第27話『常人以下の選ばれし英雄』


 冒険者の証プルーフ・リングを受け取り、冒険者登録の手続きを終えた僕達は、騎士団本部へと向かっていた。

 騎士団本部へと続く道は行き交う人々で入り交じり、学生らしき人達もチラホラと見かける。

 それは騎士団本部の近くに、『神英学園』と言う学校があるからなのだが、滅茶苦茶視線が痛い……。


『ねー、あの人イケメンじゃない?』


『いやそれな? 分かるー!』


『しかもさ、神姫様と私服デートってヤバくない?』


『うん、ヤバい! 服が神姫様のシャツなのもヤバい!』


 JKっぽい黄色い声が聞こえてくれば。


『きいいいいいいい! 拙者の嫁であるエマたんとデデデデートをするなんて許せないでござる!』


『ブヒヒ、本当に許せないブヒね。あんな良い漢、ワイが寝取ってやるブヒヒ』


『オタクは引っ込んでろキーーック!!』


『『うわああああああ!!!』』


 大道芸が聞こえてきた。

 

 この世界さぁ……ポモガキ多くない?

 ん? ポモ、ガキ……?

 あっあっあっあっあっ…………みっ。


 どうやら僕は多様的過ぎるこの異世界で、あのトラウマを忘れられそうに無いらしい。

 そのことにドンヨリしつつ、隣を毅然とした様子で歩いているエマに、気になっていたことを聞くことにした。


「そう言えばさ、エマさん。僕のステータスってさ、そんなに普通なの?」


 ずっとステータスについて気になっていたのだ。

 

 だってさゲームやラノベなら、異世界転生したときってステータス最強!って感じになるんじゃないの?

 それがどうだ? 僕、普通らしいぞ。


 そんな、何処か肩透かしを食らっている僕に対し、風に綺麗な白髪を靡かせているエマは、苦笑いを浮かべる。


「ハハハ……まぁ、普通ではあるな。でもアレだ、常人よりも足が、二倍くらい早くはある」


 常人よりも足が、二倍くらい早い……か。

 確かに僕、昔から足が早かったんだよな。

 五十メートル走も、四秒台だったし……。

 でもそれだと、常人の五十メートル走って、単純計算で大体八秒台になるけど……。

 異世界の人なのに、まるで前の世界の人みたいだ。

 そもそも常人のステータスって、数値で言うとどれくらいなのだろうか。──気になる。


「ねぇ、エマさん」


「ん? なんだ?」


「常人のステータスって、数値で言うと、どれくらいが平均なんですか?」


「常人は大概、レベル一で生まれ、その平均ステータスは三であることが多いな」


「えっ、そうなの……? 僕のステータス、平均二だった様な気がするけど……」

 

 ・・・でもまぁ、そりゃそうか。

 だって僕、戦いとは無縁の世界で生まれたし……。


「まぁ、とは言えだ。そもそもステータスとは、そのレベルで出せる最大値のことを言う。だからこそ幾らステータスが高くとも、それを使いこなせるだけの技量がなければステータスなど、無いのと道理だ」


 これは、僕のことを慰めてくれているのだろうか?


「そ、そうですか……」


「あぁ……それにレベルが上がれば、ハルトのステータスも上がるし。そもそも、ハルトはステータスなど無くとも私を助けてくれたでは無いか。あのときは何だ……格好良かったぞ、ハルト……」


 僕のことを横目に、照れながら言ったエマ。

 そんなエマは白のワンピースという、ラフな格好をしているからだろうか。──凄く、輝いて見えた。


「うへへ……そう言われて元気が出ました!!」


「そうか……それなら、良かった」


「はいっ! ・・・あっ、そうだ。エマさんのプルーフ・リングって、何処にあるんですか?」


 そう言えばそうだ。

 エマはプルーフ・リングを身に付けて居ない。

 ダンジョンに入るには必要な筈なのだが、これは、どう言うことだろうか?


「あぁ、それはだな。私の、と言うか……私達騎士団のプルーフ・リングは、神器へと変わっているな」


 騎士団のプルーフ・リングは……?

 神器へと、変わっている……?


「えっ……神器って、プルーフ・リングから出来てる物だったの!?」


「まぁな。ハルトのが特別なのだ。しかし私は、神器へと変化した人を数人しか知らない」


「もしかしてそれが……」


「あぁ、私の仲間だ」


 やっぱり、あの人達凄い人達だったんだ……。

 そりゃそうだよね……オーラが凄かったもん。


「すげぇ……」


 そう、感銘を零した。

 すると、エマが言葉を紡ぐ。


「そうだろう? しかし、それもその筈だ。何故なら人々は、神器のことをこう呼ぶのだから」


 ──選ばれし英雄の武器、と。


 騎士団本部への道すがら。

 そんな会話をしていた僕達は、何時の間にか目的地である騎士団本部へと、着いていたのであった。

 

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