第9話 一輝と舞ちゃん



 それでは、最初の事件 東京屈指の高級住宅街での窃盗事件だが、大物ミュージシャン邸の現金やキャッシュカード金のバーが盗まれた事件だが、被害総額はどのくらいなのだろうか?


「オイ!大物ミュージシャン「Mr. Tigers」のリーダー高沢圭佑の被害総額はどのくらいか分かったか?」


「あっハイ!現金1000万円と○○銀行ATMからキャッシュカードで100万円だけですね、何日かに分けて引き出すと人目につき易いので、警戒して1回だけしか引き出さなかったのでしょう。警戒が薄れたころにキャッシュカードで引き出す恐れがあるので、カードの利用停止手続きをしたので大丈夫ですが、あっ!それとK24の1本1㎏の金のバーが3本です。1㎏の金のバーの相場価格が1500万円ですので3本で4500万円それと現金1000万円キャッシュカードで引き出した100万円の被害合計5600万円です。金相場が上昇している理由は、2001年に起こった同時多発テロや2008年に起こったリーマン・ショック、2020年に発生した新型コロナウイルス、2022年に入ってからのウクライナショックなどの理由から株式が下がり、社会的信用への不安が増え、資産として信用が高い金の購入が増えて、金相場が上昇したと考えられます」


「それでも……1000万円もの現金を、何故家で保管していたのだろうか?」


「何でも……お手伝いさんの話では、ミュージシャン夫婦は顔が知られているので、銀行やATMに出向く必要もなくなり、ATMの利用手数料も節約できる。まあお金持ちですからATMの利用手数料はどうでも良いのですが、 何よりも、なにがしかの緊急事態が起きて簡単に預金の引き出しができなくなった場合に、手元にまとまった額の現金があれば、緊急の支払いができる安心感があるので厳重にセキュリティー対策を行い家に保管していたようです」


「それにしてもミュージシャン夫婦も相当儲かるんだな」


「まあ極々一握りのミュージシャンに限りますが、ミュージシャンの世界は厳しいらしく年収10万円未満のミュージシャンが殆どで、そのうち300万円程度の年収のミュージシャンが、100人に1人もいないのが現状らしいです」


「世の中そんなに甘くないな?」


 ★☆


 それでは息子の一輝も知らない現金やキャッシュカードの仕舞ってある場所は、この豪邸のどこにあるのか?


 実は……地下倉庫に電気ソケット金庫があり、息子一輝がバンド仲間と練習する隣りの場所にあるのだ。誰がそんなソケットが金庫などと思いつこうか、誰1人知る由もなかった。


 それでは……巧妙に隠してあった金庫から誰が盗んだのか?


 そう言えば夜奥様の凛々子が帰宅した時に、2階の窓が開いていたのは実に怪しい。

「本当にうちの一輝のお友達は業界でも指折りのお金持ちのお坊ちゃまばかりです。疑うのもいい加減にしてください💢💢💢只私が夜帰って来た時に2階の窓が開いておりました。これには紀美子もちゃんと鍵をかけておいたのにと不思議がっていました。そして……息子もキャッシュカードの仕舞ってある場所は知らない筈ですから、息子たちの筈は絶対にあり得ません。ですから……全く犯人が分かりません!」妻の凛々子もキツネにつままれた思いだ。


 

 実は……窃盗事件が起きた夜こんな事があった。酒とカラオケですっかり羽目を外したバンド仲間の「ギャラクシー・スター」連中だったが、酔いつぶれて殆どがソファーで仮眠を取っていた時だ。一番若い18歳でボーカル担当の舞ちゃんは、お父様が三友UFJ銀行の支店長さんなのだが、実は一輝とこっそり付き合っていた。その事は「ギャラクシー・スター」のメンバーは誰も知らないが、「ギャラクシー・スター」メンバーの中にも紅一点の舞ちゃんに好意を寄せる者は何人もいた。


 それはそうだろう。若くて最強に可愛い舞ちゃんは「ギャラクシー・スター」にはなくてはならないスターになる為に生まれてきたような可愛い子。


 2人は皆が寝静まったことを良い事に、2階の一輝の部屋で愛を確かめ合っていた。だが、バンド仲間の1人が舞ちゃんに好意を持っていたのだが、目が覚めたらいないので必死になって家の中を探し回った。


「舞ちゃんどこに行ったんだい。こんな夜に外出は危険だよ!」


 皆のマドンナ舞ちゃんに手を出したと分かったら仲間割れの元だ。これは大変。


「舞ちゃんあそこの窓またげるくらい低いから、暫く外に出てベランダにいてくれない?」このような事情で窓が開いたままになって閉め忘れていた。


 

 ★☆

 それではブルジョアご婦人方の1人と、親戚関係にある一輝の友達は誰だったのか?


 実は……18歳のボーカル担当の舞ちゃんだった。そしてその親戚というのが、あの秘密主義のご家族で桁違いの金持ちの何とも怪しい家族で、最近夫が亡くなり1人で豪邸に住む貞子様だった。


 一体あの豪邸北村邸の内部はどのようになっているのか?


 実は……舞ちゃんと一輝は恋人同士だ。一輝は母が父にこぼしている話を知らぬ間に聞かされて一輝自身も不気味に思ったが、あの北村邸の内部に興味津々だった。


 そんな時に舞ちゃんと貞子様が親戚関係と知って聞いてみた事があった。


「ねえ……こんなこと言ったら失礼だけど……舞ちゃん貞子様と親類なんだろう?あの豪邸って人を寄せ付けない雰囲気があるじゃないか?あの豪邸に入ったことある?それから……一体何している家なんだい?」


「私もお邪魔したことがないから分からないのよ。私は貞子さんとは遠縁に当たるけど……只貞子さんは海外を放浪なさって……そこで色んなコネクションが広がったんじゃないの?只ご主人の北村さんは聴覚障害があるって聞いた事があるけど……何かチョッと親戚を遠ざけているわね。秘密主義っていうの?」


「そうか……舞ちゃんも知らないんだね?」


 海外を放浪の末知り合った北村の本当の姿は何者なのだろうか?


 只若者があの豪邸に吸い寄せられるように入っていくが、二度と姿を見受けないのは実に不思議な話だ。






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