ティアナ、どうか私を愛していると言ってくれ
私がアルレイド公爵家を訪れてから、しばらくが経った。
アルレイド公爵家を訪れた日から、ヴィーク様は学園でも私を見かければ声をかけて下さる。
「ティアナ嬢、お早う。今日の放課後は暇だろうか?一緒にお茶でもどうだい?」
ヴィーク様はあの日以来、私に婚約の話を持ち出さない。
私に気を使ってのことだろう。
その気遣いが私はとても嬉しかった。
「ヴィーク様、お早う御座います。今日は・・・」
「ティアナ」
私とヴィーク様が話している所にロイド様が現れる。
「ロイド様、どうされました?」
「いや、昼食でも一緒にどうかと思ってね・・・ヴィーク、ティアナを借りてもいいかい?」
「はい」
ヴィーク様がロイド様に礼をして、去っていく。
「行くよ、ティアナ」
ロイド様は私の手を掴んで、歩き出した。
「ロイド様・・・!手を繋いで頂かなくても、自分で歩けますわ・・・!」
私がそう述べても、ロイド様は手を離してくださらない。
テラスに着いた私を、ロイド様が抱きしめる。
「ロイド様!?誰かに見られてしまいますわ!」
「このテラスには私達以外誰もいないよ。それに、婚約者を抱きしめているところを見られても何も問題はない」
「ねぇ、ティアナ。知ってるかい?ヴィークは興味のある人物にしか自分から話しかけない」
「私とヴィークは同じクラスだから、私はヴィークのことをよく知っているんだ」
「ティアナ、君はヴィークにどんな話をしたの?」
ヴィーク様に婚約を持ちかけられたなど言えるわけがない私は言葉に詰まってしまった。
「私には言えない話か?ティアナ、もう一度言う。私は君を逃がすつもりはない」
そんな強気な言葉を仰りながらも、ロイド様の手は少し震えていた。
「ティアナ、愛している。一生、君以外を愛さないことを誓おう」
ロイド様が、もう一度私を強く抱きしめる。
「ロイド様・・・」
私は何故か涙が溢れそうになるのを、何とか堪える。
ロイド様が私を離し、私の頬に手を当てる。
「君は私の婚約者だ」
ロイド様の顔が私に近づく。
私は怖くなり、目を
しかし、ロイド様は私と寸前まで顔を近づけたところで止まる。
私がそっと目を開けると、ロイド様は苦しそうな顔で私を見つめていた。
「ティアナ、どうか私を愛していると言ってくれ」
ロイド様はそう仰ると、私の頬に口づけをした。
「愛しているよ、ティアナ」
そう仰って、ロイド様はテラスを出ていかれる。
私の頬に、涙が一粒こぼれ落ちた。
リアーナの入学は、もう目前まで迫っていた。
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