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次の日。昨日は魔術実践会だったため、今日は振り返え休みである。だから、ドレスのデザインを考えるのに良い時間なのだが、、、。

「ねね、ガーネット、今日さ街に遊びに行かない?」

今日も朝から元気なリリーが、食堂で朝食を食べながらガーネットに提案した。今日の朝食は、コーンのポタージュ、スクランブルエッグ、食パンが二切れとイチゴジャムだった。このコーンのポタージュが特にガーネットのお気に入りで、今日みたいに朝食で出た時はとても喜ぶ。気分がいい中、ちょうどガーネットはパンを食べ終えた。

「街に?良いね。行こう」

街に遊びに行くだなんて、いつぶりだろう。街には魔術師の関係で度々訪れるが、時間がないので遊ぶことはない。ましてや、借り出されるのは早朝だったり、夜だったりするので、なおさら遊べない。だったら休日に行けば良いのでは?と思うかもしれないが、ここ最近、魔術実践会などいろいろなことが重なって、まともな休日が取れていなかったのだ。もし、休みが取れたら取りたかったし、街にも行きたかった。だから、リリーの提案にガーネットはひとつ返事で承諾した。のだが、心がドレスのデザインは?、と囁く。いや、でも、街は華やかだから、何かと参考になるかもしれない。服屋さんがあったら、立ち寄ってみても良さそうだ。自分に似合うドレスの形も分かるかもしれないし。なんという都合のいい解釈だろうと自分で思ってしまったが、見てみぬふりをすることにした。久しぶりの街が楽しみだなぁと思いつつ、最後のポタージュを食べ終えた。


ところが。

「えぇ、、、」

「なにこれ、、、ドン引き」

念願の街に着いたガーネットとリリーだったが、着いた途端に口から出たのは幻滅の言葉だった。

「やばくない?これ、」

「うん、、、やばい」

明らかにやばいのが見て取れる。一体何がやばいのか。というと、なんと闇が街のそこらじゅうに拡散していたのだ。しかも、なんか無駄に強そうである。闇はゆらゆらと横に揺れているだけで、今のところ人間に手を出すことはしなさそうだ。

「どうする?どうやって退治しよう」

もちろん、闇は多くなればなるほど呑み込まれる人間は多くなる。ちなみに、闇同士自ら合体できるので、大きくも強くもなれる。分裂もできるので、闇が拡散することも可能だ。できれば、そうなる前に退治したい。

「今は人が多いし、、、。やっぱり、あの手、使う?」

「そうだね」

ということで、ガーネットとリリーは自分たちの首にかけているペンダントを揺らしはじめた。すると、すぐにペンダントから淡いもやが出てきた。もやは一直線に闇の方へ届く。これは何をしているのかというと、このもやによって闇を誘き寄せているのだ。つまり、あえて自分たちが囮になる、ということである。普通ならその場で対処するのが手っ取り早いのだが、今はそれをやるとまずい。いや、魔術師の卵なんだから、胸を張って退治すれば良いではないか、と思うかもしれないがそう簡単にはいかない。なぜなら、一般人は闇を見ることができないからだ。いくら闇を倒すためといっても、手を動かしたり言葉を唱えたりしていると、あの人たちは何をしているのだろう、変な人、とガーネットたちが変質者扱いをされてしまう。ガーネットたちが制服を着ていたり、魔術師である証がないとどうにも変質者扱いになり、信じてもらえないのだ。ちゃんと経験済みである。もし、どれかひとつ魔術師であることを証明できるものがあれば、速やかにその場で退治できるのだが、、、。このペンダントでは証明できないのか、と言われてもそれは無理である。なぜなら、魔術師だからといって必ずしもペンダントを身につけているとは限らないからだ。ペンダントではなく、リングを身につけている魔術師も中にはいる。それに、このペンダントやリングは一見どこにでもあるようなものにしか見えない。だから、これが術を発動できるペンダントなんです、と言っても術は一般人には見えないため、これでは証明ができないのだ。なんとも不便である。まぁそういうわけで、自分たちが囮になり誰もいない場所へ闇を誘き寄せる方法を選んだ、ということである。闇はその作戦にまんまと乗せられたのか、ガーネットとリリーの方にゆらゆらと揺れて近寄ってきた。

「よし、行こう」

闇がガーネットたちを襲ってくるのを見計らい、開けた場所まで走ることにした。首にかけたペンダントは揺らしたままで。


誰もいなく、あまり見つからないような広場に着いたガーネットとリリーは、しっかりと闇が付いてきているのを確認する。黒い塊がもやもやとこちらに来るので、誘導作戦は成功したようである。

「リリー、せっかくの休みを奪われたから、私怒ってる。コテンパンにやっちゃお。とりあえず、守りをお願い」

「りょーかい!」

リリーはガーネットの背後に周り、魔術を発動させた。

「ベール」

リリーが術を唱え、両手を広げて前に伸ばす。ベールとは、闇からの攻撃を受けないように自分たちを包み込む、守りの術だ。ベールは透明ながらも、そんじょそこらの闇の攻撃なんかでは破れないほど強力であるため、こちらは一切ダメージを受けない。リリーが守ってくれている間に、ガーネットはささっと闇を倒していく。術を発動しなくても倒せるくらいの闇だから、ありがたい。数分もすれば、先程までうやうやといた闇は全て消えていた。

「ふぅ〜良かった」

これで一件落着と息をついたガーネットとリリーだったが、実はそんなこともないと知る。街の中心部に戻ると、なんと倒したばかりの闇がまたもや拡散していたのだ。先程、全部の闇を倒したはずなのに。一体いつもどこから湧いて出てくるのだろうか。それも、ガーネットたちが倒した闇よりも強い。

「、、、」

「、、、」

(さっき倒したばかりなんだけど)

ガーネットとリリーは放心状態になる。しかし、それはほんの一瞬に終わってしまった。魔術師である証を持った魔術師たちに、応援に来いと言われてしまったのだ。ちなみに、魔術師たちは魔術師の卵が誰なのか分かるらしい。なにやら、魔術師は普通とは違う気配を纏っていて、それを感じ取ることができるらしいのだ。それはどんな感じなのか聞いたことがあるのだが、目と同じ色のオーラが視えるらしい。力が強くなるにつれ、視えるようになるのだとか。もちろん、ガーネットにはまだ視えない。

(なんで、さっきはいなかったの?)

ちょっとした不満を持ちながらも、魔術師たちがいて良かったと思う。そうでなければ、自分たちがクタクタになってしまうから。

「守りに入ります!ベール!」

リリーは魔術師たちにそう言ってから術を発動して走りさっていった。

(私も行かないと)

ちょっと足取りが重いながらも、街を守るために、右手で術を発動した。

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