14歳、ロイドとの婚約
「ティアナ、よくやった」
14歳の誕生日、王家からの婚約の申し込みにお父様はそう仰った。
誕生日を祝う言葉は、一つも述べずに。
それからのお父様は、今まで人生と同じく急に私に優しくなっていかれた。
ああ、私はまた同じ道を辿るの?
リアーナも、私とロイド様が客間で会話した日から私にあまり笑顔を向けなくなった。
ロイド様はあの日の客間での約束を守るかのように、私と距離を縮めようと何度も私に会いにいらした。
しかし、私は婚約を持ちかけられてもはっきりと断った。
それでも、結局前回の人生と同じ14歳に正式に婚約を申し込まれる。
ロイド様ではなく、王家としての決定である。
王家からの正式な申し込むを断ることなど出来ない。
ましてや、もうお父様の耳に入ってしまっている。
当主であるお父様の判断に、私は従うことしか出来ない。
「どうしたらいいの・・・!」
そう自室で叫んだ私を、ネルラが心配そうに見つめている。
「ロイド様は、最後までティアナ様の同意を得てからにして欲しいと頭を下げたようです。しかし、王家全体での決定を覆すことは出来ず・・・」
「分かっているわ」
ロイド様は私の気持ちを無視して、正式に婚約を結ぶことなどしない。
前回の人生では、正式に婚約を結んだ時にロイド様と初めて顔合わせをした。
そして、初対面の私にロイド様はこう仰った。
「これは王家が決めた婚約だ。覆すことは出来ない・・・しかし、すまない。王家とフィオール家の繋がりのために、君の気持ちを聞かずに決断した。どうか許して欲しい」
そう仰り、王族でありながら私に頭を下げたロイド様に私は心を奪われた。
まさに一目惚れだったのかもしれない。
しかし、ロイド様は何度繰り返してもリアーナを選んだ。
今回の人生での目標は、ロイド様に近づかないこと。
婚約を結んだからといって、公務を除いては仲良くしなければいい。
だって貴方はリアーナと結ばれ、幸せを掴む人。
婚約破棄されるまでの間、私はロイド様に近づかず、前回の人生のようにロイド様に振り回されないこと。
そして、ロイド様に恋に落ちなければいい。
恋に落ちてしまえば、悲しむことは分かっているのだから。
婚約が破棄された後は、きっとお父様はまた私から興味を失う。
しかし、権力拡大のために私を別の貴族へ嫁げせるかもしれない。
もう誰かに自分の人生を決められるのは絶対に嫌。
ならば、私自身の幸せを掴む方法をロイド様に婚約破棄される前に考えなければ。
もう時を戻せないということは、私は18歳以降も人生を歩むのだ。
今まで歩んだことのない、初めての人生である。
しっかりと考えないと。
これから先の長い人生を彩らせることが出来るのは、他でもない私自身なのだから。
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