第二話「今日は何かとついてない日なんだからね!!」
「……っ!!」
ドンの痛む声が聞こえる。
そしてレッドの怒った顔が見えた。
それは幾度の戦いを経験した戦士のようなオーラを放ってもいた。
え……?レッドってこんなに……強かったの!?
「アリスちゃんあるところにレッドあり。レッドは血を意味するのよ……!」
そう言い放つレッドにドンはあまりの恐怖にバスから飛び出した。
「ごめんなさいぃぃぃぃ!!おかあさぁぁぁぁぁん!!」
光の速さで走り去っていくドンを見て私は苦笑しながら言い放つ。
「まるでギャグアニメね……」
そしてレッドは「ふぅ〜」と声を出し続ける。
「格闘チャンピオンは伊達じゃないからね!」
か、格闘チャンピオン……?
レッド……あんた一体何者よ。
そうしてその後バスの中でレッドは英雄扱いされていた。
「あのドンを打ち倒すなんてすごい……!」
とか
「あいつ嫌なやつで嫌いだったからスカッとしたよ」
など褒められるレッド。
私とは違って強くていいな……
私もレッドみたいに強くなればもう”パチモンアリス”なんて言われないのに。
そう思い窓の外を眺める。
レッドが完全に主役の座に立っていたので私は手も足も出ずチャシャの隣の席に座っていた。
(僕と……契約し……だ)
「んん?」
思わず声を上げる。
またこれ……
そんな私を変に思ったのかチャシャが話し出す。
「どうしたアリス。なんかあったか?」
「べ、別に何でもないわよ……!?ただ……そう……お腹すいたな〜みたいな?」
またもや適当な言い訳を思いついた。
それを聞いてチャシャは何かをバッグから取り出す。
「ほら、これでも食え」
それは千味ビーンズだった。
「何でそんなもの持ってきてるのよ……!」
「いや、USBにこの前行ったからそれで……」
こいつ……いつの間にそんなとこに行ったの!?
ま、まぁいいわ。
そう思い、私は適当につまんで口に入れる。
「……!!」
思わず吐きそうになった。
これはハズレのアレね。
クソ味だ……
今日はなんだか……とことんついてないわね。
そのまま気分を悪くしながら私は気づいたら眠っていたみたいだ。
「アリス!!!」
有名小説の主人公の名前が私の耳に響く。
私はこの名前が大っ嫌い。
だって私の人生はずっとこの名前との戦いだったから。事あるごとに不思議の国のアリスと比較されるのだから。
「起きろ!!ついたぞ!!!」
「ん〜」
私はムニャムニャ言いながら寝ぼけた目を擦る。
するとレッドの声が聞こえ始めた。
「寝ぼけた顔のアリスちゃんも最高ぅ!!!」
なんて馬鹿声なの……近所迷惑考えてよね!!!
レッドの狂気で私は目を完全に覚ます。
ふと周りを見渡すと外の景色が目に入る。
白くて大きな物体……いやビルだ。
そうここはメトロポリタソミュージアム。
校外学習の目的地よ!!!
「やっと起きたかこのゲームばか」
チャシャの呆れた声が聞こえて私はそういえば夜通しゲームしてたことを思い出す。
そういえば昨日はドラショしてたわ……夜のゲームってなんであんなに楽しいのかしら……
あ、ドラショっていうのは国民的RPG"ドラゴンミッション"の略よ。
知っているとは思うけどね!
そんなことを思っていると先生の声が聞こえる。
「さぁついたぞ、また順番に降りてもらう」
「え〜めんどくさ……」
私とチャシャ二人分の小声が小さく響いた。
「アリスちゃんと待つ時間なら何でも最高!!」
一人だけ常人では辿り着けない境地にいるレッド。
流石にここまでいくと怖いわ……
そんなこんなで順番待ちになり、ぼーっと待っていた。スマホとかいじるとあのハゲ先生になんか言われるからね!!ま、まぁ実際にはハゲではないけど確実に進行してると思う……
そして隣のチャシャが呼ばれて次は私の番って時だった。
(君のな……リス……!!)
