第10話 猫騒動
そう言えば「田コンビ」寅さんと田宮刑事が話していたことが引っかかる。
「それにしても……可笑しいですよね?大方は宝石やブランドバックなどが盗まれているのに、ましてやミュージシャンの妻は元モデルで宝石やブランドバックは窃盗被害に遭われたご婦人方以上に多く有ったにも拘らずミュージシャン邸だけは現金やキャッシュカード更には金のバーだけだとは納得がいかないですね……ぅうううん?」
「更にはセレブ御用達の老人ホーム「やすらぎ苑」に入居なさっているご老人がいる家庭ばかりが被害に遭っているというのだが、その話はどうなんだ?」
「はあ!そうですが、でもミュージシャン邸にはご老人はいない筈ですが?」
確かにミュージシャン夫婦邸だけは現金とキャッシュカード、更には金のバーだけだとは納得がいかない。犯人が別という事なのか?それから……分かって来た事だが、ミュージシャン邸にはご老人はいないが、実は……妻凛々子の母が「やすらぎ苑」に入居していた。
「寅さんどうしても納得がいかないのですが、ミュージシャン夫婦の家の装飾品やバッグ類が盗まれないのはどうしてなんでしょうか、あの時ミュージシャン邸に伺った日にブランドバックや装飾品なども盗まれていないか、チェックして来たじゃないですか、すると全然盗まれていませんでしたよね?」
「本当だよなあ。何故あれだけブランドバックや装飾品の宝庫の高沢邸だけが盗まれなかったのか、不思議な限りだ?あっ!それでも……調べで妻凛々子の母が「やすらぎ苑」に入居していたことが分かったなあ」
「それも現金やキャッシュカード金のバーは分かり難い場所にあったのに、よく盗み出せたものですよね。同じ時期に窃盗事件が起きたので犯人は同じと思って狙いを定めていましたが、犯人が違うのでしょうか?」
「本当に不思議な話だ。どこの家庭もセキュリテイ万全だったのに盗まれてしまったとは、キツネにつままれたような事件だ?」
こうして「田コンビ」は次の事件現場となった全国展開するラーメン専門店Sugitayaの社長夫人の邸宅に足を進めた。
★☆
それにしても……あのSugitaya社長夫人の家庭も宝石類を万全な場所に保管していたにも拘らず、根こそぎ盗まれてしまったとは、犯人は余程家の事情に詳しい者と思われるのだが、犯人は一体誰なのか?
「本当に東京屈指の高級住宅街での窃盗事件ですが、最初の窃盗事件は、大物ミュージシャン邸の現金やキャッシュカード更に1本1㎏の金のバーが3本、そして次が全国展開するラーメン専門店Sugitayaの社長夫人の宝石類が根こそぎ盗まれたのだが、犯人は家の事情に詳しい者と思われるのですが……そして…4800万の「奇跡の宝石サファイア」が盗まれた事件ですが、全く犯人が見えてきませんね?」
「万全のセキュリティーを、かいくぐって犯行を起こせるという事は、絶対に身近の家族の犯行か、親しい間柄の犯行だと思うが、全く見えてこないんだよなあ?」
こうして車は一路高級住宅地港区元麻布の、全国展開するラーメン専門店Sugitayaの社長邸の前に到着した。
”ピンポンピンポン“ ”ピンポンピンポン” ”ピンポンピンポン“ ”ピンポンピンポン”
「あっ!はーい少々お待ちください」
中年のお手伝さんいらしき女性が玄関先に現れた。
「警察の者だが、事件の事で聞きたいことが、こちらの奥様はお見えですか?」
「ハイ!いらっしゃいます。どうぞお上がり下さい」
応接室に通された「田コンビ」2人だが、こちらもやはり目を見張る豪邸には違いないのだが、奥様がラーメンの開発に全面的に力を注いでいる会社とあって、家の内部はごく普通である。要は奥様あっての会社なので、内装にまで凝っている暇がないという事だ。
暫く待っているとしっかりした顔つきの、60代前半くらいのご婦人が応接室現れた。
「お待たせ致しました」
「嗚呼……奥様の宝石類が被害に遭ったのですね?あの日の状況を詳しく教えて頂けますか?」
