第2話
依頼内容:過去視の魔法
依頼場所:東京都――区――――
依頼時間:10月28日 18:00
依頼詳細:ワシは考古学とか古いものを集める趣味が合っての。先日手に入れたとあるものの経歴を知りたいんじゃ。とあるものについては本なのだが名前がよう分からんくて、そこも含めて調べたいと思っとる。ただ、アメリカのマサチューセッツ州の本とは聞いておる。
それで、ワシはこの本のことについて調べたいだけじゃから魔法に関しては要らん。
ああ、あとその時間に個人的に100人ぐらい集めてパーティを開催しようと思っておる。最近は異常存在に関わると家族がうるさくてなぁ、そのパーティの裏で魔法を使ってもらおうと思っとるんじゃ。ついでにそのパーティにも参加していってみてくれ。それじゃよろしくな。
備考:屋敷に入るときは館の前まで行って、使用人にオオトリに会いに来たとでも行ってくれ。
「なるほど……。パーティか。」
「ええ、ちょうど一週間後ですし、息抜きにパーティに参加しても良いですよ。最近ひなさんを働かせすぎたという自覚もありますからねぇ。」
パーティ……。あまり好みじゃないな。引きこもって延々とゲームしてたいと思うのはゲーマーの性だろうか。でも富豪が主催するパーティってのも気になるな。私庶民だし! 吸血鬼だけど別に高貴ってわけじゃないし!
「まあ、楽しんでみようかな。」
「ぜひそうしてください。では参加するということで予定に追加お願いしますね。ああ、魔法に関してはこちらで用意します。」
「わかりました。」
めったにない機会だ。ゆっくりと羽を伸ばすためにも仕事を頑張ろう。
「よし、えーと次は……。」
――――――
「やっと……、終わった。」
時間は……もう9時か。いつものことだけど月初めはスケジュールを立てるのが大変だ。先月の書類をまとめなんかもしなきゃいけないし。まあ終わったこと考えても仕方ないや。早く風呂入ってゲームするぞー。おー!
「お疲れ様です。何か飲み物でも入れましょうか?」
リビングではソファに腰掛け新聞を呼んでいる店長がいた。ん? あの新聞何語で書かれてるんだろう。あっ、新聞仕舞っちゃった。まあ良いや、なんかすごい悍ましい気配がしたけど気にしたら負けだ。多分。
「いや良い。今日は夜通しゲームするから自分のエナドリ飲む。」
「そうですか、わかりました。でも気を付けてくださいよ。その体は吸血鬼とはいえ、精神は人間のものなんですから。どんな悪影響があるかわかりませんからね。」
「大丈夫、わかってる。」
そういえば、この体になってからもう一年立つのか。もう慣れきったけどまだ元の私の体は見つからないのかなぁ。まあ気長に探そう。今はそんなことよりもゲームだ、ゲーム! 未知なる世界が私を待っている!
――――――
……はっ! いつの間にか寝落ちしてしまっていたようだ。今は何時だ? 6時か……。業務開始まで後3時間、微妙な時間だなぁ。まあいいや、せっかく起きたんだし一時間ぐらいゲームしよう。ていうか、あのヘリは何? 3時間やってもまだ倒せないとか調整ミスだろ! 絶対に倒してやる……。行くぞー!
――――――
トボトボと階段を降りる。本当に何なんだあのヘリ……。まだ倒せないんだけど……。
「おはようございます、ひなさん。」
「おはよう……。」
「久しぶりのゲームは……いえ、止めておきましょう。ご飯はもう少し待ってくださいね。」
くそぅ。店長に気遣われるほど顔に出てしまっていたのか。もう切り替えよう。また今度の機会にあのヘリは絶対に墜とす。コーヒーでも飲もう。あっ、そういえば。
「昨日の依頼を見て気になったんだけど、過去視の魔法ってどんなのがあるの?」
「ああそうですね、説明したほうが良かったです。少し待ってください。お皿を並べますから……。」
今日はシンプルに目玉焼きのようだ。ちなみに私は塩コショウ派だけど店長は醤油派だ。
「ではいただきましょう。食べながら説明します。」
「いただきます。」
うん、美味しい。
「ではまず過去視の魔法ですが、これに当たるのが大体5種類ぐらいあります。無生物を生物と見立て精神感応系魔法を応用して記憶を覗いたり、アカシックレコードを参照すると言ったものですね。」
「ふむふむ。」
「ですが、この内4つは代償が割と重いことや周囲への影響が馬鹿にならないので実質一択になります。それで今回使用するのは時空系の魔法で見るといったものです。詳しくは後で説明しますが、自分が対象の追体験をすることで過去を知ります。」
「それって自分の精神は大丈夫なの?」
「ええ、フィルターが掛かるようにまた設定するので大丈夫ですよ。」
ここで働いているといろんな新しいことを知れて面白い。昔の頃は魔法とか知らなかったもんなー。今はそれなりに知識はあるけど魔法は使ったことがない。店長も魔法に関しては扱いが難しいから触らせてもらってないし。まあ、危険だから使うつもりないんだけど。
「では、これはひなさんに使ってもらいましょうか。」
へ?
「そんな驚いた顔をしてどうかしましたか?」
「え、だって今まで魔法関連の物品は扱わせてくれなかったのに……本当にどうして?」
「もうひなさんも1年ぐらいここにいますからね。そろそろ危険なものを扱うことができても良いでしょう。ついでに魔法が使えるようになったら更にいろんな依頼を処理できるようになりますからね。一石二鳥というやつです。」
み、認められて嬉しいっていう気持ちもあるけど、仕事が増えるってことに絶望しか感じない! はっ、もしかして昨日の店長の笑みを見て嫌な予感がしたのはこのことだったのか。
「えーと、ちなみに断ることは……。」
「駄目です。」
「はぁ、やるしかないのか……。」
やるつもりがないのに魔法を練習することになってしまった。危険なことするつもり無かったけど断る選択肢もない。やるしかないんだったら、ちゃんと頑張って失敗する確率を減らそうかな。なんか失敗すると上半身吹っ飛んだりするらしいし。
「……頑張ろ。」
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