第21話 ミュージシャン圭祐の隠し子
「嗚呼……本当だな。凛にそっくりだなあ。ぅううん……これは怪しい。良子調べてくれ」これが1999年の事だ。DNA鑑定で直ぐに判明した。
100%に近い確率で勲の子供ではない事が判明した
勲は凄いショックを受け美月との関係は終わった。凜は2024年現在27歳だ。今現在の消息は不明。
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銀座のクラブVenus(ビーナス)のホステスだった美月は大地主財前家の当主勲の愛人だったが、2人の間に授かった娘凜は財前の娘ではなかった。実は……美月と長きにわたり交際を続けていた男高沢という男との間に授かった娘だった。
だが何と……この高沢は大地主財前家と同じ町内の有名ミュージシャン高沢圭佑の兄だということが分かった。
ここで問題なのだが、いくらエリートサラリーマンと言っても妻も子供もいる妻帯者が、愛人と子供を囲えるほど収入がある訳はない。よほど出世すれば別だが……。
実は……ミュージシャン高沢圭佑との間に出来たのが凜だった。
この美月は実は……芸能界に強い憧れがありアイドルを夢見てタレント事務所に所属していたが、売れなくてミュージシャン高沢圭佑のバックコーラスを務めていた。
だが、それだけでは生活が成り立たないのでクラブのアルバイトを始めたのだ。圭祐にすれば人のツテで断る訳にもいかずコーラスの一員として雇ってやっている。お世話になった業界関係者に頼まれて仕方なく加えてやった。
一方の美月にすれば、ここで辛抱して良い曲に恵まれればスターダムに伸し上がることも夢じゃない。こんな状況化で男女の関係になったとしても、お互いの利害が一致したことで起こってしまった関係だ。
事務所の後押しとコーラスの一員である美月が折に触れて売れる歌手になりたいとせがむので、肉体関係になった美月に情も沸いているので、圭佑は美月の為に曲をプレゼントした。
アップテンポの曲とダンスの振付がカッコ良かったこともあり、デビュー曲は15万枚のヒットとなった。すると今まではたまにしかお声が掛からなかったのに圭祐からのお誘いの頻度が多くなった。、15万枚のヒットという事で圭祐も美月に力を入れてくれるようになったのだ。
でも妊娠するとは意外な事だ。あれだけ注意をしていたにも拘らず何故妊娠してしまったのか?
実は……美月はコーラス時代は、圭祐を手の届かない雲の上のスターと思い尊敬と憧れの眼差しで只々見詰めるだけだったが、夢はどんどん膨れ上がり自分がヒット曲を出すことが出来た事で気持ちが大きくなり、勘違いを起こしてしまった。
15万枚と言えばヒット曲ではあるが、1990年代は200万枚以上のミリオンヒットを飛ばすアーティストが目白押しだった時代に、一介の新人歌手と人気アーティストには大きな開きがあった。だが、美月は勘違いを越してしまった。自分の才能でヒットしたと勘違いして大きな野望を抱くようになってしまった。それはアイドルとアーティストの結婚だ。
それは美月が仕掛けた罠だった。当然圭祐は避妊具を使うのは嫌だ。それを良く知っていた美月は妊娠しない時期だと言って噓をつき、避妊具も付けずに関係を持ったのだった。
美月は甘い夢を見るようになっていた。それは圭祐との結婚だ。
「子供でも出来てしまえば絶対に結婚してくれるに違いない。だって……私だって今はスターだもの」
こうして……凜が誕生した。
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圭祐は既にこの時凛々子と交際中だった。美月は同じ音楽仲間の一員ぐらいにしか思っていない。
そこで弟圭祐は美月との間に授かった娘の事が、凛々子に知れたら大変と思い兄に相談した。
「圭祐大丈夫だよ。美月さんにはパトロンがいて色々CD売り上げや他の事にもお金を注ぎ込んでくれているようだよ。ましてや奥さんとの間には子供はいないようだから、大地主さんの子供という事にすればいいじゃないか?」
こうして……美月の思いとは真逆の大地主勲の子供として成長していったが、妻良子様が疑問に感じ全てがバレてしまった。
兄淳としては美月とは全く関係がないのにとんだとばっちりだったが、それというのも圭祐と美月は仕事では深い繋がりがあるが、全くタイプではない美月とは男女関係は数回しかなかった。
圭祐の兄淳との方がお客様としてしょっちゅう接待で来て下さるので、付き合いは多い。そこで彼氏は淳という事になってしまった。確かに圭祐が家族に知られるのを嫌がって淳がよく凜ちゃんと美月を圭祐の隠れ家に送り届けていた。
圭祐は美月から「クラブに顔を出して売り上げに協力して下さい」と再三頼まれていたが、凛々子を愛しているのでそんな話には乗りたくなかった。
