第13話『騎士団員紹介』


「だからさ、自己紹介しようよ! まぁ……エリアボスの部屋の中ってのは、アレだけど……」


 エリアボスの部屋の中?

 んんんんんんん????????


「えっ? ここってエリアボスの部屋の中だったの?!」


 エリアボスとは簡単に言うと、十二階層あるダンジョンの一階層毎を守る、十二体の守護神を言うらしい。

 ちなみにこれは、異世界転生する時のスパルタ授業で、言葉通り脳内に叩き込まれた情報だ。


「そーだよ? 知らずに倒したの?」


「う、うん……だって、首一つしか無かったし……」


「あぁ……そう言えばそうだったね。流石に首が一つだけだとさ、エリアボスだって気づけないよね……」


 いや……むしろさ。

 首一つで動いてる時点でヤバいよね。

 思い出すだけで身震いをしそうになる。

 

「っと……それは兎も角。副団長が、全員分の自己紹介しよう? ね? アキレウス」


 プロメテウスが、覗く様にアキレウスの顔を見た。

 すると、頭を抱えたアキレウスが、覚悟を決めたのか団員の紹介を始める。


「これも、副団長の仕事っすよねぇ……。まぁ、切り替えていくっすよ! まずは団長の紹介からっす!」


 アキレウスは、寝ている彼女を指差す。


「さっきも言ったすが……ココに寝ているのが、我らがフィアナ騎士団の団長『エマ・グレース』っす」


 彼女の名前は、エマ・グレースと言うのか……。

 容姿だけでなく、名前までもが美しいとは……。


「エマさんって言うんですね」


「まぁ……エマって呼んだり、団長って呼んだり。それぞれではあるっすけどね……」


 そう言ったアキレウスは、自分自身を指差す。


「次は俺っすね。俺はフィアナ騎士団副団長の、『アキレウス・マックルー』っす! 俺のことは、何て呼んで貰っても構わないっすよ~」


 彼はアキレウス・マックルーと言うのか……。

 流石に初対面で渾名と呼び捨ては、駄目だよね……。


「それじゃあよろしくね。アキレウス、君……。僕のことは気軽にさ、ハルトって呼んでよ」


「君付けはこそばゆいっすから、こっちも気軽に呼び捨てで良いっすよ? ハルト」


「そうなの? そっかぁ……そーゆーことならさ、遠慮なくアキレウスって呼ばさせて貰うね!」


「それじゃあよろしくっすよ! ハルト!」


「うんっ! よろしく!」


 僕とアキレウスは、石よりも硬い握手を交わした。

 すると、横で見ているプロメテウスが、口に指を当てて羨ましげに見詰める。


「良いなぁ……ボクも握手したいです……」


 チラチラとした、デカイ矢印を感じる。

 んー? 凄い瞳を潤わて訴えて来ているぞー?

 これは握手をしてあげた方が良い奴っぽいよな。

 なんか、ヘファイストスさんも頷いているし……。


「うん、良いよ。はいっ、握手!」


「やったぁ! ボク、『プロメテウス・オディナ』って言います!」


「聞いてたと思うけど、気軽にハルトって呼んでよ」


「うんっ! 分かったよハルト! ボクのことも、気軽にプロメテウスって呼んでよ!」


 僕とプロメテウスは、あつい握手を交わす。

 アニメで見たけどさ、人懐っこいボクっ娘って、めっちゃ健康に良いよね。

 はわわわわ~。ボクっ娘に逢えて幸せぇ~……


「ちなみにプロメテウスは、こう見えて男っすよ」


 そうそう、男の娘も捨て難いよね。

 …………………………え?


「お、男……っ!?」


「そうだよ! ボク、男の娘だよ!」


 なんと驚くことに。不死鳥系女の子は、不死鳥系男の娘だったのだ。

 その事実は、大型コラボ開始時のソシャゲ並に、僕の脳内を混雑させた。


(はは、ワロスワロス……ん? いや、待てよ。男の娘はオタク的に有りでは?)


 悲しきかな、僕はオタクなのだ……。

 金髪ツインテのツンデレガールも好きだし……。

 黒髪ロングの清楚系委員長も好きだし……。

 当然のこと、可愛ければ男の娘も好きなのだ。

 まぁ……一番好きなのは、リオンみたいな、芯のある強い女性なのだが……。


「普通に女の子だと思ってたよ……ゴメンね?」


「大丈夫大丈夫。何時もの事だからね」


 何時もの事、か……。

 納得してしまうだけに、余計申し訳ないな……。

 そう心苦しくしていると、ヘファイストスさんが髭を撫でながら、何処か懐かしげに言葉を紡ぐ。


「ワシらも最初は女子おなごだと思って、団員全員で腰を抜かしたのは良い思い出じゃのお……」


「みんなで驚いったすよねぇ……懐かしいっす」


「それはそうとさ、次の紹介に行こうよ」


「確かにそうっすね……何時までも、ココに居る訳にいかないっすからね」


「そうじゃな……そいじゃ、早速紹介をさせて貰うとするかのお。ワシは、土の妖精ドワーフの『ヘファイストス・マウル』じゃ」


 ドワーフ!?

 ドワーフってあの、指輪物語に出てくる?!

 うわぁ……めちゃくちゃ異世界って感じがするぅ。


「そいで……コッチで寝てる美人が、風の妖精エルフの『アルテミス・マクドバ』。こう見えて、ワシと同じ百二十歳の年配なんじゃよ」


 エルフ!?

 しかも百二十歳?!


「百二十歳って凄いですね……僕なんて、十八歳ですよ」


 あはは……!

 そう笑ったときだ。

 信じられないモノを見ているかの様な、そんな、迫真の表情を三人が浮かべた。


「「「…………………………」」」


 三人は何も言わない。

 もしや、僕の年齢が変なのだろうか?

 例えば十八歳の男子は、宗教的に宜しく無いとか。


「え? 僕の年齢がどうかしたんですか?」


 僕が恐る恐る聞くと、アキレウスが口を開いた。


「俺とプロメテウス……そして、団長とハルト。全員、同じ十八歳っす……」


 え……

 

「ガチ?」

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