ロイドの誓い
その日は客人が迎える予定があった。
しかし私は客間で客人を迎えた後、寝不足もありソファで眠ってしまった。
「・・・嬢、ティアナ嬢」
「んん・・・」
私が目を擦りながら、声の方に目を向けるとロイド様がいらっしゃった。
「ロイド様!?」
私は慌てて起き上がり、礼をする。
「そんなに
「からかわないで下さいませ!」
私は顔を赤らめながら、顔を逸らした。
「ねぇティアナ嬢。何度フィオール家を訪ねても、私の相手をするのはリアーナ嬢ばかりだ。私が帰りにティアナ嬢に会いに行かなければ、君は私に会わないままだろう。そろそろ、君の本心を聞かせて欲しい・・・・何故、君は私を避ける?」
「それは・・・」
「前は君の涙の理由を無理には聞かなかった。しかし、私はもうあの時よりティアナ嬢に興味を持ってしまった。どうか君の秘密を教えて欲しい。そして、共に悩ませてくれ」
ロイド様の言葉に優しさが込められていることも、私に寄り添おうとしてくれていることも分かっている。
しかし、私の秘密は明かせない。
どう答えればいいのかが分からない。
「ティアナ嬢、私はそんなに頼りないかい?」
「違います!ロイド様が頼りないなんてあり得ません!・・・しかし、これは私の問題なのです」
「ティアナ嬢、君はたまに私を見ているようで、他の誰かを見ている気がするんだ。自分でも意味が分からないことを言っていることは分かっている。しかし、そんな気がしてならないんだ」
「ティアナ嬢、一つ私の願いを聞いて欲しい」
すると、ロイド殿下は私の前で膝をついた。
王族が膝をつくなど普通ではあり得ないことである。
「ロイド様・・・!?」
しかし、ロイド様はその姿勢を崩さない。
「どうか、今の私に向き合って欲しい」
「そのためなら・・・・ティアナ嬢、私は君と婚約を結んでも構わない」
「他の誰かになんて目を向けないでくれ」
なんと答えればいいのか分からない。
他の誰かなど見ていない。
8歳のロイド様に、前の人生のロイド様を重ねてしまうだけ。
ロイド様が私の目をじっと見つめる。
その時、初めて今回の人生でロイド様と目が合った気がした。
「ロイド様、どうか立ち上がって下さいませ」
「ティアナ嬢?」
「でないと、同じ目線でいられないでしょう?」
私は、ロイド様と目を逸らさずに微笑んだ。
そして、ロイド様に深く頭を下げる。
「ロイド様、婚約は出来ませんわ」
ロイド様が、悲しみが浮かんだ目を私に向ける。
「何故だ?」
「ロイド様の幸せを願っているからですわ。そして、私自身の幸せのためにも」
私の言葉にロイド様はしばらく何も言わなかった。
しかし、しばらくしてロイド様が何故か私に近づく。
「ロイド様?」
すると、ロイド様が私の手の甲にそっと口づけをした。
「っ・・!?」
「ティアナ嬢、君の気持ちは分かった。しかし、君は一つ勘違いをしている」
「どういうことでしょう・・・?」
「私の幸せは、ティアナ嬢と共に掴みたい。残念ながら私は諦めが悪いんだ。だから、君との婚約は諦められない」
「君を一目見た時に私は君に興味を持ってしまった。悪いがもう逃がすつもりはない」
ロイド様が私の手を強く握る。
「あの日、リアーナ嬢の話を笑顔で聞くティアナ嬢の笑顔が、私に向けられればいいと思ってしまった」
私はその場で言葉を返すことは出来なかった。
分かっていた。
前の人生のロイド様と比べては駄目だと。
しかし、前の人生でも貴方は私に愛を囁いてくれた。
それでも、貴方は何度繰り返してもリアーナを選ぶのだ。
貴方の気持ちを信じることが、もう私は怖いのです。
そんな自分の事ばかり考えていた私は、客間の外の影に気づかなかった。
「何故、お姉様ばかり愛されるの・・・!」
そう怒りが浮かんだ顔で呟いたリアーナに気づく者はいなかった。
この日から、リアーナは少しずつ私に冷たくなっていった。
そして私達は成長し、私は14歳の誕生日を迎えることになる。
前の人生で、ロイド様が私に婚約を申し込む年である。
どれだけ努力しても、運命は変わらないということなのだろうか。
14歳の誕生日、我がフィオール家に一通の手紙が届いた。
ロイド殿下から私への正式な婚約の申し込みである。
その手紙を境に、リアーナと私の関係はさらに変わっていくこととなる。
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