第17話

 私たちは流雅の話を聞き散開する。

 

「主座が姑息な...... そのような性根で国を守れるか」


 そう天道さまはいうと、いく匹ものを風御を放ってくる。


 それをかわしつつ、天道さまへと迫る。


「......こざかしい。 這いつくばれ【地縛】《じばく》」


 天道は刀を影から取り出すと、地面に刺した。 


「ぐっ! 動けない!」


 体がが重くなりみなその場に立ち尽くす。


(あれは周囲の重さをあやつる【重洛】《ちょうらく》か...... 一体いくつの坐君をもつ)


「我が覇業の夢に抗うものは死ぬがよい......」


 そうこちらに腕を向けた。


「私は天陽さまではないですよ。 天道さま」


「なに...... 貴様は」


 天道さまが腕を向けた相手は私に姿を変えた流雅だった。


「ならばあやつは......」 


 私は動かずいた霧の中から坐君をだした。


「穿て! 錬舞!」


 うちだした錬舞は天道さまをうちぬく。


「ぐはっ!!」


 天道さまは地面に倒れ伏した。


「やったか......」


「魂は天道さまでも、肉体は老人の宵夜どのの体...... それほどの強さはないでしょう」


「ええ、みたいですね」


 流雅、細顆がこちらにかけ寄る。


「いや...... まずい」


「......食い尽くせ【躯依】《くい》」


 天道さまの体が石のように灰色に巨大になっていく。


「天陽さま! あれは周囲を取り込む坐君です!」


 流雅がそういった。


「地面を取り込んでいるのか! うがて錬舞!」


「刺され! 【針雀】《しんじゃく》!!」


 私と細顆は坐君を放った。 だが岩のその体は貫けない。


「......おいさらばえた体では、やはりここまでか。 だがもはや必要もない」


 そう岩の巨人となった天道さまはいった。


「魂となっても、人を捨てても、まだ夢想を捨てられぬのか!」


「人であること...... そのような些事どうでもよい。 安寧には痛みと犠牲が必要だ...... 我が身さえ、ただの贄よ」


 巨人は地面を踏みしだきながら、こちらへと向かってくる。


「ここは私に! 天陽さまはお逃げください!」


「だめだ! 細顆! 逃げれば追ってくる! ここより出せば民に被害がでる! 流雅! あれはどうすればいい!」


「おそらく宵夜さまの体を取り込み核としているはず、それを撃ち抜けば...... しかしあの密度の岩体をうちぬくのは至難の業」


「ならば、やはりあれを......」


「ええ細顆どのもいます、しかし時間がかかります」


「なれば! 我らが!」


「まかせな!」


 後から風貴と暁真が動く地面を滑るようにあらわれた。


「二人とも無事たったか!」


「はい、なんとか...... ですが天陽さまがご無事でよかった」


「ああ、捕まっちまったが、ここから逃げてきたものたちの話で解放された」


「止めよ!」


 天房さまが叫んだ。


 すると五人の具足姿のものたちがあらわれた。 それは響たち天意六将だった。 五人は天道さまへと向かい戦いを始める。 


「六将ならばやれるか」


「足止めは...... しかし、倒すのは難しいでしょう」


 そう風貴がいうように、確かに足を止めてはいるが、やはりあの巨体と固さに抑えるのがやっとだ。


「やはり決定打にかけるか......」


「時間がほしい風貴、暁真も加わってくれ」


「はっ!」


「ああ!」


 二人は向かっていった。


「細顆、頼めるか」


「はっ!」


 私は集中する。 


(正直、契約はしたが、あまりにも力を使うから使いこなせてはいない。 だがもはやあれしかない)


 しばらく自らに向き合う。


(私はあれを倒してどうする...... 本当に国を得ることが私の望みなのか...... 天道さまはその考えは異端だが確固たる意志をもつ、あれに勝てるのか)


「天陽! 今は迷うべきときではない! そなたは自らを信じるしかないのだ!」


 天房さまが私の肩をだきそう叫んだ。


 目のまえでは巨人と戦うものたちの姿がうつる。 そのものたちは人間とは思えない動きをして、巨人と戦ってはいるがかなり疲弊している。


(確かに! 今は私が止めねば、みんな死ぬ!)


「細顆!」


「ええ、写せ! 霧鏡ふきょう」  


 天道さまの後に霧があつまり複数の鏡があらわれた。


「なにをしようとも、頭である天陽をうちくだけばよいだけ...... あそこか」


 私の姿を捕らえて天道さまはその巨大な岩の腕をむけた。


「皆はなれろ!」


 皆が離れるのをみる。  


「あまねく照らせ【晃玉】《こうぎょく》!!」


 私の影から光る球体が頭上高くとびあがり、光が霧鏡に反射してあつまり巨人へと熱線が照射された。


「ぐあぁぁ!!」


 煙をだしながら、巨人は悶えている。


「ぐぅぅ......」


(焼けて命を吸われるようだ! 私の心ではまだたりないのか! だがここで倒しきらないと! 全てを出しきれ!)


「いけぇぇぇえ!」


 さらに光が収束し、巨人の胸を貫く。


「がぁぁぁぁぁああ!!」


 そう天をつんざく慟哭のような天道さまの声が響き、巨人の体から石がはがれ、徐々に崩れ落ちていった。


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