第11話 交通事故


 それにしても、あれだけブランドバックや装飾品の宝庫だった高沢邸にも拘らず、何故高沢邸だけが盗まれなかったのか、不思議な限りだ?


 実は……凛々子夫人は人一倍慎重な性格で、高額な宝石が盗難被害に遭ってはと思い貸金庫 に宝石類を預けていた。更にはブランドバッグを親類にレンタルしていた。ブランドバックをレンタルした理由は、モデルの仕事から遠のき宝の持ち腐れという事で、親戚からどうしても貸してほしいと言われ仕方なく安く貸し出していた。そんな諸々の理由からブランドバッグは窃盗被害に合わなかった。

 

 更には高沢邸には「やすらぎ苑」のデイサービスにお邪魔になっている老人は住んでいない。だが、妻凛々子の母が「やすらぎ苑」のデイサービスにお世話になっていて凛々子はその時間「やすらぎ苑」にいる母のところに、しょっちゅう顔を出している。だから……元モデルといっても現在もモデルの仕事が定期的に入り、尚且つ「やすらぎ苑」にしょっちゅう顔を出しているので、豪邸にはお手伝いさんはいるが、広い家の窓ふきや掃除、更には買い物、食事の準備と大忙しでセキュリテイ万全と言ってもどこかに死角はある。そして家族は日中殆ど誰もいない状態だ。



 次が全国展開するラーメン専門店Sugitayaの社長夫人は、ラーメンの開発に着手するヤリ手副社長だ。子供達は独立しているので当然家にはいない。豪邸はお手伝いさんはいるが、やはりミュージシャン邸と同じ状況だ。そして…家族は日中殆ど誰もいない状態だ。


 最後は4800万の「奇跡の宝石サファイア」が盗まれた前田邸だが、当然子供たちは独立して現在は2人きりだ。夫75歳は元経済産業省の官僚で現在は引退し最近は「やすらぎ苑」のデイサービスにお世話になっている。妻は専業主婦でお手伝いさんはいるにはいたが、夫が「やすらぎ苑」のデイサービスでお世話になるようになってからは、家には奥様1人なので運動の為にも1人分くらいは自分でやる事に決め、お手伝いさんには辞めてもらった。更には町内会の行事で奥様は1日中飛び回っていらっしゃるので、それこそ豪邸には日中誰もいない。


 だから……窃盗被害に遭った家庭は日中家族が出払っていて、狙われやすい環境にあった家庭ばかりだった。


 そして…遂に犯人の目星がついた矢先に事件が起きた


 ★☆



「オイ!Sugitaya社長夫人の宝石類が窃盗被害に遭った日、そして猫騒動があった北村邸に、あの日来客があったと聞いているが、来客の目星がついたぞ!」


「誰だったのですか?寅さん」


「あそこの北村邸は防犯カメラの死角になる場所で、何らかの事故やトラブルに遭っていても気づきにくい邸宅なので、防犯カメラでは確認できなかったが、偶然にも隣りの家の住人がその日の来客を見たというのだ。どういう事かというと……若い女性がカーテンを開けて庭先にある何かを指さして、庭先に出ようとした瞬間一気にカーテンで塞がれてしまったのだと言うんだ。第一あの豪邸はいつもカーテンが引かれてあって、誰がいるのか今まで一度も見た事がなかったので、急に若い綺麗なお嬢さんがカーテンを開けて庭先に駆けだしそうになったので、隣の奥様が珍しい事があるので凝視したのだと言うのだよ。だからあの日の事はしっかりと覚えていると言って、隣の奥様が教えてくれたんだ」


「流石寅さん!単独で回って下さったのですね」


「だって……北村の奥様不機嫌そうに『そんなこと……そんなこと……関係御座いませんでしょう💢』そう言ってやっとの事『主人の妹です』と教えてくれたが、目黒のマンションにお前と行ったけれど、そんな妹なんかいなかったじゃないか、だから……あの後、仕事で事件が起きた高級住宅地の近くに言ったので、その後北村邸の隣の家を訪ねたんだ」


「あの~?その日の来客は誰だったのですか?」


「それが……隣の奥さんが言うには若い高校生くらいの綺麗なお嬢さんだったというんだよ」


「嗚呼……分かりました。北村さんの遠縁と言えば「ギャラクシー・スター」の一員で紅一点の舞ちゃんじゃないんですか?」


「そうなんだ。俺も絶対にそうだと思うんだ。早速舞ちゃんを当たってみよう」


「そうですね。そうすれば犯人が特定できるかも知れませんね寅さん!」

 やっと犯人に辿り着けそうで一安心の2人は、まだ午前中なので授業中にはお邪魔できないので、夕方に学校に顔を出そうと決めた。


 ★☆ 


 何という事だ。寅さんと田宮が学校に直行している最中に事故は起きてしまった。


「舞ちゃんあなた……「ギャラクシー・スター」の一員でしょう。私ギタリストのタケシ君かっこいいと思うのよ紹介してくれない?」


「タケシがタイプなの?詩は昔からマニアックだったから……ふっふっふっふ!でも……良いわよ。じゃ一輝と私とそして…詩とタケシでグループで出掛けれるから大賛成!」


 キキ――――ッキキキッキキキキキキ――――――――――――ッ!

