第19話 防犯カメラに写った人物?
彩の夫浩一が亡くなった事で田コンビは、彩と交際中の男直樹に強い疑念を抱いた。
「20歳違いの彩と結婚して、つい最近急性心不全で亡くなった桜井浩一だが、妻彩には男がいたんだよなあ」
「そうなんですよ。何でも……真剣交際中だった桜井浩一と妻彩の前に現れた男は、テレビでも取り上げられている人気の料理人今井直樹という男で、彩が直樹に惹かれてしまって一時期浩一と彩は交際を中断していたのです。こうして……直樹と彩は真剣交際に発展したのですが、会社の「今井産業」の焦げ付きが発覚して2人の関係は暗礁に乗り上げたらしいです」
「それはそうだろう。「今井産業」の部品工場部門が焦げ付いてそれどこではなくなったという事か?」
「そうなんですよね。そこで焦げ付きの穴埋めの為に彩の夫を殺したってことですか?」
「だよなあ。夫さえいなくなれば1億円の保険金は降りるし、好調な「和食割烹光城」さえあれば生活は出来る。それでも……まだ彩も離婚していなかったという事は、浩一が頑として受け付けなかったので余計に邪魔になったんだろう。一方の直樹も奥様と離婚していないところを見ると妻美穂が拒絶しているという事だ。それで……夫に多額の保険をかけて怪しまれない方法で殺害して、お金と愛を手に入れようとした可能性はあるな?」
「それでも……おかしい話ですよね。そんなに愛し合っていた直樹と彩は何故結婚せずに、彩は完全に気持ちの離れた浩一と結婚したんでしょうね?」
「そう簡単に資産家の婿養子の地位を捨てれる訳ないさ。それって事は直樹の目的は、彩を夢中にさせて自動車部品の重要書類を盗み出させることが、何よりの目的だったんじゃないのか?夫浩一はその頃は開発部門の部長だから重要書類は家にあるわなあ」
★☆
だが一方で直樹は舅に怒り心頭で不満を爆発させていた。舅が経営する自動車部品工場部門の経営が悪化したと言えど、他の部門は万全だ。いくら婿養子と言えども「割烹光城」で稼いだお金を湯水の如く、自動車部品工場部門の悪化に注ぎ込む舅を目にして直樹は一気に不満が爆発していた。
一方の彩は必死に直樹の事を忘れようとしていた。そんな時、直樹から連絡が入り2人の思いは再燃するのであった。
だが、浩一は家庭がありながら若く美しい彩の事が忘れられない。しつこく彩に電話攻撃の日々が続く。一方の直樹は折角彩が自分のものになったのにしつこく電話抗戦に訴える浩一に、絶対に渡したくない思いが膨らんで行ったのだが、再三 の電話にも全く反応しない彩に諦めモードで最近は収まっていた。
直樹は束の間の安息の時間に浸っていた。だが、最近はあれだけ控えめな女だった彩が、ズケズケ主張するようになって来た。結婚結婚と矢の催促にウンザリ気味だ。
そして…直樹には新たな気持ちが芽生える。生まれたばかりの女の子を見るにつけ「冗談じゃない!」という気持ちがこみ上げて来るのだった。
『駄目だよ!2人の会社を興すために君は仮初めの結婚をして僕の協力をしてくれて、その結果君と結婚して君を社長夫人にする為に無理を承知で頼んでいるんだよ。妻と離婚するためには多額の慰謝料が必要だろう。その為には俺が稼げなくてはダメだろう。それもこれも彩と結婚するためさ』
バカな話だ。彩もそんな話を信じてしまったのだろうか?
全く理解出来ない。彩が何故そんないい加減な言葉を鵜呑みにしてしまったのか?
実は……直樹が婿養子となった今井家は長い間子供に恵まれず、やっとの事現社長が45歳の時に美穂が誕生した家庭だった。なので現在社長は82歳。
直樹は彩に折に触れてこの様に話していた。
「俺を信じてくれ!社長は80を超えた老人だから……まあこんなこと言っちゃ失礼だが、社長が死んでしまえば俺が今井産業を動かすことになる。それは……俺が居なくちゃこの会社は回って行かないからさ。そうなれば俺の天下だ。だから……もう直ぐ彩とは結婚できるさ!」この様な経緯があった。
★☆
田コンビも大変だ。夫浩一の死の真相にばかりに時間を割く訳にはいかない。実は「セコネ」から連絡が入ったのだ。
「オイ!そう言えば前田邸の奥様で美智子様は、9時~17時までの時間帯は町内で開催されている季節に合わせてお菓子やお茶を味わい、おしゃべりを楽しみながら歌を歌ったり、健康元気度チェックや健康維持のための体操等に参加し始めた。と聞いたが、あそこの家は旦那さんは日中デイサービスに出掛けているので誰もいない筈だが、その隙に誰かが入った様子が「セコネ」の防犯カメラに映し出されていたらしい。ドアを開けるたびに電子音が鳴るのは「ドアチャイムモード」になっているからなのだが、鳴らないようにするには本体の「在宅ボタン」を長押しすればモードが解除されるので鳴らなくなることを知っている誰かが、電子音が鳴るのを警戒して「在宅ボタン」を長押しして入った様子が監視カメに写っていたらしいんだよね」
「寅さんそれは誰だったのですか?」
「それが……フード付きパーカーにマスクだったので全く分からないらしいんだ。勝手に入れるのはやはりあの家の息子誠じゃないか?」
「調べで分かった事ですが、現在45歳の長男は東京から遠く離れた石川県の山間部の町にマンションと車を買い与えられ、まるで世捨て人のように人の目に触れないようにひっそりと生活をしているらしいです」
「仕事も長続きせずに45歳だというのに、あの年で親のすねかじりで親としては商社マンと近所に言っている手前、帰って来て欲しくはないわなあ。見栄っ張りで世間の目を何より気にするこの夫婦は、実態を周りに知られたくないばかりに石川県に追い払ったに違いない」
「家に誰もいない時間帯に侵入した映像が「セコネ」の防犯カメラに写っていたとなれば、この長男誠が、一番怪しいですよね?」
「本当にそうだ。家に帰って来て「奇跡の宝石サファイア」を持ち去ったという事は十分に考えられる」
「幾ら財産家と言ってもこんな息子が居たら、お金がいくらあっても足りませんわ。それで仕送りも大幅に減らしていたらしいです」
「これは長男誠が怪しいな?」
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