ、気にしないでね」

「俺ここから何ができますかね」

「うーん、まずは友達を作ってみたら?ここに毎週火曜日に通ってる同い年の女の子がいるよ。話すだけでも良いからさ」

「わかりました、では来週は火曜も来ます」

正直気乗りはしなかった。あんな事があったのに俺は人と関わって良いのだろうか。わからない。

あれから何かに心を惹かれたり、心から笑ったりすることはなかった。

次の火曜日までは、、、













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