またもや鈴のような声。もう……!今はやめt……
「おい、何しているんだ!?早く降りろ」
先生の怒った声が耳に響く。
ほら、言わんこっちゃない……
久しぶりに先生に怒られて気分を悪くしながらバスから降りる。
「アリスどうした?」
チャシャの心配した声が聞こえる。
本当なら変な声が聞こえるとか言いたいけど……
「もしかして神の声が聞こえるとか……?って厨二病じゃあるまいし……」
そう苦笑しながらチャシャは言う。
予想外の反応に動揺する私。
「い、いや……ははは、そうね。そんなことあるはずないわ!」
チャシャは挙動が少し変だなみたいな顔を私に向けてきた。
もしかして……さっきのは神様の声……?
アゴに手をあてシンキングタイムに入ろうとした時だった。
「よくもドンをやってくれたな……」
げっ……
見るとそれはあの悪ノリ三人組の一人。ヴァン・チュニジア。
どうやらドンの敵討ちに来たみたい……
もう……!何でこうなるの……
私は絶望の顔になる。チラリとチャシャの方を見ると何だか余裕そうに見える。
こんな時に何カッコつけてんのよ!
「許さねぇぇぇぇぇ!!!」
助走をつけて走ってくるヴァン。
私は思わず「ヒィ〜!」みたいな声を上げた。
その時だった……
時計の針が秒針を刻む音……カチカチと一秒くらいだろうか?
それが聞こえたと思ったその刹那にヴァンは四メートル先にいて痛みに悶えている様子。
「痛って……!」
ヴァンの声が聞こえる。
一体何が起きたの……?
私は驚きに目を丸くさせている。
悲痛なうめき声と共にヴァンは続ける。
「お、覚えてろよ……!!」
そしてそそくさにクラスの方1-B組の方に去っていく。ちなみに私達のクラスは1-Aだ。
一体今さっきのは何だったの……?
私はキョトンとした顔になっていた。
「危なかったなアリス。生きてて良かったな」
チャシャの安心する声が聞こえてすぐに狂気とも取れる女の子の声が聞こえ始める。
「アリスちゃぁぁぁん!!と、ついでにチャシャ君!何してるの?」
「俺はついでかよ……」
チャシャの呆れた声に続き私は答える。
「べ、別にちょっと話してただけよ……?」
さっきの事に動揺しててうまく答えられない。
レッドは顔にクエスチョンマークの表情を浮かべて私の後ろを指差した。
「あ、ディオ君。今日もかっこいいな〜」
私は即座に後ろを向く。そこには、メトロポリタソミュージアムのチケットを配るディオ君……いや、ディオ様の姿がある。
「ディオのやつ、偉いな〜」
チャシャは感心しながら感想を呟く。
「あったりまえでしょ!!」
私の勢い余る言葉に二人は違和感を覚えたのか首を傾げる。
ま、まずい……ディオ君に好意を抱いてる事……バレちゃう。
「いや、ほらディオ君って真面目だし勉強出来るし……キャラ的にそうでしょって意味よ!」
慌てふためく私にますます怪しむ二人。
あ……終わった。
「アリスちゃん……もしかして」
レッドの口がゆっくりと開く。
そして勢いつけて言い放つ。
「この私を差し置いて、ディオ君の事が好きなの!?許せないあの男!!」
それに続いてチャシャの声も。
「え?てっきりアリスってドンのことが好きだと思ってたんだが……まさかディオとはね」
ば、バレたぁぁぁぁ!!!
でもなんかちょっとズレてるこの二人……!!
特にチャシャ!ドンなんか好きなわけないでしょどういう脳内構造してるのよ!
そう私は憤慨した次の瞬間。
「お、例のディオがチケット配りに来たぞ」
チャシャは楽しそうな声で今の状況を説明する。さ、さっそく揶揄ってる……
「あ、アリスさん!このチケットどうぞ。他の二人にもあげてね……!」
私は「ありがと」っとそっけなくディオ君の笑顔と共に渡されるチケットを手に取る。
何やってるの私……!!もう!!
「ありがとなディオ」
私を尻目に見ながらチャシャもそれに礼を言う。尻目に見るな……!
そして「いや、いいよ」とはにかみながら去っていくディオ君。
そんなディオ君を見てレッドは少しドギマギしている。
どうしたのかしら……?
「今ディオ君アリスちゃんにこっそりアプローチしてたよね!でも絶対ダメ!アリスちゃんは私の物よ……!!」
眼光を光らせてレッドは不敵な笑みを浮かべていた。
目がマジだ……
〜第三話へ続く〜
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