第四話「王様の正体は信じられないんだからね!!」

巨城への道中は思ったより整備されていて、道がちゃんとある。

塗装された灰色のコンクリートの道が巨城へと続いている。お洒落な装飾もされている。

こう見ると中国の世界遺産シルクロードに似てるかも知れないわね……

私は学校の授業で習ったシルクロードを思い出していた。

というか、バカ広い草原を見た後だから思わず森林の中を掻き分けていくのかと思ったわ……

案外この国、発展してるのね。


「アリス!」

私はそのラビーの声を聞いて思わずハッとする。

「なんかぼっ〜としてるよね。そんなんじゃ転んじゃうよ?コンクリートは痛いよ〜」

シルクロード似の道中を私は茫然自失としながら走っていたみたい。

我ながら抜けてると思う。だってしょうがないでしょ!こんな世界に来たら誰だっておかしくなるわよ。

私は少し機嫌を悪くしてラビーに言う。

「もう!そういえばさっきの話の続き!なんで"光子フォトアラー"にならなきゃいけないのよ!」

「忘れたの?力を得るためだよ」

「ち、力って具体的にどんな物なのよ?」

ラビーは私の目の前をピョンピョンと飛びながら走っている。

私はその後ろを話しながら追いかける。

「そうだな〜、チャシャを例に挙げるなら……あれは"時間操作"と呼ばれるスキルさ。つまり、力とは言っても筋肉ムキムキになるとかそう言う類の力ではなくて……あくまでスキルを授かるって認識だよ」

「ふ、ふーん…‥なんとなく分かったような気がする」

ドラショに例えるなら名剣ファフニールを手に入れて攻撃アップ!とかじゃなくてマホカンタで相手の攻撃を跳ね返すみたいな戦い方の事かな?

イマイチよく分からないけど私はそういう認識で抑えることにした。

「まぁ、王様に会えばすぐ分かるよ。あ、でも"光子フォトアラー"になる理由は力を得るためだけじゃないんだ」

「そ、そうなの!ってかそれ絶対そっちが大事でしょ!」

そう言った次の瞬間ラビーはすぐに答える。

「うんそうだね。っていうかもう城に着いたよ。

とりあえずこの話は一旦ここでお預け……!」

「もう肝心なところで終わらすんだから!」


そのセリフの後、私はふとラビーの見ている方向。つまり城の方を見る。

「うわぁ、近づくと意外と大きいのね……」

高さ三十メートルはあるその建物の扉は大きかった。

何やら天使の羽の紋章が大々的に描かれていてどこか神々しい。

大扉の両端に槍を持った熊のモンスターがいる事にふと気付いた。

鎧のマスクが被さっていて顔は上半分が見えないけど両手の鎧から飛び出た部分から茶色い毛が出てきていておおよそ熊だと認識できた。

ラビーはその熊の兵士に話しかける。

「"光子フォトアラー"を無事に見つけてきたよ!

扉を開けて欲しい。なるべく急いでね!時間があと十五分前後しかない」

相変わらずこの兎はどこかムカつく。

言い方とか……

そう思ってラビーを後ろから睨み付ける。

勘付いたのかラビーは反応してくる。

「ちょっと僕に妙な気配出すのやめてよアリスぅ。

血気盛んだな。アリスインワンダーランドって本に出てくるアリスもやっぱそうなの?」

「はいNGワードです」

私はかんっぜんに今のでキレた。

こうやって比較されるから私はこの名前が嫌なのよ!

しかもよりによってラビーに揶揄われたのが気に食わない!!

「もういい!帰る!」

そう言って反対方向に猛ダッシュする事に決めた。

「ちょっとアリス!どこ行くのさ!悪かったって!!」

コンクリートの上を走るとコツコツと足音が立つのが分かる。

逃げ切ってやる!

その時だった。

目の前に巨大な柵が落ちてくるのが見えた。

サッと私は足を引きその落ちてきた巨大な柵の前で止まる。

「な、何よこれ……」

「もう!君が逃げるから仕方なくクマナイトのスキルを使ったんだよ……」

こんな事が出来るの……?私は目の前の柵を見ながら思わず感想が出る。

「こんなの反則じゃない……」

「そう!君もこのような事が出来るようになるかもしれない。いやこれ以上の結果だって夢じゃない。そうすればあの先生……下手したら現実のマフィアって奴らにも負けないかもね!」

「マ、マフィア!?怖い事言わないでよ。でも確かにこの力があれば……」

私は段々とワクワクしてきた。

そっか……早く“光子フォトアラー"になってドン……いや全てを変えよう!

現実を変えよう!!