 グシャン\✕\⁄バシン\✕\⁄ドカーン✕\ドーン\✕\●~*バーン\✕\⁄\


「キャ――――――――――――――――ッ!」

 その時、歩道に一台の車が突っ込んできて舞ちゃんに正面衝突して、舞ちゃんは病院に緊急搬送された。何という事だ。その事実を聞かされ大慌ての寅さんと田宮。


「どういう事だよ。本人にあの日の事情を聴こうと準備していた矢先に交通事故とは、偶然にしちゃ出来過ぎた展開だ」


「本当ですよ。これでやっとあの日の状況猫騒動で右往左往している隙に、北村邸にお邪魔していた舞ちゃんが、ラーメン専門店Sugitaya社長夫人の宝石類を盗難したのではと、問い質そうと思った矢先の事故ですからね。一体どうなっているのでしょうね?」


「それこそ舞ちゃんが偶然にもひき殺されかかったという事は、舞ちゃんが犯人じゃなく、その時舞ちゃんの他に誰か別の真犯人が北村邸にいて、盗んだ事実をバラされたくないので、あの日の事を隣に警察が聞き込みにやって来た事実を知っていて、舞ちゃんが生きていてもらっては全てバレてしまうので、口封じの為に舞ちゃんをひき殺そうとした可能性はあるなあ?」


 ★☆


 実は……ミュージシャン夫婦は警察に頼まれていた。あの怪しい北村邸の真実の姿、どんな些細な事でも良いので、北村邸の事実が分かったら話してほしいと懇願されていた。そんな時にミュージシャン夫婦は、一輝の彼女舞ちゃんが、北村邸の奥様と親せきと聞いて息子一輝に頼んだ。


「一輝、我が家の財産がガッポリ盗まれたのよ。そこで北村邸の情報を舞ちゃんに聞き出してほしいのよ。お願い!」そこで一輝は舞ちゃんに北村邸にお邪魔して、北村邸の内情を探ってほしいと懇願した。 


 「ねえ……こんなこと言ったら失礼だけど……舞ちゃん貞子様と親類なんだろう?あの豪邸って人を寄せ付けない雰囲気があるじゃないか?あの豪邸に入ったことある?それから……一体何している家なんだい?」


「私もお邪魔したことがないから分からないのよ。私は貞子さんとは遠縁に当たるけど……只貞子さんは海外を放浪なさって……そこで色んなコネクションが広がったんじゃないの?そこでご主人様と知り合ったのかも?只ご主人の北村さんは聴覚障害があるって聞いた事があるけど……何かチョッと親戚を遠ざけているわね。秘密主義っていうの?」


「そうか……舞ちゃんも知らないんだね?そこで頼みなんだけど……北村邸の貞子様と遠縁なのだから一度お邪魔して内情教えてほしいんだ。頼むよ!」


「ぅうううん💢💢💢イヤよ!そんな親戚を裏切るような真似」


「……そこをなんとか!!!」

 こうして舞は渋々北村邸に向かった。だが、貞子さまの態度はいくら親戚といっても到底親戚らしからぬ態度だった。


「嗚呼……舞ちゃん……わたくしね……これから用があるの。ですから……お帰りになって……」


「あの……うちの母が渡したいモノがあるというので……チョット玄関までお顔出して頂けませんか?」


 貞子様が玄関に顔を出されドアを開けてくれた。そこで有名店の高級和菓子を貞子様に手渡した。


「ありがとうございます!わたくしこの和菓子大好きですの」漫勉の笑みの貞子様。


「あっ!有名絵画が応接室に飾ってありますね!あれは確か……ゴッホのヒマワリでは……チョット見せて下さい」そういうとトコトコ家の中に図々しく入り込んだ舞ちゃん。



 こうして……やっと光が見えた矢先にあの日北村邸にお邪魔していた舞ちゃんが、多分故意にだとは思うが、車に引かれて意識不明の重体となってしまった。この事件は一筋縄ではいかない。


 ※警察の私服捜査員は必ず2人で行動するとは限らない。単独行動は珍しくない。予算・人員に限りがあり、「捜査経済」の見地から、刑法犯捜査も事案の重要性に応じた違いがある。刑法犯の大半は、空き巣・車上狙い・自転車盗などの単純な盗犯なので、一般家庭への捜査員の聞き込みはほとんどそれら関係になり、盗犯捜査のほとんどは所轄署が少人数の中で行うので、まず単独で回り、気になる証言が出たら複数人数で重ねて聴くことは普通にある。 





 

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