第14話
私たちは知られずに壁をこえることに成功し、首都【晴空】へとはいる。 そこで馬車で迎えに来ていた夕凪たちと合流した。
「では、私が借りた邸宅があります。 そこまで参りましょう」
夕凪はそういうと馬車を走らせ、邸宅へと向かう。
「しかし、町中で襲われもしないだろ。 風貴もいる、このまま姿をさらして堂々と乗り込んだらだめなのか」
暁真がいう。
「おそらく...... 話を聞くこともなく、坐君を使っている偽物だの。 風貴どのは洗脳されているだの理由をつけて拘束されるかと......」
そう流雅がいうと、夕凪もうなづく。
「うむ、そういう命を兵たちがうけているという話です。 捕まえてしまえば、あとはいかようにもできるのが権力というもの」
「......確かにな。 ならば当日に乗り込む他はあるまいな。 祭儀の場にでれば話を聞くしかないからな」
私たちはそう話をして、当日まで潜伏することになった。
祭儀の日、町は騒がしかった。 縁日のように出店がでて民たちも町に繰り出し人も多い。
「さすがに皆このときだけは、騒ぐのですね」
屋敷の二階から遠くにみえる人だかりをみて、流雅は楽しそうにいった。
「ああ、我が国の年に一度の祭だ。 一般のものたちもこのときは多少のことは目こぼしされるゆえ騒ぐ」
「なんか、この祭儀は建国の話らしいな」
暁真がいうと、夕凪は怪訝な顔をした。
「前に話したろう」
「忘れた」
呆れる夕凪にあっさりと暁真はいった。
「......この祭儀は、この天沼の国の祖【天宗】《あまむね》さまが国をつくった古事にちなむ祭事だ。 そのとき従えた坐君のことを奉っているのだ」
「ああ、天君【天啄】《てんたく》という坐君だ。 あの御輿などに飾られている」
御輿の屋根の上に四翼、四腕の竜のようなものがかたどられた金色のかざりがある。
「あれか...... 」
暁真が感心してみている。
「この御輿は町中を練り歩く。 あの中ならば大勢の人々が押し寄せ隠れられる。 皆、御輿に意識がいっているはずだ」
風貴がいうと、流雅はうなづく。
「天君祭儀は主殿で正午にはじまります。 その前に我々は御輿とともに紛れ、天陽さまを天宸宮までお連れします」
「夕凪、天意六将の配置はわかるか」
「毎年、天宸宮を囲うように四方に四将、主殿の前後に二将が常に配置されます」
(響は主殿の前...... ならば後から侵入するしかないな)
「ですが、おそらくもう手ををうっているでしょう」
「ならば、はやく準備にとりかかろう」
みんな準備に取りかかる。 お互いの坐君にたいしても詳しく話し戦略を練った。
「来ました。 兵たちが屋敷を回って、捜索し始めています」
部屋にはいってきた浅伎がそうつたえる。
窓からみると屋敷を次々、複数の兵士が訪ねていてこちらに向かってくるのがみえた。
「では、ここで私が彼らを引き留めるため話をします。 皆は御輿の近くへ」
夕凪がそういい残った。
私たちは裏口から、御輿の周りに人混みの中に紛れ込む。
御輿を取り巻く群衆の中、裏手の天宸宮に近づく。 しかし、前から群衆一人一人の顔を、つぶさに確認する兵士の一団がいた。
(こちらに近づいてくる)
「ちがう......」
「早く天陽さまに化けている一団をさがせ」
「風貴どのにも化けているそうだ。 逃すな」
そういって近づいてくる。
(やはり、ばれていたか......)
兵士がすぐそばまで近づく。
「そこのもの顔をみせよ」
兵士たちが私たちにいった。
「なんだ? 俺の妹たちになんかようか」
暁真がそうこたえた。
「......ふむ、三人の女と男か」
「ちがうな...... わかった。 いっていいぞ」
兵士たちは通してくれた。
私は流雅の坐君で少女に、そして風貴は女物の着物を着て化粧をしていた。
「ぐっ! 屈辱だ......」
風貴が唇を噛む。 暁真は笑いをこらえている。
「力を温存するため天陽さまのみ変えさせてもらいました。 風貴どのはお美しい顔をしていましたので、化粧を施せば大丈夫かと」
そう流雅がほほえむ。
「......さっさといきましょう」
不満げながら風貴はいった。 宸宮の裏手に門がみえてきた。 門に、具足姿の長い弓をもつ男が兵たちとともににらみをきかせている。
(あれは、天意六将【雨打】《ゆた》の【士弦】《しげん》、ここからは、前を突っ切り天宸宮にはいる!)
「暁真!」
「おう! 撒き散らせ【玄吐】《げんと》」
暁真がいうと黒い蛙のようなものが、影からでて前に跳ねた。
「坐君か! 注げ! 【降珠】《こうじゅ》!」
士弦が弓をかかげると、空に複数の小さな珠があがり、雨のように激しく降り注ぐ。
蛙は降り注ぐ珠に撃ち抜かれたが、煙のようにちりぢりになり辺りを包む。
「くっ、煙幕か......」
「ここはおれが止める! お前たちは突破しろ!」
暁真のちいさな声がきこえる。
「いななけ! 吼爪!」
私たちは吼爪に捕まれ門をこえた。
後を振り向くと黒い煙が漂う。
(暁真が足止めしてくれている。 このすきにはやく!)
私たちは、吼爪に捕まれ中央の主殿へと近づく。
「よし! このまま...... ぐわっ!」
そのとき眩しい光と、激しい痛みが体を貫く。
吼爪は落ち姿を消した。
そこには眼帯をして槍を構える大柄な男がいた。
「響...... まさか」
そうそこにはこの国最強の武将、至武将【響】がいた。
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