第20話 2人のマダム


 シニアグループのマダムの面々をもう一度振り返ってみよう。

 *先ずは前田邸だが、夫75歳は元経済産業省の官僚で現在は引退している。妻は専業主婦。定職に就かず親のお金を当てにする45歳の長男に頭を抱えている。

 *町内会長夫人雪乃様の夫はお寺永願寺の住職だが、コロナ禍の影響などで経営悪化

 *夫が数年前に亡くなり1人で豪邸に住む北村貞子様。謎だらけの夫婦。 

 *中小企業の会社経営者の奥様で和子様。

 *この一帯の土地を所有する地主の妻良子様。



 この面々の前田様と謎多き北村邸の話は折に触れて説明している。そして町内会長夫人雪乃様の話も一通りしてある。だが、中小企業の会社経営者の奥様で和子様と、この一帯の土地を所有する地主の妻良子様の話は一切触れていなかったが、実はこの2家庭にも人に言えない秘密があった。




 それでは……中小企業の会社経営者の奥様で和子様のご家庭にスポットライトを当ててみよう。


 コンサルティング会社「ホープ」経営の夫中川氏だが、元々大手コンサルティング会社に勤務していた人物だった。


 企業の多くは課題を抱えている。 現状の問題点を改善して業績を向上させるためには 専門的な支援やコンサルティングが求められる。業績を上げるには、経営の右腕になる存在が必要だ。この様な難問を的確にアドバイスしていたのが中川氏だった。お陰様で信用を勝ち取りお客様が独立と共にともに付いて来てくれた。


 顧客を多く抱えていた優秀な中川氏は独立の道を選んだ。顧客に十分過ぎる信頼を勝ち取っていた中川氏は、自分の担当していた多くの顧客を、そっくりそのまま自分の立ち上げた会社で継続してもらうことが出来て、更にはこれまでに築いた人脈から紹介してもらったりなどしたので自ら会社を興したが路頭に迷わずに済んだ。


 だが、この中川氏仕事は出来るが、仕事のストレスからギャンブル狂で湯水のごとく金を使うという問題大ありの男だった。

 

 ※コンサルタントの仕事内容は、課題を抱えている企業や機関等から依頼を受け、その解決に向けた支援活動を行うことです。 業界によって、どのような課題を解決していくかは異なるものの、どのように課題を解決していくか、依頼されている「課題」を細分化し、それに対する改善策をチームで提案・実施していくのが仕事です。


 ★☆


 もう1人のご婦人で、この一帯の土地を所有する地主の妻良子様だが、夫の勲は無類の女好きで、それも若い女性が大好きで、若い女をとっかえひっかえしている艶福家。現在は愛人が何と2人もいる。


 妻良子様は現在70歳で最近は諦めモード。若い女が好きな夫は自分は年がいっているくせに、女には若さを求めるたちの悪い男だった。決して若くない良子様は完全に捨て置かれている現状化、嫉妬とストレスで精神的に追い込まれて不安定な状態が続き、こっそり精神病院を受診なさっていた事があった。


 それというのも良子様にはお子が出来なかったので、夫勲としてもどんな事をしても後継ぎが欲しくて多い時には3人の愛人がいた事もあった。こんな現状化精神的に追い詰められて行った。

 それでも……おかしな話だ。子供が出来ないのであれば病院で診てもらうなり何なり出来そうなものだが……。


 そうなのだが、夫勲は学生時代に妊娠騒動で家族と大揉めに揉めた過去があった。実は……水商売女との間に子供が出来てしまったのだ。当然両親は大反対。


「そんな水商売女との子供なんか絶対に家の子供とは認められない。ましてや誰の子供か分かったものではない?」


 まだ学生で勲も結婚できる状態ではないので、お金で解決するしかなかった。結局その水商売女に慰謝料を払って子供は中絶手術をしてもらい別れたのだが、こんな過去があったので勲は自分は子種がないなど努々(ゆめゆめ)思わなかった。


 だが、その時の水商売女は妊娠などしていなかった。金が欲しくて騙したのだ。


 勲は当然子種がないという事など努々(ゆめゆめ)思っていないので、何とか跡取りをと必死になっている。


(嫁の良子には悪いが仕方ないだろう。由緒ある財前家を俺の代で潰す訳にはいかない。第一妊娠できないお前が悪いのだ)この様に自分が女好きで愛人を抱え込んでいるのを、妻に責任転嫁してしまっている。



 そんな時に若い愛人が妊娠した。こんな現状化いつ捨てられるか分からない状態に追い詰められ、長い間うつ病を患っていらっしゃったのだ。


 だが、良子様も夫に見向きもしてもらえず女ざかりの頃には、とうとう我慢が出来ずに、財務担当の従業員と肉体関係を持ってしまった過去があった。すると夫とは頑張っても子宝には恵まれなかったのに、その男と付き合いだして間もなく妊娠が発覚した。


 45歳の良子様は本当は何としても産みたかった。

(これが最後の子宝を授かることになるだろう。どんなことをしても産みたい!)


 どんなことをしても産みたかったが、財務担当の男の強い反対と、自分も産んだは良いが、絶対に夫にバレない保証はない。夫の子供と偽って暮らせるほど図太くなかった良子様は、涙を吞んで中絶という選択をした。


(これは一体どういうこと?夫とは最近は夫婦関係は殆ど無いのに、財務担当のこの男とは直ぐに妊娠したと、いう事は夫には子種がないという事かも知れない。

これは大変!私はちゃんと妊娠出来たのに。とうとう夫との間には子供は授からなかった。エエエエエェェエエエエエエ!絶対に可笑しい?それなのに夫と愛人との間に子供が出来たという事は、愛人が別に男がいるという可能性だって考えられる。ましてやホステスだった女だ……)


 良子はこれは夫を取り戻せる切り札になるかも知れないと悟り、愛人美月を徹底的に興信所を使って調べ上げた。

 実は……美月は銀座クラブVenus(ビーナス)のホステスだった。

 

 すると……やはり男がいた。その男はクラブ時代のお客で30歳の一流企業のイケメンサラリーマンだった。お客様の接待でちょくちょく顔を出していた美月の勤めていたクラブVenus(ビーナス)のお客様で、ホステス時代からの男だった。


 良子様は早速夫勲にこの事実を話し、興信所の書類を渡した。


「あなた騙されています。誕生した凛ちゃんは本当にあなたの子供かしら?だってあなたにちっとも似ていないわよ。お調べになったら?」


「バカなこと言うんじゃないよ。俺の子供に決まっているさ」


「あなた美月さんのホステス時代からの、男の写真持っていますから……ご覧あれ!」


 そう言って勲にその男の写真を手渡した。


「嗚呼……本当だな。凛にそっくりだなあ。ぅううん……これは怪しい。良子調べてくれ」これが1999年の事だ。DNA鑑定で直ぐに判明した。


 100%に近い確率で勲の子供ではない事が判明した


 勲は凄いショックを受け美月との関係は終わった。凜は2024年現在27歳だ。今現在の消息は不明だ。






































































 

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