「行くわよラビー!!」

私はモチベーションがいきなり上がるのを感じた。

ラビーの背中を手で掴んでそのまま城の扉まで帰ってくる。

城の扉まで来ると既にさっきのクマナイトが居て、私に謝ってきた。

一緒に帰ってきてたのかしら……?気付かなかったわ……

「先程は少し乱暴なやり方をしてしまい……すみませんでしたアリス様」

「ふん……!いいのよ。そのくらい“光子フォトアラー"である私が許してあげるわ!」

んー気分がいいわ!!

するとふと手から苦しそうな声が聞こえて我に帰る。

「ちょっと苦しいよアリス〜……」

「あ、ごめんごめん!我を忘れてた……」

「もう〜……それじゃ行こうか。扉も開けてくれたみたいだしね」

ふと扉を見ると確かに開いていた。クマナイトが開けてくれたのね。

「仕事が早くて助かるわ〜」

「なんか変なテンションになってない?アリス」

「そうかしらぁ……?」

「ま、まぁいいけど……」


そのラビーの指摘は置いといて私は扉の向こうへと足を運ぶ。

城の中は大きな白い柱が何本も並んでいて、広い空間が広がる。

壁際にはクマナイトが見たところ五十体くらいは並んでいる。

ステンドグラスが上部の壁際に沢山設置されていて鮮やかな光が差し込む。

そしてその空間の中央の奥。

そこには豪華な装飾のされた大きな椅子があった。

その椅子に座っていたのは……

「やぁアリス。僕が王様だ。初めまして……じゃないね」

「…………」

私は絶句した。

そこに居たのは見覚えのある人物だったからだ。

「そんなに落ち込まないでもいいのに」

「なんであんたがここにいるのよ!コーン!」

城の中央まで私は走り、そう言い放つ。

コーンの座ってる椅子との距離は十メートルほど。

まさか……こいつが王様だなんて……

そうあの悪ノリ三人組の一人。コーン・ザブブレザーだった。ガリガリ体型でドンと並ぶと更にそれが際立つのが特徴で、囚人服みたいなコーデの服をよく着ている。今もそう。

どうして……?王様って現実世界の人なの?頭が混乱するわ……

コーンは紺色の髪の上に乗った王冠の位置を直しながら言う。


「ここに来た理由は分かっているよ。スキル……欲しいんだろ?でもなぁ……君に渡すのはちょっと嫌だな。僕のプライドが許さない」

「ふん……!分かってるわよどうせそう言うと思ってたわ」

その私の言葉の後、割り込んできたのはラビー。

「ちょっと待って!!ストップ!!」

その声が城の空間に響く。

「まさかのし、知り合い!?どうなってるのさ」

「それはこっちのセリフよ!」

私はラビーの声に反応する。

その次にコーンは続ける。

「ねぇアリス。ワンダーランドの王様である僕に勝てる自信はある?無理だよね?くくく……」

「……」

そんな……

でも……よく考えて……別に勝たなくてもいいじゃない!

説得……そう説得するわ!

今の状況を聞けばこいつだって居ても立っても居られないはず!

「コーンよく聞きなさい!」

「なぁんだい?アリスちゃぁん」

「うざっ!じゃなくて……今ね現実世界のドンは1-Aクラスの先生と喧嘩してるの!私を庇ってね」

私がそう言った後、コーンの表情は疑惑の表情になった。

「……どうしてそうなった」

コーンは呆気に取られたように私に聞く。

「私を玩具オモチャだと言ってその玩具オモチャを先生に取られたくないって……それが理由で先生を飛び蹴りしたのよドンの奴。その反動で怒り狂った先生が今ドンを殴りつけるところなのよ……!スペルキーが時を止めてるけどね。それも、もうすぐ解けてしまうけど」

その私の説明の後、ラビーが続けて言った。

「そして、時間はもうあと五分しかないです。王様、どうかアリスを"光子フォトアラー"にしてやって下さい」

そのラビーと私の発言にコーンは苦渋の顔をして言う。

「くっ…‥面倒な事になったな。分身体とはもう入れ替われない……」

「分身体……?何のこと!?早くしないとドンは死ぬかもしれないわあの先生の殺意はマジよ……」

私はなるべく状況が大変な事をコーンに伝える。

「こっちの話さ。く……"光子フォトアラー"は今ワンダーランドに居ないだろうし……居たとしても連絡には時間が掛かる。ええい……!しょーがない。アリス僕のそばに……こっちに来い」

コーンは嫌々な感じで私にそう言う。

私はその言葉通りコーンのそばに歩き出す。

そして椅子の前まで行くとコーンは何やら呪文を唱え始める。


〜第五話に続く〜

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アリスインワンダーストーム 中村サンタロー @nakamuraeeeee

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