そこで兄淳に頼んだ。、「お客様の接待先を銀座のクラブVenus(ビーナス)にして、指名は美月にして売上の協力をしてやってくれ」
兄淳は圭祐には頭が上がらない。家電製品のノルマをこなせたのも、ひとえに圭祐が自分の関係者に家電製品を紹介してくれたお陰で出世できたのだ。それは圭祐の力あっての事。だから、どんな事も力に乗らざるを得ないのだ。
一目には兄淳と接している場面を多く目撃するので、美月の相手は兄淳と思われても仕方ない。それと圭祐と淳がよく似ていたことも災いして兄淳が凜の父親となってしまった。
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当然凜が、高沢邸にやって来ることはあった。どういう事かというと圭佑とモデルの凛々子が結婚したのは凜が誕生した後の事だ。凛々子は隠し子がいることは重々承知の上で結婚した。ましてや売れないタレントで圭祐のバックコーラスを務める美月が愛人であることは知っていた。
だが、それをとやかく言えば折角結婚にまで漕ぎ着けれた話がパーになるので、涙を吞んで目をつぶっていた。この様な経緯があったので時折凜が遊びに来ても快く受け入れていた。というのも愛人美月は現在はお店のお客様と結婚して幸せを掴んでいた。もうとっくに圭祐とは愛人関係は解消している。
だから凛々子にすれば、子供が1人しか授かることが出来なかったので21歳の一輝は弟にあたるので、一輝の為にも凜は大切な存在だ。兄弟が欲しいとせがまれてもこればっかりはどうにも出来ない。そんな時に凜が訪ねてくれて大歓迎だ。2人は気が合い旅行に出掛けたりもしているので、これで兄弟が欲しいとをせがまれずに済むので一安心だ。
それでは……現在27歳の凜は何をしているのか?
凜は高校時代の同級生と既に結婚していた。凜は音大卒なのだが、大学時代からシンガーソングライターとして、細々と小劇場でコンサートを開いていた。その時に凜のコンサートに顔を出してくれたのが竜也だった。
だが卒業当時は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、世界は戦後最悪の経済危機に直面していた。この新型コロナウイルスの感染拡大による経済危機(コロナショック)の本質は、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションの制限。感染拡大を抑制するために多くの国で感染の抑制を目的とした渡航制限や外出制限等が実施されたことに加え、国内においても人や物の交流が制限された。
実は凜の結婚相手は石川県に「兼六ゴールデン観光㈱」という観光会社を経営しているお坊ちゃまだったが、新型コロナウイルス対策による外出自粛を受けて、全国的に観光客が減り、観光業は大打撃を受けてしまった。
コロナショックでは、感染拡大の抑制のための外出制限や自粛、渡航制限の導入などに伴い、観光や宿泊、航空など、人同士が接点を持つ対面サービスでは前例の無い規模で需要が縮小。
さらに、コロナショックは所得・雇用面にも波及。対面接触を行うサービス業を中心に雇用へも大幅な影響を及ぼしており、大変な事態となった。
凜の彼竜也は観光の打撃で実家の会社が倒産してしまった。
※東京商工リサーチや帝国データバンクの倒産速報、新聞報道にて、2024年3月23日時点で確認されている倒産ホテル・旅館会社は133社となっている。
一方の凜は父圭祐のようなシンガーソングライターになりたくて、音大大学院を卒業して全国を飛び回ろうと思って曲作りに励んでいたが、ステージに立つことは叶わず仕事にも行き詰まり、また竜也と別れようにもお腹に子供が出来たので今更別れる事も出来ずデキチャッタ婚で25歳で結婚の道を選んだ。
父の圭祐は大反対したが、子供がお腹にいることを知って諦めた。一方の竜也だが借金は有ったが、取り返しがつかなくなる前に倒産の選択をしたので大した負債を抱えずに済んだ。
まあ手広く観光業を営んでいた父は隠し財産もあるので安心だが、コロナ禍で就職口が制限されて夫となった竜也は元々父の会社を継ぐつもりだったのでサービス業しか考えていなかったので、大学もサービス経営学部を卒業していた。だが時代はコロナ禍だ。おいそれとは就職口が見つからない現状化。二進も三進もいかない状態に追い込まれてしまった。
こうして……2023年頃にはやっとコロナの悪夢から解放され自由に外泊が出来るようになったが、経済的には決して楽な生活とは言い難い竜也と凜。
一方の凜の母美月だが実は……源氏名が美月で本名は違っていた。
実は…美月は・・・・・?
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