「嗚呼……あの日は私は名古屋の各店舗の視察に出向いておりまして……」
「という事は事件の翌日家に帰っていらっしゃったという事ですか?」
「そうです。主人が社長ですが、私もこの店舗のラーメンの多くを手掛けてまいりましたので……」
「誰か犯人に心当たりがあるとか……そんな事は御座いませんか?」
「全く御座いません。嗚呼……お手伝いの梅子に聞いてみます。うめ……うめ……」
「ハイ!奥様……お茶とクッキーお持ちしました」
「あの日の事を詳しく説明して頂けませんか?」
「あの日の事ですよね……実は……あの日の前日奥様が名古屋に出張中の夕方に裏のお家の北村さんが、家にお見えになったのでございます。その理由は家で飼っていた猫が北村さんの家の庭に侵入したので、心配して連絡して下さったのです。その時に【猫探偵】に頼むほどの事もなかったので、北村さんの奥様もお手伝い下さいましてやっとのこと捕まえたのでございます。それこそ北村さんの家の庭を駆けづり回るので苦労しましたが、やっとの事捕まえることが出来ました。その時に北村さんのお宅に来客があった事だけは分かりました。それは北村さんの奥様がお客様に対して『チョッとお待ちになってね』と言ったら家の中から『は~い』と返事があったからです」
「って事は猫を捕まえるために杉田さんの家は施錠がして無かったって事ですよね?」
「そうです。猫を捕まえて家に駆け込まないと、すばしこい猫がまた逃げたら大変ですから、施錠なんか当然して無かったと思います」
「ひょっとして猫を捕まえるために、杉田さんとお手伝いさんと親切にお手伝い下さった北村さんが右往左往している間に、誰かが侵入した可能性は考えられますね?それでは……北村邸に来ていた来客は誰だったか、分かりますか?」
「それはチョッと分かりません?」
「嗚呼……分かりました。それでは……我々はこれで失礼します」こうして慌てて杉田邸を出た寅さん。
「待ってくださいよ~」慌てて寅さんを追い掛ける田宮。
「寅さんどうしたんですか?急に慌てて……」
「お前……鈍いなあ💢気づけよ!北村邸に来ていた来客は誰だったか、調べる必要があるだろうが!全国展開するラーメン専門店Sugitayaは大企業だ。そんな超お金持ちの家が空き巣に入って下さいと言わんばかりに、鍵がかかっていない事が分かっているのは来客ぐらいだろうが」
「嗚呼……そうですね。さすが寅さん!」
「ようし北村邸に直行だ!」
★☆
”ピンポンピンポン“ ”ピンポンピンポン” ”ピンポンピンポン“ ”ピンポンピンポン”
「は~い」すると中から奥様が玄関先に出て来た。
「あのー警察の者だが、先月の19日の夕方裏の杉田さんの猫がお宅の庭に侵入しましたね」
「ハイ!そうです。それがどうかしましたか?」
「チョッと話が長くなりますので、家の中に入れてもらえませんか?」田宮が言った。
「あの~申し訳ございませんが?猫は捕まって丸くおさまりましたので、これでご無礼します」
「あっ!チョットお待ちを」そう言うと寅さんがドアに足をヒョイと挟んでドアが閉まらないようにした。
「あの~?その日お宅に来客があったようですが、誰だったのですか?」
「そんなこと……そんなこと……関係御座いませんでしょう💢」
「奥さんハッキリとおっしゃってください」
「妹です」
「妹さんはどちらにお住まいですか?」
「目黒のマンションに住んでおります」
実は……本当は違う人物が来訪していた。そこには正直に話せない理由があった。
「分かりました。失礼します」
「全くあの奥様家に入れて欲しいと遠回しに言っているにも拘らず、玄関にも入れてくれない徹底した秘密主義ですね?な~んか怪しいですね?マンションも教えてもらいましたが……怪しいものです」
「ともかく北村さんの奥様の周りの人物を徹底的に調べないとな?」
北村邸にはどんな秘密が隠されているのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます